富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2006-10-19

十月十九日(木)幼い頃よりすぐに風邪、発熱、下痢などあり最近は山歩きだのマラソンですっかり運動体質と思われているが今月のようにちょいと忙しくなったりすると途端に体調崩す。蒲柳の質、ということで。Gastroenteritisが完治せぬようで(数日しっかり休養すればいいのだろうが)近隣のC医師の診断を受ける。多忙で、と言うとC医師は自分などもう何年も休日などない、と笑う。確かに土曜は08:30〜12:30で午後も16:30〜18:30、日曜祝日も09:00〜12:30と基本的に旧正月の連休除けば連日無休。恐れ入るばかり。湾仔の新鴻基中心の映画館・影藝戯院、来月末で閉館の由。1988年開館。香港で唯一の名画座的な小劇場で良質の芸術作品多く公開。そのなかでこの映画館の存在が一気に脚光浴びたは1990年12月20日に公開され香港で爆発的人気となり92年5月27日まで524日の連続上映記録打ち立てHK$10,203,821(15億円)の興行収入稼いだ映画、港題『搶銭家族』、英題は Yen Familyで滝田洋二郎監督の『木村家の人々』がそれ。安手のVCRなど出回る今日では一つの小屋で30万人動員などとても考えられぬ話。この「銀都」系列の映画館、残すは九龍観塘の銀都戯院ただ一つ。同じ系列で1990年頃に油麻地Eaton Hotelのビルに普慶戯院あり八十年代の台湾映画数多く上映。これも数年で閉館は惜しまれる。晩に詩藝の近くに行く用事あり詩藝の映画館の佇まいを写真に残す。晩遅く帰宅。乱歩先生の全集よりふと随筆集「わが夢と真実」開き、槐多「二少年図」を読む。書棚にあった石塚公昭氏の荷風本が目についてページめくる。ジャズ奏者や文士をモデルにする人形作家であるこの著者の文士好みは乱歩、荷風、足穂、澁澤、鏡花、寺山、槐多、谷崎、外骨、夢野九作にコクトー、それに中井秀夫とまさにアタクシが好きな文士ずらりと並ぶ。
▼毎週木曜日は「こんにちは、安倍晋三です。」って早朝のラジオのパーソナリティの如し。つまり「爽やかさ」だけが売り物。北朝鮮による拉致について二十年前に父の秘書の当時に拉致被害者の両親が訪ねてきて以来この問題の解決に向け努力してきた、ということは少なくとも小泉三世の郵政民営化より政治家のライフワークとして説得力あるが「拉致は、未曾有の国家的犯罪行為であり、わが国の主権と国民の生命に対する重大な侵害です」って、確かに人道的に許されないが国家的犯罪行為としては「未曾有」と言うには、国家はもっと悪いことをいくつもする。
▼新聞に会社で社員旅行や誕生会、運動会など親睦行事復活、という記事あり(朝日)。オフィスでいい大人がペットボトルのお茶片手にその月生まれの写真数名の誕生日祝う光景は不気味。社員旅行などそもそも団体旅行があたしゃ大嫌い。ふと気になり昔の手帖開くと1994年に我が人生で一度だけ社員旅行なるものに参加した記録あり。香港よりコタキナバル行き、というだけで、「熱海の温泉に一泊二日」よかかなりマシだが、幼き頃からお誕生日など祝った記憶もなく(商売家では当たり前)、生来の運動下手で運動会も「雨になりますように」と呪うほど大嫌いで放送委員会に入ることでテントの中で「天国と地獄のギャロップ」のレコードなどかけながら「ほんと天国と地獄だよ、こりゃ」とつぶやいていたアタクシにとって、社員旅行も「ぞっとする」もの。その某会社に入社の際も(って結局1年でお払い箱になったのだが)「うちは東南アジアのリゾートに社員旅行あるから」と誇らしげに言われ「それって全員絶対参加じゃないですよね」と確認したら「勿論」と言うので助かったが(ありがちな話で)入社後に「やっぱり社員の意思の統一が大切だから」と社員旅行への参加命じられコタキナバルに行く。さすが海外であるから同行の連中も空港から鴨の行列、メダカ軍団化せず「自分で考えて行動する」人たちであるしリゾートでも集団行動といえば沿岸の小島へのボートトリップが半日あった程度で、あとは晩飯が一緒になる以外はみんな適当にしていたが、この時も社員旅行でありながら「すでに旅行の計画を立ててしまっていたから」という我が侭通し社員旅行で残り2泊残す日にアタクシ一人だけコタキナバルからクアラルンプールに飛び空港のラウンジでZ嬢と待ち合せランカウイ島のThe Dataiに6泊の天国気分。海外への写真旅行、というと大阪のリフォーム会社が珠海のホテルで買春ご乱痴気の記憶生々しいが、この記事によれば社員旅行も「拘束は宴会の二時間だけ」「個人旅行に近くすることで参加率を高める」傾向にある、としてはいるが近畿日本ツーリストの担当者の話では最近は「温泉で宴会」型の旅行ばかりでなく(っていい意味かと思ったら、さにあらず)「目的地までの電車の中に漫才師を呼ぶ」だの「社員同士がマカオでゴーカートレース」など「付加価値」をつけた社員旅行が増えている、と。醜悪。
マルクス経済学者の日高晋氏(法政大学名誉教授)死去。享年八十二歳。
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