富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2006-10-14

十月十四日(土)昼までと午後に別な寄席で高座かけもちあり。昼の中休みに突然のことながらN氏の子息がバリカン買うのに(先日、佐敦の裕華百貨紹介したが業務用しか売ってなかったそうで)急遽、旺角の理髪用具専門店に同行。難なく大阪の電器メーカーの充電式バリカン購入。バリカンという言葉が気になりふと調べたらフランスの製作会社名「Barriquand et Marre商会の社名から。フランス語ではtondeuseと云い、明治16年(1883年)に駐仏の外交官であった長田桂太郎が「トンズーズ」日本に持ち帰り明治18年(1885年)に理髪師・鳥海定吉が使用し普及の由。言語学者金田一京助三省堂の「日本外来語辞典」を編集するにあたりバリカンの語源だけが調べても誰にもわからず三年余悩んだ末、とある床屋で聞いてみれば其処の店主も気になって調べていた、という逸話もあり。早晩にShek Kip MeiからSham Shui Poにかけて漫ろ歩く。Shek Kip Meiは戦後、中国からの難民のバラック密集、それが1953年の大火で、いわゆる難民住宅と呼ばれる集合住宅建てられ、その後それが公共団地に進化するのだが、当時の最初の型が(といっても各戸に台所、トイレ完備にリフォームされたもの)現在、相次いで取り壊されている最中。この風景もすぐに過去の記憶に仕舞われ、いつの日か忘れ去られよう。Sham Shui Poの文房具屋や玩具屋が思いっきりハロウィンモード。香港で最も人口密度高く雑多なことではこの上ない此の地でハロウィンがなぜここまで普及か。ハロウィンの仮装などせずとも、かなり濃い町なのは、地下鉄駅の入り口に「これでもかっ」と思いっきり売春業旺盛に重い刑罰や性病蔓延防止のネオンが光るのを見れば、言わずもがな。川本三郎的に麦酒が飲みたい、が適当な酒場もない。下手に探して入ると場所柄かなりヤヴァイ場合もありセブンイレブンで缶麦酒購い路上で立ちのみ。この界隈だとそういうオヤジ少なからず。晩に帰宅して新西蘭のOyster Bayの05年、智利のMontGrasのAntuという葡萄酒を飲みながらサラダやチーズ、ロールキャベツ食す。ゴーダチーズをオーブンで焼いて蜂蜜をほんの少しかけて麺麭にのせてデザート。
▼八月二十日に民主党の立法会議員何俊仁氏がデモ参加後に中環のマクドナルドで暴漢に襲われ負傷した事件で香港警察は広東省警察当局と連携で五人の容疑者逮捕。逮捕のキメテは襲撃現場での目撃者の証言、それに中環市街に設置の監視カメラが逃げる犯人を撮り、犯行時の野球帽やシャツこそ着替えたが似た人物が当日、落馬洲から深?に出境するところが更にイミグレの監視カメラに捉えられ広東省公安が容疑者を特定し今回の逮捕に至る。我々もどれだけ普段、監視カメラに撮影されているかと思うとぞっとするばかり。
▼シカゴ経済学派の重鎮フリードマン先生が香港特区行政長官「自称政治家」Sir Donaldによる経済政策を香港の伝統的な積極的非干渉政策を放棄するものとして非難(確か一週間ほど前のAsian Wall Street Journal紙)。すると今度はSir Donaldの施政方針演説翌日に中国政府の経済政策ブレーンとして著名な中国社会科学院記入研究所の易憲容先生が十二日の明報(明報、久々に話題となる)にフリードマンの指摘は香港にとって「警鐘長鳴」と指摘、市場経済法則が香港経済を成功に導くかどうかは中国の改革開放経済にとって重要な鍵になる、などと指摘。どちらが香港と中国でどちらが共産主義での計画経済かどちらが資本主義の自由市場主義かもはやわからぬ。Sir Donaldの施政方針演説、といえば演説を「和諧した社会をいかに建設するか」と纏めたことに信報社説(十三日)は、これが今週の中国共産党第16回六中全会で提唱された「和諧社会」の受け売りは、香港と中国は状況も異なり、安易と指摘。中国は二十年以上の経済成長のなかで貧富の差や沿岸と内陸の経済格差、土地の強制徴用、環境汚染、公務員の腐敗など社会問題深刻で、それを受けての和諧社会の提唱。それに比べ香港はすでに先進国並の経済水準で社会保障や福祉政策なども完備に近いものとなり、市民生活で民生面での基本は保障されており、社会矛盾は政府の非現実的な政策に対しての監察と非難であり、中国と同じレベルでの「社会的矛盾の解決」とは違うだろーがっ!、と。御意。
マカオの崗頂戯院(Teatro D. Pedro V)につき月刊信報10月号に記事あり(黄萃文)。このテアトロ、1860年の建立で音響の良さは格別。わずか二百席のテアトロだが広い玄関ホールは昨年までの改築までフランスのオペラ座か梵爾賽宮の如く鏡の間だった、と。梵爾賽宮?、音からどうも正名が拾えずI嬢に尋ねたらヴェルサイユ宮がこれ。今年のマカオ国際音楽祭、このテアトロでの演奏会で訪れられず残念。殊に今週水、木曜のポルトガルのFado、Carlos do Caromoの演奏聴くを逸したのが残念無念。
シンガポールが来年、全国(といっても狭いが)完全ワイヤレス化して無料でネット接続可。さすがハイテク先進国と誉めたいが実際にはネット規制厳しく、よーは政府の認める範疇でだけ勝手にやりなさい、のシンガポールらしさ。カネを払っても自由がいい。
GoogleによるYouTubeのUS$16億という巨額買収。これを昨日の信報で曹仁超の投資者日記が面白く分析。YouTubeに1.1億本のビデオ短編が収められ5.5千万の登記利用者あり。企業の掲載広告費を1000人あたりUS$10として全ての頁に広告掲載をした場合、5.5千万のコアな閲覧者だけでも、それらが毎回5〜10本のビデオ閲覧した場合、YouTubeの1ヶ月の広告収入はUS$500万で年間US$6千万。Googleのプラットフォーム利用でビデオ配給の場合、投資コストはかなり低く抑えられ、仮に年の純利がUS$3千万とした場合、買収に費やしたUS$16億でみればP/E ratioは37.5倍で理にかなう、と。昨年のネット広告費はUS$160億で、ビデオ配給分野だけならUS$3.7億とまだ小さいがネット広告は8%の成長率で2010年にはUS$300億の巨大市場。YouTubeがそのうち占めるのが数%としても社員数十人の企業とおもえば巨利。YouTubeの創業者二人は三年内にUS$2億受領することが羨まれるがGoogleにしてみれば高くない買い物の由。

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