富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

九月十八日(月)快晴。愛機PowerBookG4が一週間以上かけて退院。HDDの交換。馴染みのMac店のためほとんどHDDの売値のみの支出で幸い。早晩にジムで一時間の有酸素運動。帰宅して親子丼食す。先週土曜に杭州酒家で供された雲呑鶏の鶏半羽持ち帰りで、その鶏肉使っての親子丼。美味。NHKのNW9は一切見ぬようになり晩はPearl局の英語ニュース、新嘉坡のChannel News Asiaに続きCable-TVの広東語ニュース、BBC WorldのAsia Tonightなど眺めていると2時間になるが日本のニュースも自民党総裁選から吉野家での米国産牛肉での牛丼販売開始だの日本のこともよく報道され「余計な感情的コメント」や饒舌な「市民の声」などもなし。自民党総裁選では「若くて行動力がある」なんて安倍支持の「市民の声」が紹介されるがNewsweek誌は安倍晋三特集でタイトルは The Wild Card である。そのワイルドカードを用いようとしていることが、この安倍支持の市民はわかっていらっしゃるのかどうか。デュマ『モンテ=クリスト伯』第2巻一気に読了。山内義雄訳は見事なのだが、ときどき「読みづらい平仮名書き」あり。すべて平易に、という書き方であるとか、具体的に名詞は漢字、動詞は平仮名といった流儀の人もあるが、山内訳の場合かなり難しい言葉も漢字であったりするのに、突然、動詞が「もちはこばれ」となり「餅は、こぼれ」なんて読んでしまったりする。第2巻の挿話にハシッシュが登場し幻覚な作用のかなり詳しい描写が続くのだがハシッシュに関して「インド麻から取る魔睡財」なんて真面目な訳者註も興味深い。デュマ自身は記述の明瞭さからしてハッパけっこう吸ってたのね、の感じだが山内義雄は見事な和訳完成させるためにハシッシュを取り寄せ一服したりはしなかったのかしら。
沖縄県知事選で野党が統一候補として沖縄社会大衆党副委員長の糸数慶子参院議員を擁立一本化。民主、社民に加え難色示していた共産党も同調。本来、野党はこういう結束をして自民党に対抗すべき、の見本。これが「沖縄だからできること」なのは沖縄には基地問題や経済格差など具体的に県民に見える政治問題があるから。「安倍さんの若さに期待」などと呆けた本土との違いか。自民党総裁選といえば朝日のオピ欄に宮城県前知事の浅野史郎氏が「新首相は即座に衆院解散を」と卓見。自民党の総裁選に「国を挙げての与党ボケ」と浅野氏。新聞の読者投稿に「大事な自民党総裁選に我々一般国民が全くかかわれないのは不満」という意見に自民党総裁=総理大臣という、「歴史的事実でしかないことが制度上のことであるかのように誤解されている」日本の現状を憂う。何回か前の総選挙では自民党下野の可能性もあったのに或る自民党候補者は「政権とのパイプ役」を売り文句にしていたのも与党という名前の政党でもあろうかのボケだし(「自主憲法制定に全力を尽くす」なら下野しても通用するだろうが、と浅野氏)、社会党野党第一党であった当時に三宅坂の党本部に垂れ幕で「憲法改正発議阻止のために3分の1を死守しよう」とあったのも野党第一党として政権奪取を忘れた野党ボケ、と。内閣総理大臣は国民が選ぶ国会議員の多数が指名するのが憲政の常道なのだから新首相は直ちに衆院解散して国民の真意を問うべきなのだが国民から一向にそういった世論が盛り上がらないのを見ると浅野氏は「この国に本物の民主主義が根づくにはまだまだ時間がかかる」と指摘する。御意。だが自民党の代議士の7割、国民の支持も小泉8割には及ぶまいが半数の支持が安倍三世に集まると思うと衆院解散したら下手すると郵政選挙のとき以上に国民の支持があつまって三分の二議席で一気に憲法改正も冗談と否定できず。
銅鑼湾三越閉業で意外な不便が出たのは「銅鑼湾の百佳超級市場、Park'n Shopの不在」だそうな。香港で最大スーパーチェーンのPark'n Shopであるが銅鑼湾の二大店舗はWindsor House(香港西武地下)と三越地下(かつては三越の売り場であったが事実上の店舗規模縮小で数年前にPark'n Shopを誘致)とも相次ぐ閉業。で香港有数の繁華街である銅鑼湾にPark'n Shop不在となる(Times SquareにPark'n Shopがあったがこれもずいぶん前に閉業)。それだけ、といえばそれだけの話だが香港市民にとってPark'n ShopとWellcomeは「あたしは松屋は行くけど松坂屋なんて入ったことありませんよ」に近いコダワリもあったりしてPark'n Shopがないことが死活問題に繋がる人もいるかしら。そのPark'n Shopの不在に比べ香港全体ではPark'n Shopに押され気味のWellcomeが銅鑼湾では24時間営業の旗艦店の成功(夜中に酒のつまみの乾き物買いに急ぐ飲み屋関係者や仕事帰りのホステス嬢など夜中も賑わい)で優勢。それだけ、といえばそれだけの話だが(くどい)、Park'n Shopが李嘉誠財閥でWellcomeがJardine財閥資本であることを思うと、Jardineの百年来の基盤であった銅鑼湾は今でもJardineとHysan(三越のあったヘネシーセンターやThe Lee Gardenなど一帯所有)が主で、李嘉誠財閥があまり手を出しておらぬ事。Times SquareにPark'n Shopがあったのも、Times SquareがWharf財閥系であると思うと「あったのが不思議」でもある。そういった派閥力学が一概に銅鑼湾にPark'n Shopがない原因ではないのだろう、が「そう考えると面白い」のだ。
ローマ法王ペネディクト16世のイスラム蔑視とされる発言につきイスラム諸国で怒り、反発が強まっていることに法皇本人が「非常に残念」と語った、と報道あり(見たのは朝日新聞)。この発言、英語では“Deeply Sorry”で確かに「非常に残念」と訳せなくもないが「残念」というのは「残り惜しく思うこと。未練。口惜しいこと。無念。遺恨。」(広辞苑初版)で、ニュアンス的には本来「本当にごめんなさい」ぢゃなかろうか、訳すなら。「非常に残念」ではどこか他人事というか、まるで自分も被害者のよう。イスラムからの反発を受け被害者という見方はとても出来まい。
▼香港の週刊フリーペーパーHK Magazineのバックナンバーかなりたまっておりパラパラと捲っておれば「香港のくだらない質問」特集あり、香港の地下鉄MTRで年がら年中 “Please mind the gap” とホームと列車の隙間にご注意、が自動音声と車掌の車内放送で流れるが、実際に列車とホームの隙間はわずか数インチで何故に注意が必要か、と。MTRの広報担当者も話として、隙間がほとんどないこと、また事故も跌く程度の人が稀にいるだけ、との由。で結局、この地下鉄網が英国の倫敦地下鉄からのシステム導入で、当然のように地下鉄駅ホームも婉曲しており実際に列車とホームの隙間が大きい倫敦から “Please mind the gap” の放送も輸入されたのだろう、が憶測でのお答え。

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