富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2006-09-03

九月三日(日)曇。中国のネット事情、日刊ベリタに送稿。午前中、Z嬢と沙田。香港文物博物館。何度か訪れ、いつも特別展は着眼点はいいが展示内容が今一つで期待に応えてくれず今日も半ば「やっつけ」で訪れたのだが今日はじゅうぶんな収穫あり。まずは「衆楽與独楽〜香港大衆娯楽的転変」展。香港の大衆娯楽を競馬、ハイキング、蹴球、遊園地、テレビ、映画、借本といったジャンル毎に史料ふんだんに展示。「衆楽と独楽」というタイトルが示す通り娯楽がかつては集団的であったものがテレビやネットに象徴される個人化するところを見事に突く。競馬も競馬場で観戦するものが、現代ではテレビの前で端末使って馬券購入する態まできちんと実物で展示される徹底。19世紀からの競馬場の風景も、1950年代から60年代の新界郊外でのハイキング風景の写真や当時の郊外地図も、愉園や利園、茘園といった昔の遊園地の光景も、つい見入ってしまう。続いて香港の設計家によるアート展「四頭家」を見る。家具商G.O.D.の創業者・楊志超をプロデューサーに夏永康、胡恩威、陶傑、葛民輝といったクリエーターが作品提示するが、入り口の湾仔だろうか集合住宅の立体写真に圧倒された以外は余り関心わかず。続いて3つ目の特別展は MERART STORE という作品展で会場を一つのショッピングセンターに見立て、香港のこの15年くらいのさまざまなアート作品を商品ジャンル別に展示するという企画。これが発想よか、その展示作品の内容の濃さで期待以上の面白さ。写真撮影可とすることで参観者が展示物の中に埋もれた自分を撮影することで空間の一部となることも一興。ほんの30分もあれば見終わるだろう、とタカを括っていたが3つの展示見るには時間惜しいところ。これだけ見て、常設展もあるのだからHK$10はお値打ち。正午にO君ファミリーと沙田の駅前で待ち合せ。龍華酒店に昼食。七歳と四歳の子が「鴿が美味しい〜」と鳩の頭を平気で手づかみして、龍井蝦仁なんて日本なら高級料理を「蝦〜」と食べる姿を見ているだけでも嬉しくなる。「日本人の好物」の印象しかない白灼蝦を食す地元客多いのが目につく。この龍華の案内にこの店の贔屓である唯霊氏の
沙田翠谷映流霞、西風人痩過誰家、陶令風流鐘子意、黄花紅酒酔龍華。
と詩があるのを知る。戯れ歌だが1968年って40年前で唯霊氏いったい何歳だったのかしら。かなり若いはず。KCRで大埔、タクシーに乗りKadoorie農場。月に一度の有機野菜の即売に加え「動物に触ろう」なる企画あり。動物に触ろうが豚や兎、鹿かと思えば動物の頭骸骨や鷲の羽根の剥製で見当違い。野菜かなり購う。バスでKCR西鉄の錦上路站。鉄道と地下鉄乗り継ぎ帰宅。農場で買ってきた枝豆で麦酒。ひやむぎ。NHKスペシャルで「ポスト小泉の300日」見る。安倍、福田、麻生、谷垣の四人を政治部記者がハンディビデオで密着取材し自民党総裁選への道のりを追うのだが、誰が見ても、クールで頭脳明晰そうだが意外に感情的でコントロールきかなくなりそうな福田君、葉巻吸う態まで柄の悪い麻生君、真面目だが首相の器でない谷垣君、と映り、結果、やっぱり安倍晋三が首相の器、と思ってしまう。自宅マンションでの安倍夫人の気さくさまでが好印象。全てが安倍首相誕生に向けてベクトル集中といったところ。
朝日新聞の書評。OCSに月1万円!の購読料払うぶん罵詈雑言しつつ朝日の購読止めぬ理由の一つに読書欄あり。読書欄は読売ぢゃ話にならぬ。今日の朝刊に柄谷行人氏によるSheldon S. Wolin 著『アメリ憲法の呪縛』(みすず書房)の評あり。原題は“The presence of the past”という、ちょいとサイードっぽさ。憲法が国家権力を制限するはずが米国憲法では人民という名のもとに国家主権の無制約な拡張を齎す、ということを米国の根底にある封建的な(この語彙の説明については柄谷評「あるいは」本書を参考すべき)風土に源流を求める、という、この本が面白いのだろうが柄谷行人が書評というより見事すぎる要約、おそらく本書を読むよかずっとわかりやすい2分で読める内容にまとめてしまい(評論にはなっていない)これぢゃ本書が売れぬ(笑)。みすず書房朝日新聞柄谷行人に抗議すべきかも。
▼昨日、ピアノの練習をしていたら、といっても老人のボケ防止でブルグミュラーの小曲程度なのだが土曜日の夕方でマンションの他の家からもピアノが聞こえてきたのだが二軒ともブルグミュラーのタランテラ。今年は香港で普及しているOxford Method?だかの課題曲がこのタランテラで、そうなると、香港じゅうでこの曲ばかりが練習され、この曲さえ上手に弾ければ他は一切関係なく進級する、という恐ろしい制度の由。で香港のピアノ教師は極端な話、Oxford Methodの課題曲だけ弾けて教えていれば商売になる、という。

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