富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2006-10-07

十月七日(土)昨晩遅くまで月を愛で、ということで「中秋節翌日」という風雅な休日。朝九時半のフェリーでZ嬢マカオに向う。Festival Internacional de Musica de Macau(マカオ国際音楽祭)で晩にケルンWDR交響楽団(旧ケルン放送交響楽団)の演奏会あり。目的はそれ。どうせ休日だし昼飯をゆっくりと堪能し、と考えたら折からのラスベガス化したマカオブームの煽りか昼前のフェリーが一週間前でもとれず結局、朝九時半出。マカオに着きバスで旧市街のPadre Antonio街に行き、今回の音楽祭でもいくつかの音楽会の演奏会場となっている崗頂戯院(Teatro D. Pedro V)をあらためて見学。瀟洒なテアトロにて何か音楽会の仕込み始まるようだが警備員は私らが勝手に入ることも見て見ぬふりで厭わず。Santo Agostinho教会などまわり散歩しながら付近の古めかしい街並をゆっくりと十九世紀後半の中国の思想家・鄭観應の旧居・鄭家大屋に向うが改装中。媽閣(Templo de A-M?)よりバスでCotaiと呼ばれるかつての泥地、そこを埋立てにラスベガス系の大型カジノリゾートの建造相次ぐ光景眺め空港方面経由してコロアネ島のCentro(路環)。Retrante Espa?o Lisboaに昼食。鮹のサラダ、山羊チーズを前菜に注文せば山羊チーズの塊をさっと焙りパンの上に載せ蜂蜜たっぷり、これデザートでしょう(笑)、でも美味。海鮮炊込飯で満腹。DouroのPlanaltoという白葡萄酒。パイプ一服。酔い心地よきまま来たバスに乗っちまえ、で再び媽閣。かなりの陽射しに閉口。タクシーでマカオ芸術博物館。劉健威氏などから噂には聞いていたが立派な美術館。テアトロと美術館の間の建物の空間が涼風心地よく、そこで読書(昼寝か)のZ嬢と別れ美術館の展示をじっくりと見る。特別展は故宮博物館よりの出展で乾坤清気と題し青藤白陽、つまり明の時代の陳淳(1484〜1544年)字は道復、又は復甫、白陽山人と号す蘇州府長洲縣人、それに浙江山陰(今紹興)の徐渭(1521〜1593年)、字は文長、天池、?年は青藤道人と号す、の二人の花鳥画の展示。個人的には書法は白陽(陳淳)が好く、絵画は青藤(徐渭)が好い。常設展の歴史画展は当然のようにGeorge Chinnery(香港のマンダリンオリエンタルホテルのバーの名前にいただく)、と思っていたが同じ19世紀のマカオAuguste Borgetというフランス人紀行画家がわずか十ヶ月滞在しマカオ市街の都市画残したのだが、精緻なるそれが実に見事。香港でいえば1946年のHedda Morrisonの都市写真のような奇跡。さらに特別展でフランスの現代芸術、Niki de Saint Phalleの展示あり。精神を病み、その回復治療の一環として絵を描き始めた、というが芸術新潮だかでちょっと見ただけだったので現物展示を見られたのは幸運。これだけの展示、半日かけてもまだ足りぬところ急ぎ足。Z嬢とわかれ夕方のマカオを少し散歩。燈刻Z嬢とClube Militar de Macau(澳門陸軍倶楽部)のメンバーラウンジで待ち合せジントニック一杯。パイプ煙草一服。新馬路まで歩いて北京水餃に食す。韮と白菜のそれぞれの豚肉の水餃子を十個ずつ注文したが白菜のが出てくるのに10分、更に15分待っても韮のが供されず、どうも韮のほうの飴が足りぬようだがセットメニューの客らには次々と供され、二度催促するが「もうすぐ」「もうすぐ」の繰り替えし、「たかだか餃子に30分も待てるか!」と勘定求めるが「もうすぐだから」「作っている」で勘定の愛想に応じぬ店員に、卓向かいの老婆も口に餃子モグモグしながら「いいよ、餃子くらいいくらだって捌けるんだから、アンタらが帰っても」と私らに加勢、食べた分だけ10パタカ(水餃子8パタカ、豆乳2パタカ……安すぎ)置いて、店を出る。15年ほど前に暗い街角で見かけた薄汚い餃子店に、その美味さに驚き、数年後、今の場所で新規拡張開店を知り経営者の北京青年もすっかり貫録がつき店の繁盛は他人事ながら嬉しく澳門に行くたびに食した水餃子であるが今晩は老板の彼もおらず店員の対応の悪さには呆れるが餃子も飴はどこか水っぽく餃子の皮もまだ粉の臭いが残るような手際の悪さ、ちょっと再来に能わず、という気分。バスで今日の午後遅く訪れた澳門芸術博物館と並んで立つテアトロに参りケルンWDR交響楽団の演奏で、指揮はSemyon Bychkovで、ドヴォルザクの謝肉祭序曲、メンデルスゾーン交響曲第4番伊太利、休憩はさみラフマニノフの交響的舞曲、アンコールはハンガリアン舞曲5番など3曲を聴く。謝肉祭序曲は腕試し、としてメンデルスゾーンの4番では(もともとあたくしはあまり好きな曲ではない)真面目な演奏だが抑揚もなく「ちょっと大丈夫?」という感じで消化不良であったがラフマニノフの交響的舞曲は素晴らしい演奏。これを聞かせるためにメンデルスゾーンは抑えた?……まさか。小屋も質実剛健な造りで音響は、音楽、演劇対応の総合舞台のため多少劣るが立派な多目的ホール。演奏会跳ね、十六夜の月を愛でつつ裏のマンダリンオリエンタルホテル(かつてはここが沿岸!)まで歩きVascoという酒場でけっこう素敵なサックスのジャズを聴きながらジャックダニエル二杯。パイプ煙草一服。マンダリンオリエンタル・マカオと言えばかつては沿岸からマカオ湾を臨むバーが魅惑的で、夕暮れにここでぼんやりと一飲がよかったが今では近くの巨大カジノのネオン煌々として埋立が進み、すっかり内陸。酒場もロビー上のこの空間に移動していた。深夜のフェリーで香港に戻る。

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