富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2006-08-15

八月十五日(火)終戦記念日。小泉三世お約束で靖国参拝毎日新聞山西省残留兵士問題を問いかけたドキュメンタリー映画蟻の兵隊」の監督・池谷薫氏は
蟻の兵隊』に出てくる元兵士たちは、国に捨てられた人たちだ。小泉さんが心の問題と言うのなら、彼らの気持ちも忖度して欲しい。中国残留を命じた上官が祭られている靖国に「一緒に祭られるのはまっぴら」と言う元兵士の気持ちはよく分かる
と語る。小泉三世本人にしてみれば公約守り有終の美を飾ったつもりだろうが、朝日新聞が今朝の社説で
小泉政治の特色の一つは「分かりやすさ」にある。敵味方を峻別し、二者択一を迫る。国内問題では確かに成果を上げたけど、外国を相手にして思慮ある手法だとはいえない。外に敵を見つけ、国民の感情をあおるのは危険である。
と指摘していたが、小泉三世の今朝の参拝後の発言も首相である自らの靖国参拝を「問題にして混乱させる勢力」がある、とその<敵対勢力>を非難。郵政民営化の時と同じで反対意見を安易に「敵」と詰る、この安易さ。幼稚さ。小泉三世自らが靖国参拝を個人の思想信条の自由とするなら、その参拝に反対する意見があることも認めるベきだろう。これが首相だと思うと情けない限り。而も今年は靖国神社で本殿に上がったのも「警備の方も大変だから」だそうな(笑)。何が尊いのか、何が大切なのか、結局わかっておらず。国のために尊い命を亡くした人々……というが今朝の朝日に半藤一利氏(文藝春秋・元編集長)が、
多くの人は戦闘による死をイメージするだろうが帝国陸海空軍の240万人の死者のうち7割が飢餓、食糧の補給もされず見捨てられた無残にして無念の死。遺骨の回収も124.5万人に留まっており、それが戦争犠牲者の実態。戦後も含め彼らを見捨てたまま名前だけを「英霊」として靖国に祀っている
と指摘。千鳥ケ淵の戦没者墓苑にせよ(戦没者追悼を正す全連協会長)秋山格之助という人の指摘によれば(同日の朝日、視点)
この国に戦没者葬る国立墓地がない、のが実態。墓誌埋葬法は一定の条件で自治体に申請し墓地と認定された場所以外に人骨の埋葬を禁じているが秋山氏の調査によれば千鳥ケ淵墓苑は東京都に申請、認可された墓地に該当しておらず。ただし厚生省は「法律上の墓地ではなく、遺骨の保管(納骨)場なので葬る許可は無用」として納骨続ける。六角堂という納骨室の地下は広さ12畳ほどの空間。骨どころか高熱ガスで処理され微塵とかした灰が「三十数万体の遺骨」として収められる。
小泉首相靖国参拝の後、千鳥ケ淵にも詣でたと胸を張るが、秋山氏は「千鳥ケ淵墓苑とは何と恐ろしい場であろうか。地上の飾りと式典は虚飾で、地下の実態は「戦没遺骨の最終一括処理場」だ」として、ゴルフ場だの立派な橋や道路はできても戦没者を納骨するそこそこの広さの墓地すらない実態を嘆く。この多くの矛盾の上に戦没者本人らの意志などとは関係もなく、戦争責任問われる昭和天皇ですらA級戦犯合祀に反感抱いたのに、その先帝の気持ちすら省みられることもなく、「お国のために」「英霊」と奉られ、勝手な物語が書き綴られてゆく狂気よ。本日、快晴。中央図書館に先週の新聞閲覧。八日晩に信報で李嘉誠次男(李澤楷)による信報の50%買収が発表され九日の信報にベタ記事あり。週末まで信報ではこの買収劇について既成事実か「今さら」論評もなし。九日の蘋果日報に詳しい記事あり。編集方針に変更なし、だそうだが数ヶ月の間に李嘉誠次男(李澤楷)の持ち株率は7割に達するそうで事実上の売却。Anson陳方安生女史の信報加入なども噂あり。蘋果日報の詳細に渡る記事によれば、林山木(社主、筆名は林行止)は潮州人(つまり熱血漢)。若くして査良?(作家の金庸)主宰の明報にリサーチャーとして傭われ56年に英国に留学し経済学修める。明報に戻り明報晩報(懐かしい)の経済版副編集長となるが73年に明報の娯楽路線化により査良?と袂を分かち妻の駱友梅、明報編集部で親しい曹志明(筆名は曹仁超)と三人で経済専門紙・信報を創刊(この三名が会社所有)。当時、香港は不況と石油ショックで経済専門紙の部数伸びず三人は取材、記事執筆から編集まで全てこなす。