富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

九月十日(日)早朝に窓を大きく開けるとすがすがしい涼しい風に身震いするほど。初秋の気配。明日で9・11から早くも五年。朝日新聞に米国の作家ノーマン=メイラー氏が米国の全体主義的状況に懸念を語る。アメリカンフットボールの会場で競技場被うような大きな星条旗が出現し上空を軍用機が飛んでみせる、大リーグでの国歌、星条旗よ永遠なれ、の合唱にノーマン氏は「その国が全体主義になればなるほど国旗への愛情に執着する」と述べ保守主義は本来「中庸を尊び謙虚で思慮深いもの」であるべきなのに「謙虚さと思慮深さを失った国旗保守主義者(Flag Con)」であるブッシュ大統領は「歴代の大統領で最も無知かもしれない」と。そのブッシュは民主主義の本質も理解できていないし、イラクでいえば「即席の投票だけでは民主主義は成立しないということ」も理解できず(これは郵政国会で国民の信託得たと誤解する小泉三世にも言えること)。ノーマン氏曰く
次の世代のために、毎日の小さな変化を積み重ねていくのが民主主義のやり方だ。その退屈さに耐えるには、判断力と意識をもった人々がいることが前堤になる。民主主義は常に育てていくものであり、再生させていかなければならないのだ。
悲しいかな米国のこの大作家の言葉が少数派の意見の弁明のように聞こえる。本日、朝からジムで一時間の有酸素運動。昼に湾仔の杭州酒家で会食あり末席を汚す。午後にその流れでミーティングあり。早晩FCCに一飲、と思ったが一週間前にカドーリー牧場で購った枝豆あるのを思い出して帰宅して枝豆で麦酒。なんとなく居間の壁にかかる1920年代の大きな北京市街図を眺めていたら、ふと1950年代に天安門前広場が出来る前の、その広場に具体的に何があったのか?が初めて気になる。今日の天安門前広場が出来たのは1954年で、つまり1949年の中共による建国で毛沢東天安門の楼上より「中国人民站起来了!」と宣った、あの光景で我々は勝手に天安門前広場に数十万人の人民が終結して毛沢東のあの宣言に歓喜する場面想像しているが実際には東西に延びる長安街が天安門の前だけ多少広がっていた、にすぎない。おそらく歴史的建国の場所で人民集結を期待しモスクワの赤の広場に倣い天安門前広場が建造されたのだが、で天安門前広場ができるまで其処に何があったのか。現在の人民大会堂のある一帯は北京にありがちな胡同の並ぶ住宅街、東側の中国国家博物館(旧歴史・革命博物館だが国家にとって歴史がいかに大切であるか、ということ=政府の正当性、で歴史と革命の博物館が合体したことも興味深い)のあたりは天安門に一番近い角に消防署があり旧革命博物館のあたりが専売公社。でその二つの役所の東側は各国列強の大使館区。英国大使館が最も広大な敷地を有しロシア(ソ連)、米国、オランダと大使館が並び一つ更に東の区域に日本、独逸、仏蘭西と並ぶ。ここの義國とあるのは一瞬、白耳義(ベルギー)?と思ったが義太利(現在は伊太利と書かれるのが多い)。この大使館街が天安門前広場建設のためそっくり建国門外に移されるのだが中共による人民広場建設のために中国支配目論んだ帝国列強の広大な大使館が城外に移転させられたというのは実に興味深い。晩に栗ご飯、山芋いれた豚汁。筍の煮物。すっかり秋めく。晩遅く中井英男『黒鳥譚』続き読む。
▼社会史の阿部謹也教授(一橋大学元学長)逝去。享年71歳。74年の「ハーメルンの笛吹き男」で中世社会が暗黒でないことを教えられ近年では「『世間』とは何か」で中世の日本の面白さ語る。阿部先生の語る歴史の社会は国家が物語りする歴史とは全く異なるものであった。
▼香港鼠楽園開演一年。ふと今になって気づいた事。香港鼠楽園を米国鼠本社はもっと大きな施設にすれば営業成績良いことなど明らかなのに何故そうしなかったのか。この香港鼠楽園はおそらく今後アジアで展開するであろうミニマムな小鼠楽園の第一号だったのではなかろうか。人口一千万人圏であれば開園できる小規模な形。日本は戦後四十年かけて絵本やアニメで徹底したディズニー化できたゆゑ米国と同じ規模の鼠楽園開業できたがアジアでは中国やイスラム圏など悠長にディズニー化しておれず。香港鼠楽園の失敗で米国鼠本社も今後のアジア展開につき慎重にならざるを得ず。シンガポールへの鼠進出は結局暗礁に乗り上げたままだそうな。今日の蘋果日報に香港鼠楽園開園一周年の記念「批判」記事あり。鼠楽園側の発表した500万人の入場者に27万人のプレオープン入場者や割引、無料入場者含まれていることから試算すると実際の正規価格入場者は300〜400万人。鼠楽園が開園から40年で1480億ドルの経済効果と香港政府謳ったが鼠効果で年間340万人増!が期待された訪港客数も今年7月までで前年比133万人で鼠効果などないことを証実。香港の小売業やサービス業になんら鼠効果なし。逆に政府の公金拠出(224.5億ドル)の浪費。しかも経営が期待下回っても鼠本社は香港政府との契約で管理費(収入の2%)やローヤリティ(入場料、ホテル収入、飲食店やギフトショップの売り上げの5〜10%)に加えオプショナルで非固定の上納金などで開園1年で2〜3億ドルは上前を得た模様。経営管理の専門家は香港政府が現有する香港鼠楽園の発行株式57%を民間投資家に売却し経営権を譲り(当然、この惨憺たる営業実績では株価はかなり安値になろうが、今後、鼠楽園経営での純利など期待できぬのだから))少なくとも売却益を得て政府拠出金をいくらかでも穴埋めすることを提言。
▼結婚しない人、少子化、出産も晩婚で高齢出産の増加、と思われるが実際に40歳以上の高齢出産は徐々に増えており昨年2万人超えたが実は2万人超えたのは1958年以来のこと。つまり昔は40歳以上の、といっても当時は若い頃からどんどん産み続けて、の高齢でも止まらぬ出産だったわけで、今日のような高齢での第一子出産とは状況異なるが少なくとも高齢出産は昨日今日のことでないこと。