富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2006-10-08

農暦八月十七日。寒露。さすがに昨晩香港戻りが午前十二時半、帰宅して午前一時では今朝八時まで熟睡。机まわりの雑用など片づけるうちに昼近くとなり慌ててトレイルの準備して正午に坑口のMTR站。本日は還暦すぎてなほ健脚のO氏と二人でMacLehose Trailのセクション3。北潭凹より企嶺下までの距離は10.2kmであるが一気に300mの登りから始まりアップダウン激しい行程。O氏はフルマラソンのベストが50代前半での3時間10分で「もう4時間きるのは難しいですねぇ」とアクタシにしてみれば唖然な話、「今朝は西湾河より石澳まで走って往復しました」と気軽に言われる。飛ばしはしないが快調なペースで途中、許林ストアで豆腐花食した時に坐っただけでほとんど休みもせずに2時間40分で歩き終わる。西貢に戻りいつもの如くThe Duke of Yorkに入りステラアルトワ麦酒注文したところで本日、大埔で10kmランだかに参加のO氏現われ一飲。ミニバスで坑口経由で太古。Protrekアウトドア専門店に寄り西湾河の二記海鮮飯店に早い晩飯。一旦帰宅してシャワー浴びて一時間ほど転た寝。晩遅くIFCの映画館にて香港亜州電影節の閉幕記念上映で是枝裕和監督の『花よりもなほ』観る。香港での題名『花の武者』はなかなか言い当てて妙。嫌な予感やはり的中で発売早々満席売り切れの映画のはずが100席としたら20席近くは空席あり。そこに是枝監督来場。主催者は動員率8割で成功というが明らかに疑問あり。是枝監督面白可笑しく挨拶。この映画、天下太平元禄の江戸を舞台に、さしずめ下谷山伏町あたりの長屋舞台に岡田准一演じる信州松本出の侍の父の仇を探しての仇討ちと赤穂浪士の仇討ちが、この長屋舞台に巧妙に縺れた話で描かれる点は是枝監督の原案と脚本が見事。ただ話の最後で仇討ちの怨念を「愛」に転化する、それをするのは勝手だが、いちいち宮澤りえの科白にせよ説明がましい難はあり。とにかく長屋と、その半ば貧民の住人の舞台美術と衣裳が「これでもか」と秀逸。美術は馬場正男。今さら説明も要らぬ映画美術の巨匠は1948年に大映に入社後、黒澤明羅生門溝口健二雨月物語、山椒太夫衣笠貞之助の新平家物語と地獄門、安田公義の大魔神、フリーとなり勝プロの座頭市、その後松竹京都映画で78歳の現役。 テレヴィ鬼平犯科帳もこの人。で衣裳は黒澤和子。役者は古田新太演じる貞四郎のストーリーテラートリックスターぶりが秀逸。國村隼原田芳雄中村嘉葎雄石橋蓮司寺島進と脇を固める役者がいいし、若い役者も本当にこの映画への出演を、エキストラも含め楽しんでいることが、その科白のイキの好さ、表情から実によく読み取れる。

富柏村サイト http://www.fookpaktsuen.com/