八十年代に入り信報の発行部数伸び黄金時代迎えるが九十年代に入るとバブリーな「経済日報」の創刊などや総合紙の経済面充実などあり信報は部数落とし01〜03年までは赤字続き(共同通信電の都新聞記事は正しかった)。それでも03年の基本法23条立法では立法化の暁には信報廃刊とまで主張し気骨あるところみせ、北京中央のお偉方も購読という、東洋の金融時報(ファイナンシャルタイムス)とまで評される高級紙として存続。……が今回の李嘉誠次男による買収。今週の紙面にようやく信報の伝統としての評論姿勢が崩れぬよう、といった識者の文章がいくつか掲載される。どうであれ香港で信報が今のまま存続せぬと大変困る。某通信社の特派員S氏も毎日、まず網上で多維新聞網をチェックし、蘋果日報、東方日報から読み始め、面白いのだがどうも事実背景が読めず信報読むと「なるほど」と理解、と。全く同感。今日は、ふとモヒートが飲みたくなって(なんて書き出しは植草甚一みたいだが)というのは先日トラヤ帽子店でもらった「銀座百点」誌で太田和彦氏の随筆が銀座のMori Barを紹介。七丁目の外堀通のこのバーは訪れたことないのだが店主・毛利氏といえばドライマティーニ、だが太田和彦氏の文章によれば毛利氏が昨年、キューバ訪れハバナで「世界が変わった」ほどでモヒートに出会う。……という記事を香港に戻る機内で読んでから、数日、ずっと「モヒート」がアタマから離れず。ヘミングウェイハバナのBar Bodeguitaでダイキリと同じく愛飲の酒であることは酒好きには常識。蘭桂坊の何処だったかの中南米風のバーでしばらく前に飲んだ記憶があるが甘ったるくて閉口。で自分で作ればいいわけで中環のOliversでラムはハバナクラブの3年物、ライム、ミントを購う(瓶詰めのライムシロップは絶対にダメ)。あたまの中で出来上がりの味を想像しながらレシピ考える。こういう時がとても楽しい。かなり久々にFCCのバーに寄り珍しくジントニック二杯。帰宅。モヒート富柏村風は、まずグラス(Collinsサイズ)のグラスにまずライム半個を絞り実もそのままグラスに落としミント(枝つき)たっぷり、シロップも小さじ半分ほど加え、ここで木棒で押す。氷槐を入れてソーダ七分目まで注ぎ最後にハバナクラブの3年物を溢れるギリギリまで注いで出来上がり。夏の猛暑の飲み物であるからソーダを出来るだけぬるくしない事。そのために最初からソーダ入れてライムやミントと攪拌せぬのがミソ。ソーダの炭酸が抜けるのも最小限に抑えている、って講釈の出来過ぎか。見事な夕陽。モヒートが美味い。晩に近所に住うO君来宅。Z嬢の手作りの肴で麦酒かなり飲む。昨日の二記の四季豆の残り(挽肉とタレ)、土鍋でご飯焚いて炊き上がりにそれをかけて蒸らしオコゲ作って食してみたら、予想以上に美味。O君には福島のレパコの甘味いただく。ブランデー飲みながら甘味。
▼蔡瀾氏より、六月に氏が蘋果日報の随筆で日本酒の等級に言及、日本酒等級は税制がためで廿年も前に廃止とメールでお伝えしていたが、ご指摘に感謝、と返信あり。多忙のなか遅ればせならが一読者の指摘に謙虚な姿勢見せていただく。秘書嬢のまとめ返信かも知れぬが。
▼台湾の反亜扁総統の動き。民進党の大御所・施明徳氏が十三日の反亜扁集会に登場。昨日の信報社説に面白い話あり。台湾の政治家中の政治家・李登輝先生、亜扁辞職後は副総統・呂秀蓮が亜扁の特赦と次なる総統選挙に立候補せぬこと2つを条件に総統に就任、立法院長(議長)の王永平(国民党籍)をば行政院長(首相)に任命し、民進党・国民党に囚われれず「本土政権伸続」をば確保。国民党で外省籍の馬英九と人気二分する王永平の取込みにより国民党分裂させる李登輝の老獪なる戦術、と。興味深し。ところで去就注目される亜扁総統、九月に?勞(パラオ)訪問。この外遊中に施明徳らによる大規模な反亜扁抗議集会開催予定あり。亜扁総統そのまま海外亡命とか……。
▼中央図書館で新聞の閲覧すると閲覧票に必要事項記載して提出。で閲覧終わり新聞返却すると閲覧票のうち個人情報の部分切り取って返される。新聞も最近のものは数部あるため誰かとかち合わず。初めてこの図書館の新聞閲覧利用したが便利だし安全。

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