富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2006-09-04

九月四日(月)晩にカレーライス食す。カレーライスに麦酒は合わぬのでハイボール。伝統の味、サントリーのトリスのハイボール。トリスはトリスでもスクエアなるボトルが904円もする高級酒。トリスブラック(755円)と何が違うのか、といえば、トリスブラックが
ほのかに甘く香る選りすぎりのモルトとライトタイプのグレーンをブレンドし、華やかな香りとすっきりした飲み口との微妙なバランスを実現しました。後口のキレのよさをお楽しみください。
なのに対してトリススクエアは
ほのかに甘く香る選りすぎりのモルトと、すっくりしたライトタイプのグレーンをブレンドし、軽快な味わいに仕上げました。甘く華やかな香りと極力スモーキーフレーバーを押えた、飲みやすさが特長です。
なのだ。文章では具体的に何が違うのかわからない。ほとんど同じ。いずれにせよ往年のトリスウイスキー愛飲した世代には、2003年に登場のスクエアも翌04年のブラックも旧来のトリスとは似て異なるもの、だがトリスはトリス。カレーライスにはちょっと濃いめのハイボールが合う。いつもNHKのNW9の話題で恐縮だが(月額HK$150だかNHKのために払っているのでNW9くらいしか見ておらぬから文句でも言わないと損なのだが)福岡での飲酒運転での幼児殺害事故で「あいつぐ飲酒運転」は「皆が心を一つにして地域、職場が一体となって取り組んでいく問題」であり、何処だかの飲酒運転防止大会で幼稚園児が舞台から「大人の皆さんへ、飲酒運転はしないでください。わたしたちの命を奪わないでください」と呼びかけ、NW9のキャスターは「子どもたちの言葉を私たちはどう受け止めるべきなのでしょうか」と結ぶ。もう報道通り越してセンセーショナルなバラエティ番組。今井環のNews10よりも社会面記事多し。岡山で12歳の小学6年生が教室で同級生をナイフで刺した事件。少年がナイフで友だちを刺すなど少年犯罪の凶悪化、と報道するが12歳の少年のナイフでの殺傷事件は戦前も、終戦直後も昭和30年代も数はそりゃ少ないがずっとあったのだろうし江戸時代も間違いなく果たし合いあり。ライブドアの堀江前社長の初公判も2000人が傍聴券求めたことに裁判への「これまでにない関心」と勝手なことを。ちなみにこれまでの裁判での傍聴希望者数のトップはオウム真理教の麻原被告の裁判で12,292人、ロッキード事件田中角栄で3,904人で、ホリエモンはそれに及んでおらず「これまでにない関心」ではない。このライブドア裁判については「社会が自分が信じていたものか(をこの裁判から)いったい何なのか見きわめたい」と意味不明のコメントで結ぶ。世の中が狂う元凶は、くだらないお笑い番組のせいではなく、実はこうした良識あるフリした報道番組の偏向(政治的な偏向でなく報道から絵空事念仏?への偏向)なのだろう。深夜一時までかかり、ようやく中井英夫『虚無への供物』読了。文庫本で活字びっちり七百頁余もあり(幼き頃は横溝正史金田一モノなど上下巻一晩で読みきり、中山介山『大菩薩峠』ですら学生の頃は一日一冊読めたののが)ちょっと筋に食傷ぎみであることも読むのが遅れた原因か。第四章に入り少し面白み増したが、やはり奇書というより、推理小説としては最高に讃美されるべき失敗作と思えてならず。とにかく著者の博識で古今東西さまざまな思考、陰陽などが事件に絡むし、推理小説として「誰が犯人か?」が最後には序章の「あ、あれが事件のきっかけ」と推理小説の定番のどんでん返しも面白くはあるのだが、とにかく大きな話を中井英夫ですらまとめきれておらず。この作品が江戸川乱歩賞で次席となった際の乱歩先生らの作品評(巻末にあり)が言い得て妙。
