富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十月廿五日(水)昨晩十二時すぎに寝たのに朝に目覚め時計見れば444とパチスロなら当たり?のぞろ目でも早起きでは嬉しくもない四時四十四分。起きて『モンテ=クリスト伯』の第三巻ようやく読了。
木は蔭をなすが故に人を楽しませ、蔭はそこに夢と幻とが満ちていればこそ人の心を惹く。
言葉が美しいねぇ、山内義雄訳。肩と腰の痛み甚だしい日が続き、ふと思えば三ヶ月に一度の献血、で「解禁日」すでに五日も過ぎていたこと発覚。慌てて献血に向う。採血されながらぼんやりと眠りに落ちている時のあの至福。すっきり。
▼信報の連載で唯靈氏が正確な言い回し忘れたが「美食去餐庁、食美在厨房」といった文句を紹介。「美味いものが食べたければレストランへ、美味く食べたければ厨房で」と、自宅なら食べたい食材を健康的に上手に食べられる、と。格言。
▼日本の高校で社会科必修科目不履修で卒業できぬ恐れ、各地で。「なんでこんなことが起きるのか」とNHKのNW9でも深刻ぶって見せていたが寧ろ「なんでこんなことが問題なのか」ぢゃあるまいか。「学習指導要領は何のためにあるのか?」なんて議論になっていたが、今度のこのミス露見で更に「指導要領の遵守徹底」なんて叫ばれるのかしら。最低。世界中の初等、中等教育でのsyllabusを見てみるがよい。日本ほど国による徹底は他になし。
▼新潟の地震で避難生活送っていた山古志村の児童が避難先から村に戻るので避難先の学校でお別れ会。お別れ会のあと取材受けた子どもがカメラに向い、さらっと「自分の心にある「ありがとう」の言葉を精一杯出しました」と語る。新潟の山奥の冬は雪におおわれた村の子がこの「いかにもテレビ受けする」コメント。ひと昔前なら、感極まって泣くこともに「どうですか?」と尋ね、答えにならない子に「さびしい?」なんて尋ねると「うん」と答えるのが精一杯、って場面か。
▼最近話題は中国からのツアー客の香港での買い物でのガイドが小売店から受け取るバックマージンについて。なんと悪徳商法!と思うが実際には、このバックマージンなければツアコン業界は成り立たず、が現実。ツアー客がHK$3,000払って例えば香港三泊四日の旅に参加。そこに交通費、宿泊費、観光ガイド経費など含まれ残りが旅行代理店のマージン……と思ったら大間違い。実際には香港側のガイドなどの手当はそこから発生せず。それぢゃ何処から?と言えばツアー客連れて貴金属や電化製品、香水や化粧品など土産専門店に連れて行き客一人当りの売上げ目標はHK$3,000で店側は45%だけ得て残り55%のHK$1,650は客を連れてきた側へと渡る。ガイドはそこから5%(HK$82.5)を得て残りHK$1,567.50が香港の地場の代理店へ。宿泊費は中国側の代理店が払う場合もあれば香港側代理店の負担の場合もあり。中国側代理店の経費割合が大きい場合、香港の代理店は見返りとしてHK$800を中国側代理店に払うケースなど様々。ツアー客は格安ツアーに参加のつもりで実は中国で支払ったHK$3,000のほかにHK$1,650は確実にツアー料金として払っている=高い土産を買わされているのが現実。ツアーガイドも30人のツアーにアテンドしたら4日でHK$2,475はけして悪くはないが過酷は過酷。かつて日本人ツアー大挙して香港訪れた頃も買い物でのバックマージンは存在。ツアーバスから降ろされ店にそのまま直行。余も経験あり。何十年も前に商店街の歳末大売り出しの一等賞だかの商品が香港旅行。それ当てた人が急遽参加できず「行かないか?」と誘われ十代後半初めて訪れた香港。到着の翌日から「一人で街をブラブラする」と言ったらガイド氏「とても危険、危ない」でなかなか放してくれず。強引に単独行動で危険な旺角(笑)など散策して冒険気分だったが最後の日は最後の買い物から空港に直行でさすがにツアーで動く。土産物屋に横付けされたバス。昨晩あまり寝ていないから、とバスで不貞寝決め込もうとしたらガイド氏がすっ飛んできて「お願いだから店に入ってくれ」と請う。「だって買い物しないですよ」と言ったが「バスにお客さんが残っているだけで困るんですよ。だから買い物しなくてもいいから店に入ってください」と。当時もツアコンの収入はバックマージンだけだった、とまでは思えず。
▼昨日の朝日新聞鶴見俊輔氏と姜尚中教授の「核と民主主義」という対談あり。米軍が原爆を落とし、戦後に東京の焼け野原を見て戦争の悲惨さを体感し、それが憲法の前文と9条につながった(鶴見)、憲法は米国が制定に関与したとか押しつけだからいけない、という議論は勿体ない(姜)、民族が国でまとまるという考え方は見込みのある、生産的な考え方だったがサラエボから原爆につながる二つの大戦でわかったことは「国というものが保持されて、国に国民が服従する限り、人類そのものの歴史が続かないということ(鶴見)と話が続く。姜教授の結びの言葉。
私は素朴に、朝鮮半島の人とこの列島に住む人が仲良くできる風景を見たい。そのために方便として政治がある。それなのに政治が国家のたがをはめられて身動きできない。

富柏村サイト http://www.fookpaktsuen.com/