富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十月十五日(日)朝八時に坑口のMTR站。O氏と待ち合せミニバスで西貢。一週間前は第14回日本山岳耐久レース長谷川恒男カップに参加し奥多摩の72kmを16時間台で走破の氏がなぜにアタクシなんぞと山歩きか。西貢への車中、話を聞く。この山岳耐久レース、参加費が一人九千円で二千余名が参加。千八百万円の収入。慈善企画でもなく、途中、一箇所だけ飲料水の提供あるが香港のトレイル企画のような食事提供なしでコストもかからず、かなりの現金が主催者側に。山岳協会であるから登山道整備や遭難者救援などに資金要すのだろう、が、エベレスト登山など許認可得るのに担当は外務省だが実質、その判定は日本山岳協会などに委託されているわけで、日本からは世界最高峰にかなりの数のパーティが入山希望するわけで許認可といえば当然「物入り」。そういうわけで山岳協会も現金が要る。ちなみに先頃亡くなった橋本龍太郎氏は(社)日本山岳協会名誉会長など務め政界の山岳重鎮。ご本人の登山歴も立派(こちら)……って登ってはいないが。で「先生、ここは一つ是非よろしく」かしら。小雨のなか西貢からタクシーで企嶺下。雨歇む。濃い霧のなか馬鞍山に登る(標高差640m)。尾根に出て「走りましょか?」ということになり茅坪まで一気に走る。買ったばかりの初シューズに多少難儀。順調にアップダウンこなし3時間10分でGillwellキャンプ場に到着。このセクションのアタクシ的には最高新記録。大老山で12時間耐久レース開催中で飛鵝山道を下り、香港一の自然水と名高い水を思わず走り通り過ぎ下界におりてミニバスで彩虹。本来ならば慈雲山上の峠の茶屋でカレーライス食すべきところ。それを逸し彩虹の街市熱食中心で屋外の茶餐庁でカレーライス食す。ジムでサウナして帰宅。Bowmoreウイスキー一杯。机まわり片づけながら、ふと「日曜の夕方は自宅でならジントニックを飲まなければならない」と思いジントニック飲むがウィルキンソンソーダの瓶でもあれば最高なのだがシュウェップスの350mlの缶開けてしまうと細身のトールグラスで三倍くらいジントニックを飲まねばならず、結果的に酔う。どうにか寝入らず晩になり「おでん」。食後、倒れるように臥床。熟睡。
▼久々に見たNHKの「海外安全情報」。今晩はアフリカのザンビアの首都ルカサに政情不安定で「十分注意」の勧告。ザンビアに外交官、銅や錫を商いする商社、海外青年協力隊の他にどれくらい日本人が往来し、果たして「海外安全情報」必要とする旅行者がどれほど要るのかしら。
▼昨日ふとぶらりと訪れた石Kip尾の公共団地。今晩のニュースで此処が来週火曜日から解体工事開始、と知る。今週末で退去。偶然ながらぎりぎりで現存の姿を見たことになる。今日は三十年以上前にこの団地のベビーブームの頃にこの団地で育ち小学校で学んだ同窓生が各地から集まり母校訪れる。当時の集合写真と同じに並んで記念写真を撮りましょう、という発案。当時、120sqf(換算すると六畳一間)に12人で住んでいた、という家庭あり。当時の苦労も今にして思えば懐かしさ、か。
文藝春秋十一月号「掲載権独占」と題して「日中戦争、中国も同罪だ」について。文藝春秋の頭の悪さというか知的判断力の無さの証左の如き特集。まぁこんなもの読んで対中感覚で溜飲下げているオトーサンたち相手だから知力相応なの鴨。それにしても中国の論壇ネットでほんの少し話題となった「日本の中国侵略は中国にも責任がある」という主旨の趙無眠という仮名の(而もネットである)人の文章を「日中戦争、中国も同罪だ」というタイトルに改竄して「掲載権独占」で活字にする了見の無さ。そこまでして「日本は悪くない」と言いたいか、情けない限り。「もしも中国が日本に占領、統治されていたら」という結末は「日本が中国を征服し統一することは、すなわち中国が日本を征服して統一することと全く同じ結果……それは中国がひとつであるという……になるからだ」「日本という一国、または中国という一国。これはともに欧米人からみて心から畏怖されるに足りる国ではない。しかし、日本のように発展した中国、または中国のように広大な国土を有する日本であれば、もはや西洋人に蔑まれることはない」と結ぶ。現実として「日本は中国を侵略し領土とすることができなかった」のであり、かりに日本が中国を占領していたら戦後の高度経済成長も無理なわけで(松下政経塾の塾生だってこれくらい理解できるだろう、きっと)、何よりも自分たちが欧米人から蔑まれているというこの自虐観が憐れ。この文藝春秋で唯一面白かったのは「球団社長が語る巨人軍の危機」くらい。
▼その文春十一月号に「911で男になれた」手嶋龍一君(元NHK駐米特派員)が「危機の指導者」という連載始め第一回はご他聞に漏れず李登輝先生。日本のジャーナリストにとって最も扱い易いのが李登輝先生でジャーナリストで李登輝扱うことは「能がない」と公言するようなもの。李登輝先生の政治力、とくに現状では必須の馬英九の次期総統就任を阻止すべく阿扁不人気を逆に利用し国民党内で台湾本土系の王金平担ぎ出し国民党分裂させようと画策することなど(当然、手嶋君はこのへんに触れておらぬが)李登輝フィクサーぶり面目役如。だが手嶋君がもう司馬遼太郎以降「埃かぶってる」李登輝先生のつぶやき「台湾に生まれた者の悲哀」なんて今もまだ活字にできるとは……。「台湾に生まれた者の悲哀」は李登輝司馬遼太郎の文学的な修辞だろう、とアタクシは思うが、台湾で実際に「台湾に生まれたことの悲哀」感じている者はおそらく渋谷区神南で「NHKに働くことの悲哀」感じている者よかずっと少ないはず。

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