▼「秋篠宮が友人に洩らした、第三子は男の子」が話題の週刊文春最新号。もはや男子誕生は既成事実の如く、この「報道」よか「靖国A級戦犯合祀」最大の根拠「祭神名票」を厚生省が取り消していた!」のほうが文藝春秋の立場、いわゆる「保守」と靖国神社との関係の微妙な齟齬が見え隠れして面白い。読んで「やはり」と膝を叩いたが、靖国神社は神として祀る戦争による公務死につき「神社当局が勝手に判断し得るところではない」立場で、あくまで厚生省(旧)の引揚援護局が作成の「祭神名票」に基づき合祀行う、それにA級戦犯も含まれていた、そうだが、そもそも問題は政府が「祭神名票」作成することぢたい政教分離に抵触する違憲行為ぢゃないかしら、と思っていたが今回の週刊文春の記事によれば実は厚生省は昭和46年の全国都道府県知事宛の通知(原則は現在も公開制限文書扱い)【旧陸軍関係戦没者身分等調査事務処理要領について】で靖国神社合祀事務処理に関する昭和31年4月から同45年8月までの諸通知は廃止、とあり。戦後、厚生省内で省内別局扱いであった引揚援護局も戦後25年が過ぎて旧軍関係者らも退職してゆくなかで、いわば臭いものに蓋をした、というところか。この通知により、その期間の諸通知に含まれる「祭神名票」、昭和41年2月のA級戦犯も含む祭神名票もこれに該当する、も無効になったはずで、だとすると靖国神社側が頼る「祭神名票に基づき合祀行う」前提が崩れてしまう。極めて興味深き史実。
▼今日の蘋果日報は一面トップで「迪士尼性騒擾醜聞」と香港鼠楽園でセクハラ、は何かと思えば香港鼠楽園の恒例のパレード、ディズニーのキャラクターの「お練り」だが、そのお練りのフィリピン人男性キャスト4名が更衣室にてシャワー浴びて着替え中にタオルを外すだのふざけていたところを第三者にビデオ撮影され匿名で管理層に報告。ビデオ内容見た管理層は厳重なるセクハラとして4名を解雇処分。3名が標的となった1名のタオルを剥がそうと悪戯けたもので、セクハラだとしたら被害者の1名も同じく処分受けるも不適当、当時、更衣室には20数名がおり、その誰からもセクハラなどの指摘なし。回顧処分の4名は寧ろ勝手に更衣室のなかをビデオ撮影されてのプライバシー侵害、香港鼠楽園が匿名のそのビデオに拠っての不適当な解雇処分決定を不満として政府労使裁判所に解雇異議申し立て。鼠楽園側の判断は米国的なホモフォビアか。ところで同記事によれば香港鼠楽園の雇用者差別は露骨で、欧米系の場合Discovery Bayなどに住宅提供されるのに対してフィリピン人の場合は東涌の集合住宅に7、8名の同居もありの由。
蘋果日報の李八方氏による辛口の政治風刺の八掛頁「隔牆有耳」にこの夏、希臘大使に栄転の香港総領事北村隆則君につき八方氏離任にあたり北村総領事を満点と評価。香港在任中は積極的に香港の大中小様々な社会活動に参加。八方氏が最後に北村総領事見かけたのは競馬場で政務司長の肥龍と一緒。北村氏、英語上手で親しみ易く山頂の公邸でもさまざまな催し開き客を招き、惜しいかな在任中は中日関係緊張したが大学での講演したり関係改善にも尽力。希臘大使としてご多幸を、と。歴代の香港総領事といえば紐育などと並び総領事クラスでは花形ポスト(今では上海にお株奪われただろうが)、真紀子大臣での人事混乱で経済畑から異例の事務次官就任、真紀子大臣との刺し違えで次官辞任に追い込まれたが英国大使という外務省では名誉職に上り詰めた野上義二君(結果的には真紀子様々)、同じく真紀子大臣当時にアジア大洋州局長で「ヒゲ、ヒゲ」と顎で使われ北朝鮮女性スパイ?との新宿での焼肉デートなど雑誌に写真掲載された槙田邦彦君(現エジプト大使)だの個性派揃いだが北村氏が社交的で温和でスマートいう点では近年稀に見る好人物であったのは確か。

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