富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

九月八日(金)晩にZ嬢と中環の「札幌」にて味噌ラーメン(薄味お願いする)、餃子、麦酒でさっさと晩飯済ませ市大会堂にて香港小交響楽団(HK Sinfonietta)が指揮にDaniel Raskin、チェロにPieter Wispelwey招いての音楽会を聴く。香港フィルは年々も聞いたことないのに香港シンフォニエッタは今年三度目か。シンフォニエッタであるから当然でフルオーケストラ前提の曲の演奏では多少寂しいものあるがなかなか楽しいオケで、いつも演奏の序幕はガチガチの緊張で始まり今晩もロシアより招聘のダニエル=ラスキンなる指揮者でウェーバーの歌劇「オベロン」 の序曲は「おい、大丈夫か?」で始まる。まぁ腕馴らし、でピーター・ウィスペルウェイ登場しショスタコーヴィッチのチェロ協奏曲1番。この曲に大切なホルンとフルートの演奏に不満あるが、このポーランド人のチェロ奏者、この難曲を義太夫のように巧みに聴かせる演奏。とくに第三楽章カデンッツァの長いソロは見事で客席を魅了する。アンコールでバッハの無伴奏チェロ組曲から第3番ハ長調サラバンド美空ひばりが「悲しい酒」をアカペラで歌う時の、あの「ため」に近いものあり。演奏会の後半はドヴォルザーク交響曲7番。この曲、FMでは何度か聴いたことあるが演奏会では初めて。単調な展開が続きちょいと飽きる。それにしても今宵どうすればこんなにホルン演奏が大切な曲を三曲も並べられたのかしら。大いなる疑問。幕間に眺めていた全日空の機内誌に英国の美味そうなエールの記事がありZ嬢とらーめんで喉乾いた所為もあるがエールが飲みたい、という話になりバスで帰宅途中にQuarry Bayで途中下車してEast Endに向かうが金曜晩の凄い混雑で退散。帰宅。文藝春秋十月号読む。
文藝春秋十月号は総力特集「紀子妃ご出産と皇室の運命」と題するが発売日が出産予定直後ということで記事はもっぱら秋篠宮家への好感度と皇太子殿下に対する非道いバッシングで皇太子夫妻が離婚の場合といった事にまで言及。永六輔黒柳徹子久米宏の「テレビの品格を問う」という鼎談あり興味深く読むが三人してこのメンツでテレビ番組作ったら面白いのに、という話題になり「でもテレビじゃ無理だ」と自分たちのテレビでは話せない辛辣ぶり自画自賛。だが実際には鼎談の内容はけして放送できぬようなネタもなく、かつてのTBSだったかしら日曜晩の「すばらしき仲間」で北杜夫遠藤周作佐藤愛子が面白可笑しく鼎談していた程度の当たり障りの無さ。今のテレビの制作者を嗤うが実際の現場にしてみたら「こっちから願い下げ」と言われかねず。黒柳刀自がテレビ番組制作の時間に追われた状況でのチェック機能の甘さに言及し新聞ならば活字になるまで五段階くらいのチェック機能がある、と言われるが実際には新聞とて報道の、とくに外報の内容のいい加減さは言うに及ぶまい。
週刊文春猪瀬直樹が連載随筆で靖国問題を語る。保守は一枚岩だと思っていたが最近は「右翼にも左翼がいる」という書き出しで、てっきり一枚岩であった保守も靖国問題であるとか対中姿勢であるとか例えば故・後藤田先生とかナベツネさんのように良識をもって極右の誤謬指摘する人たち、それを右翼中のリベラルという意味で言っているのか、と思えばさに非ず。靖国神社遊就館を訪れた猪瀬氏が、その展示内容の極端さに呆れ、それを「左翼」と、つまりカルト的非常識、と悪い意味で「左翼」と言ったもの(笑)。その猪瀬氏の偏向ぶりに驚いた。が、遊就館で上映される「日本はいかに対米戦争に追い込まれたか」の上映番組は、まるで北朝鮮のニュース番組のようで、ただナレーションは櫻井よしこっぽいと表現したのは可笑しい。それにしても「日本は米国に策略で追い込まれ」ってこの発想こそ自虐史観そのもの(笑)。
▼安倍三世村山談話根幹の戦争責任につき自らの判断明確にせぬ事につき朝日新聞社説は「村上談話を葬るな」と題し村山談話の踏襲をば安倍三世に求める。が安倍三世の本音は知らぬが建て前上は安倍三世「基本的にその精神を引き継いでいく」として談話取り消す閣議決定せぬ考え強調、と社説の隣頁に記事あり。つまり安倍三世は明確に村上談話を葬るとは言ってはおらず。この曖昧さ。それにしてもやはり気になるのは「閣議決定」。六月にNHKが報道番組にて「閣議決定は内閣が変わっても引き継がれる最も思い決定」と説明しており法的に何ら既定もなく慣例にすぎぬ閣議決定の尊重に疑問感じたが、村上談話ほど自民党にとってありがたい閣議決定はないわけで(社会党首班の自民連立で戦争責任詫びてくれたのだから)閣議決定の「引き継ぎ」がいかにいいように使われるか、実は内閣が何も拘束される事もなきいい加減で時の政権にとっては便利なもの、と納得。
朝日新聞の連載小説(たぶん日本では夕刊)に吉田修一の「悪人」という作品あり。新聞小説読まぬが挿し絵がモロに全裸の男女の濡場、それも女が股を開き男がのしかかる完ぺきな正常位での結合シーンが鏡に写るもの。小説には
暖房の効き過ぎたラブホテルのベッドの上で、お互いのからだが汗で滑った。祐一は美しい肌をしていた。美しい肌に汗を浮かべて、光代のからだを突いていた。(略)毛布がベッドの下に落ちて、裸のまま抱き合う二人が横の鏡に映っている。先に起き上がったのは祐一で……
新聞の連載小説などこれまでに宮尾登美子の「きのね」くらいしか読んだことないが一般の新聞に中学生なら「抜ける」ほどのエロ描写があるとは驚いた。

富柏村サイト http://www.fookpaktsuen.com/