富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2006-09-02

九月二日(土)早朝から新聞、雑誌のスクラップ読み机まわりの片づけなどしていると快晴ながら何度か雷鳴轟き雨になるか、と中井英夫『虚無への供物』の続き読む。夢野久作の『ドグラマグラ』、小栗虫太郎の『黒死館殺人事件』と並び日本の推理小説三大奇書というが、そのわりに平凡、なんか最初からわかっているトリックを素人探偵にあれやこれやと邪推させて……の展開にちょっと飽きる。おそらく、江戸川乱歩賞に応募された、この版ではなくプロトタイプの序章こそ、堂本正樹氏の回想にあるような露骨な性描写など含み奇譚であったのかも。昼過ぎにもう雷雨の気配もない晴天となり裏山を10kmほど走る。山中の英国軍の抗日戦でのキャンプ。半壊の混凝土の建物のなかに大きな樹木育つ。昨日日剰に綴ったジャック=エドワード氏は新嘉坡で抗日戦に従い悪名高きチャンギ収容所に拘留されたのだが香港では、この山中で戦あり。帰宅して読書。晩にZ嬢とFCCに食す。ブロッコリーと山羊チーズのパイ、それに珍しくピッザ。ウイスキーソーダ2杯と智利の赤葡萄酒。帰宅途中そごう旭屋書店に寄りアサヒカメラ受領。帰宅して『虚無』読む。
▼中国国内で作家、芸術家、新聞記者、弁護士、社会活動家など知名度高く政治的敏感な立場にある人たち、妬く20万人が政府のネット管理部門である信息産業部の監視下に置かれており、hotmailGmailなどでのメールも含め胡錦涛江沢民、六四といった文言含むと「郵件存在敏感信息、拒絶発送」とメッセージ現われ送信能わず。余杰なる作家によれば一日に受信する約30通のメールの半数は受信不可ですでに開封済み。海外とのメールの往来には30分から1時間を要す」と。Yahoo!も信息産業部による陽光緑色網絡工程なる浄化運動でメールやブログなどがスクリーニングされている事実を認めており、大公報は政府系の中国の最大規模のプロバイダー「新浪」に通信内容監視のための部門があり、非法活動や暴力行為といった不正常なメール処理が行われていることを(当然、肯定的に)紹介。個人のメールや発言内容の監視、検閲といったことが最も不正常な行為なのだが。
台北Chiang Kai-shek Int'l Airport「中正国際機場」が「台湾桃園国際機場」(Taiwan Taoyuan Int'l Airport)に改名の由。飛行機にて「本機はまもなく蒋介石国際空港に着陸……」と聞くと「乎、民国に着くのだなぁ」と思った時代も今や昔、蒋介石の肖像など市街で探すのも能わぬほどの脱蒋家の風土にて飛行場からも蒋中正の名が消える。「台北国際機場」でいいはずが「台湾」に拘りあり飛行場所在地の桃園が台北市内には松山空港あり空港に「桃園」の名を入れることへの民意への配慮とか。
▼香港市民で新嘉坡「海峡時報」記者・程翔氏の中国国内での取材活動に対する諜報罪での懲役5年の有罪判決について。程翔氏は記者生活32年のベテランで香港大学卒業後に香港の左派紙「文匯報」の記者となり82年には同紙の北京特派員として香港返還に関する中英交渉を取材。同紙の主筆、副編集長にまでなったが89年の天安門事件に対して実質的な香港の共産党紙でありながら社説に、文章なしで「痛心疾首」と四文字を載せ中央政府に対しての学生鎮圧に対する抗議の意志を示し、程翔氏は同紙の李子誦・社主とともに辞職。雑誌「當代」出版するが経営に行き詰まり96年より新嘉坡「海峡時報」記者となり98年より2年間台湾駐在、その後、香港をベースに中国取材するが05年4月に広州で趙紫陽が生前に懇意とした気功師・宋鳳鳴による趙紫陽関連の手記を入手しようとして公安当局に逮捕される。今回の諜報活動については、程氏が台湾の某研究機関(基金組織)に対して北京中央の国家機密文件を提供しHK$30万の報酬得ていたというもので程氏が公安当局に対して証拠にあたる記述やパソコンデータなど提供のため犯行認めた自首扱いとされ5年の求刑に「軽減」された由。今日の蘋果日報で李怡氏(雑誌「九十年代」元編集長)は「程翔是以愛国獲罪」と述べ「愛国是一種病毒」と。然り。朔日の信報社説、今回のこの裁判につき、中国では検察の求刑=裁判所の判決で開廷即自判決が当然のところ、今回は五月に裁判所に提訴され八月半ばにようやく開廷、わずか一日で閉廷、但し八月末日になってようやくの判決の公表……この黒箱作業の不見識。見方によれば中共の判断仰いでの神経使う扱いであったことか。

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