富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2006-10-22

十月廿二日(日)晴。昨晩午前一時すぎに寝たのだが五時半くらいに目覚めてしまい鳩居堂の線香を焚き昨晩湾仔の茶荘に購つた龍井のかなりいい茶葉で茶を煎れ一服。本日はおそらく何ヶ月ぶりかで何の予定もなく山に行こうとか海まで走ろうという意欲もない日。晴れていてもきっと在宅。朝から机まわりの片づけ、引き出しの整理、クローゼット内の雑物の片づけと続けかなりのゴミを出す。けして今迄も散らかっておらず。ただ細かい物多く見た目が悪い。何ヶ月も積んであった雑誌の類ひも必要な頁のみ切り取って書類を片づけ、少なくとも狭い書斎の中は「未解決」の物は多くとも全てが自らの<秩序>の中にある状態にまで整える。ヒトがモーツァルトを好むのも李光耀の望む新嘉坡の安定もこうした<秩序>なの鴨。掃除をきちんとして風呂場の?げたままであったシャワーの軸の交換であるとか日曜大工の壊れたままの道具箱の買い替えとかせっかくの機会であるから夕方散歩がてらいくつか買い込んで修理など済ます。数ヶ月来の問題がずいぶんと片づき安堵。ドライマティーニ一杯。晩に韮と豚肉の鍋。山崎をロックで二杯。いくつか雑誌抜き取りなど深更まで読み物。
中国共産党「長征」七十周年。胡錦濤君が党の結束呼びかける。江沢民君は胡主席に次ぎ序列二位。長征が党史=中国現代史で語られるほど果敢ばかりでなく、長征の途中、党内での権力闘争(毛沢東の指導権確立)ばかりか長江支流赤水河渡河などで橋を守る国民党との攻防戦も歴史に語られるほど赤軍は国民党軍を打ち破らず、日本軍の如く住民からの物資略奪や強姦などもあったともいう。だが「歴史として」長征は共産中国建国への大きな流れとして威風堂々と語られなければならない。
尖閣列島(釣魚臺)の日本による不法占拠抗議のため香港より保釣運動の船が航海に発つ。中国領土保全となると親中右派から御用政党民建聯、民主党から前綫まで呉越同舟。犬も喰わぬナショナリズムは国家団結にいかに大切か。それにしても釣魚臺の奪還という運動により<中国>なるものにアイデンティティ確立を求める、香港にとっての<釣魚臺の効用>が面白い。
▼Financial Times紙の週末版が“Libert?, ?galit?, f?minit?”と2面使って仏蘭西社会党のS?gol?ne Royal(セゴレンヌ=ロワイヤル)女史を特集。次期大統領は確定かしら。仏社会党でオランド現・書記長の伴侶(未婚)、ミッテラン大統領の時に環境相で出てきた若き美貌の才女は風格も漂い、とにかく華がある。仏社会党ミッテランのお稚児の如きドミニック=ド=ヴィルパンですら支持率で水をあけられている程。日本でならさしずめ民主党から(まだ期待されていた当時の)田中真紀子先生でも首相候補で出るようなもの。民主党の女性議員にいないかね?、千葉補選の太田和美議員とか経験積んで、是非。
▼陶傑氏、蘋果日報の日曜社説代わり「星期天休息」で仏独共同編集の歴史教科書の仏独両国中学校での使用開始取上げ日韓で何故それが出来ないのか、と。学者レベルでは共同作業すでに始まって久しいが仏独共同の歴史教科書は03年に仏蘭西志らく大統領と独逸のシュレーダー首相が合意して三年後の誕生。安倍三世が韓国大統領とこうした意気投合があるとは思えもせず。
▼書き出すと顛末が長くなるが香港で男性の同性間での21歳未満の肛門性交禁ずる条例(刑法第118C条)あり。一人の二十歳だかの男性が、女性の場合16歳未満との性行為禁止する事に比べ不平等であると裁判所に訴え裁判所もこの訴え認める。数日前に香港政府上訴せぬ決定。これにからみ一昨日だかのSCMP紙がプリンストン大学のPeter Singerという教授の“A mistaken idea of immorality”という文章転載。このSinger教授の主張は簡単明瞭。「法律は道徳を強要するために用いられてはいけない」と。なんと明確な言葉かしら。日本の教育改革など愛国心だの道徳心の育成だのが目玉。教育に関するあくまで法律がそれをすることの悪意。
▼一昨日から昨日と劉健威兄が信報の連載随筆で坂本龍一<霊・静>と題し澳門での演奏会絶賛。電子音とビデオ映像にピアノで対峙する坂本龍一は白南準(ナムジョン=パイク)がビデオ映像でテレビに象徴される現代文化と伝統の矛盾を克明に表現したのに対して坂本龍一は現代文明を拒否せず機械的な電子音に対しての耐性、その受入れの中で自己のアコースティックな音で呼応してみせた、とまさに禅のような世界、を劉健威は見て取った。アタシにはそこまで出来ない。
朝日新聞の「歴史と向き合う」シリーズの「帝国の記憶」という連載で日本の台湾統治と台湾の親日感取り上げる。日本統治時代の教育やインフラ整備、戦後の国民党による弾圧への反発など親日感にはいろいろ理由あろうが根本的なところは台湾での近代の<国家>の導入、国民教育は日本によるものが「初めてであった」こと。そこで「刷り込み」的に近代の感情が刻まれる。朝鮮半島においてはすでに十九世紀末に李氏朝鮮により大韓帝国という近代を迎え、それを日本により蹂躙されたのであるから対日観は当然異なる。
▼中国で上海の市党委書記の公金不正利用発端とした汚職は中央に波及し国家統計局局長辞任も社会保障基金絡みによる解任の由。中央の党エリートもひどいが下は下で深?中級人民法廷(地裁に相当、何が「人民」法廷か)の複数の裁判官らの贈収賄。副院長は懇意の女性弁護士に大規模な破産事件の弁護斡旋し1億元近い弁護料稼がせ、昇進に贈賄の弁護士は執務室に150万元(約2.3千万円)現金隠していたことが発覚。地方の下級裁判官でこれだけの贈収賄。そのカネは当然、不動産投資だのマカオでの賭博に流れ浪費され米国へと流れつく。