富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2006-08-21

八月廿一日(月)昼すぎから映像家のH氏、編集者のS嬢、それに香港の風物写真よく撮るM君誘いKennedy Rdの聖Paul小学校訪れ建物の見学と撮影。この白亜の洋館の学校は1930年代に当時の香港日本人会が在港の日系企業と個人、日本政府からの援助と台湾銀行の融資を受け、建てた日本人学校尋常小学校から国民学校となり日本軍による香港占領により戦局に絡み児童数0名となり一旦廃校。軍営の国民学校として復活し占領下、軍人や占領地での商人の子女が通う。日本敗戦によりこの学校建物は英国軍に接収され、戦後、建物は建設当時の姿を保ったまま社会福祉施設や学校として利用され続け現在は聖ポール学校が借用。建物は内装までかなり当時のまま。日本人学校であったことを示す定礎の石であるとか碑文、刻文など一切残っておらぬが校庭に面した建物側面に旭日旗を模した大きな図柄の校章?があり、校内に昭和15年に建立された「香港神社」の名残もあり。この香港神社の存在が非常に興味深いのは、建物じたいがかなり洗練された当時のコロニアル調の洋館であるのに対して、国策的に校内に神社設けるにあたり狭い敷地内に神社建立にじゅうぶんな土地がなく、苦肉の策で校庭から地階の中庭に突出た形で混凝土で固めた神社敷地を設け、コロニアル調の建物のなかでその部分だけが祠の周囲の石垣まで思いっきり神社の雰囲気であること。1930年代まで日本がそれなりのモダンな世界であったところに無理矢理にこの神社を突っ込む、その国策的な神道による国家主義をばまざまざと見せつけられた感あり。現在は祠や鳥居は取り壊され辛うじて祠の土台だけが残る。がS嬢が目敏く、祠横にもう一つ、中庭に突出た部分あることに気づき、そこの側面に古めかしい水道栓のようなもの見つける。そこが、当時の国民学校児童であったN氏の当時の写生画で見比べてみると、ちょうど小さな手水舎あり、その手洗いの水道水の元栓らしい。歴史的にも貴重な建物で基本建築ぢたいには老朽化は殆ど見られず。但し最近の学校用途での内装にかなり無理があり。この聖ポール校も08年にはAberdeenであったか新校舎竣工で移転。その後この建物がどうなることか、本来であれば香港日本人倶楽部なり港日友好会館なりで利用されるのが最善と思えるのだが。撮影終わりFCCで涼をとる。いくつか雑事済ませ一旦帰宅。早晩にZ嬢とQuarry Bayの印度料理Mother Indiaに食す。ウイスキーソーダ注文したら「赤?、黒?」とジョニーウォーカーで尋ねるのも、グラスにウイスキーだけ注いでソーダと更に氷まで別々に供すところが印度っぽくていいぢゃないか(印度は知らないが、そういう感じ)。氷入れるなら、自分でね、と。太古城のUA映画館で昨日に続き本晩はオダギリジョー君主演の“BIG RIVER”(監督:船橋淳)見る。<自分>を探すためにアリゾナの広大な荒地の中を孤独に旅する日本人青年(オダギリ)はふとしたことでパキスタン人の中年男と出会い、二人は米国娘に拾われる。この男にのしかかる圧力にポスト911の米国社会を絡ませたくらいで、よくある<自分探し>の物語に何が伝えたいのか、脚本にちょっと無理あり。米国留学経験のあるオダギリジョーがそこそこの英語で科白まわしが出来ているなぁ、と。「筒井康隆出演」より更に個人的に苦手なのが「制作:オフィス北野、プロデューサー:森雅行」作品かもしれない。
民主党の立法会議員何俊仁氏が昨日、消費税導入反対デモ参加の帰り、夕方に中環のマクドナルドで食事中に二人組の暴漢に襲われ重傷。暴漢はまさか消費税導入図る勢力が遣った刺客に非ず。何氏は本業が弁護士。その扱う争議絡みの襲撃の由。何氏はマカオのカジノ王Stanley Hoの義妹何婉?女史(通称、十姑娘)が義兄相手に争う会社権利に関する件でも十姑娘側の顧問弁護士。昨晩のうちには行政長官Sir Donald君ら政府高官、与野党の党首や有力議員が病院に駆けつけ何議員を見舞い、行政長官、司法官、保安局長、警察署長らが、香港は法治社会であり、言論に対する暴力は一切許さない、犯人探しと事件解明に全力尽くす、と力強く発表。加藤紘一君の自宅が放火されても首相と内閣官房長官が夏休み決め込むどこかの国とのこの違い。
▼中国が来年打ち上げの月探査機から中国の歌を地球に発信。すでに1970年に中国が初めて成功した人工衛星打ち上げで衛星から毛沢東賛歌「東天紅」流して以来の試みで月探査機からの中国音楽をば地上の大型アンテナで受信して配給。宇宙というのは本来、国家なんてちっぽけなものと相いれないはずなのに。宇宙開発にせよ、こんな愛国心高揚にせよ、足穂先生も真っ青な話。

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