富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2006-09-15

九月十五日(金)最近の我が日剰「もう純ちゃんすらよく見えてきましたね」と築地のH君の指摘。確かに。まだ現役の総理が「あの人はヘンな人だからおかしなことを言う」で済まされるのも小泉三世の「お人柄」か。それほど次期総理の怖さ。小泉の「自衛隊の行くところが非戦闘地域」だの「人生いろいろ、会社もいろいろ」だの「フセイン大統領が見つかっていないからといって、フセイン大統領がいなかったことにはならない」だの、百歩譲ってご愛嬌としても安倍の先日の対中観などただひどいばかりで「階級」のとらえ方の稚拙さなど笑えぬ。ふと思ったが、中国が小泉靖国参拝に対してあれだけ不快感示したのに対して安倍三世への対応は首相就任前で様子見かも知れぬが意外と小泉なら対立煽ってもそれ以上には発展せぬが安倍だとマジに怖いという理解かしら。それにしてもH君の言う通り、周恩来がせっかく苦労して捻出した「日本を許してやる」論理の修辞ひっくり返してどうするつもりか。「もう一度、日本の戦争責任を追及してください」と言うようなもの。「ボクのお爺ちゃんは悪くない!」と言いたいだけなら「パパの無念を晴らすぜ!」イラクに戦争しかけたブッシュと好一対か。安倍三世の発想ぢたい対中国どころか<戦後の世界秩序>に対する挑戦。常任理事国入りどころか旧敵国条項復活で「日本を旧敵国として扱ってください」」とアピールしているようなもの。ただ憲法学の権威の某教授は「安倍政権で改憲は遠のく」と見る。極端な極右路線である以上、民主党はそれに対抗する路線をとらざるを得ず憲法改正は「改正」という総論でたとえ一致しても各条文についてはガチンコの対決になり、とても3分の2で仲良く改正、にはならぬ、と。日本の将来にとって民主党の前原某「いいタイミングで片づいたこと」は僅かな希望かしら。本夕、山沿いに居りにわかの暗雲に慌ててタクシー雇ひ自宅に向かへば驟雨あり。地下鉄の站一つ違えば曇り空が香港。帰宅しドライマティーニつくり一口飲むと大雨。雨空に苫屋とはいへ雨水避けられるだけでも幸せと感じ入る。マティーニベルモットのボトルが空になる。前回は確か三、四年はもったはずだが氷を漱ぐために数滴落とすだけのベルモットでボトルが空になる、というのだから一年にいったい何杯のドライマティーニを飲んでいるのかしら。焼秋刀魚、里芋煮、天后に新しく出来た有機野菜の店の黄韮などで夕餉。今年初めて柿を食す。Y氏よりいただいたバンコクの中華料理の名店・銀宮楼(シルバーパレス)のドリアンの月餅。H女史からずいぶんまえに借用の映画『東京ギャング対香港ギャング』(1964年、東映)見る。監督は石井輝男、主演が鶴田浩二高倉健、香港側の黒社会の親分を内田良平、石山健二郎がちゃんと広東語で演じきり、マカオでは丹波哲郎が颯爽と現れ脇を固める役者も大木実室田日出男。ヒロインの李淑華役は三田佳子。1963年の香港。スターフェリーでカッコ良く煙草を吸う、ぴしっとスーツ姿の健さんが映っただけで「ほーっ」で中環から上環にかけての繁華街や裏通りでのロケ地の風景だけでも見ていて楽しい。が途中で少しうとうと。丹波哲郎演じる毛と名乗る謎のフィクサーが実は毛利という日本人で戦争でお国のために命をはって働いたのに終戦後に日本に帰れば戦犯扱いで国に対する不信から日本を出て海外でこうして暮らしている、と、そういった時代的な社会派の要素もあり。もう一度じっくりと見てみたいところ。
▼数日前に築地のH君に、六代目が亡くなった年齢がいまの菊五郎だと教えられる。六代目など五十くらいの時にはすでに老成し名優とされていたことか。今晩、新潮社の『考える人』の06年夏号をぱらぱらとめくっていたら小津安二郎が和室の炉端で和服姿で背を丸めキセルを吸う写真があるのだが小津が亡くなったのは六十歳と思えば、それは五十代の姿。今なら八十代でももっと若々しくしているか。
台北で「阿扁下台!」と五十万人の抗議者が総統府や官邸など中心部をぶるりと囲む「圓城」というデモ集会あり。台湾が民主的な政党政治の確立された社会であるならば本来批判されるべきは民進党であるべきだが倒扁に民意を集約した形で矛先が反らされている感あり。今回の倒扁活動では赤色のシャツが抗議運動の象徴とされることで国民党の青、民進党の緑という対立が見られず赤色シャツで反扁が集約される。今回の倒扁活動が台湾独立を阻止する政治勢力に利用されているものとする民進党の一部の阿扁擁護派は台湾南部を中心にとして、こちらが白色のTシャツ。民意を表す形態としてデモや「圓城」があるのはわかる。が、反ブッシュでもブレア対陣世論でもデモしたところでブッシュもブレアも動かぬのは嘘でも民主的な政党政治で(米国大統領選挙が公正とはとても思えぬが)制度に則り大統領なり首相を交代させる方法が保証されているから、であり、台湾も弾劾裁判制度が確立されていないようだが(そりゃ蒋介石に始まった台湾の総統制であるから)、立法院の議員の三分の二が賛成し国民投票(といっては中国が怒るか、台湾省民か島民投票か)で半数の賛成があった場合に総統罷免。だが民進党が国民党に応じて、この総統罷免に乗れるはずがなく、そう考えると今回の民衆運動を最も動かしているのは施明徳こそ壇上には上がっているが実は背後には民進党がある、と考えるべきかも。デモや民衆蜂起というのは中国であるとか旧東欧諸国など一党独裁国家で政治的自由も国民になんら政治的主張の権利もない場合に有効であり、香港も数十万人が「還政於民」で反トウ建華、反23条立法のデモがあるが少なくても香港の場合、行政長官選挙などで民意が反映せぬ間接選挙であり、その民意の表示をデモに頼る部分もあり。台北では施明徳が台湾の人々の廉政、汚職撤廃への強い意志を世界に見せている!とステージで豪語。確かにそうであろう。が阿扁下台をさけぶことで台湾の一体感を強めることで民進党は党批判を避け、国民党も本来であれば政権獲得には好都合の倒扁活動だが、これに乗ることは反民進党という最大の攻略が色あせることに複雑な心境のはず。中国も同じで反阿扁で台湾が一体化することに懸念あり「台湾の人々の自主的な判断」と否定も肯定もできずに傍観。