富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2006-07-24

七月廿四日(月)晩に香港日本人倶楽部。歌舞伎俳優市村萬次郎丈来港に合わせ橘屋の語りを聞く会F氏の主宰で内輪で催され末席を汚す。橘屋さんと直接お話しするのは記憶では確か平成十年の松島屋さんの15代目仁左衛門襲名披露で歌舞伎座にて同公演に出演の橘屋さんの楽屋にご挨拶にお伺いして以来。萬次郎丈が播磨屋吉右衛門)と共演で「鳴神」演じた香港公演はもう十年以上前。余が生まれて初めて大向こう気取りで「橘屋〜っ」「播磨屋〜っ」とやったのもお恥ずかしい。その晩、ホテルの部屋までお招きうけ二日間三部公演も終えた橘屋さんが酔った勢いで機嫌よく成駒屋の大檀那の舞台、大和屋の楽屋での語りの真似などしてくれたのも懐かしいかぎり。で本晩。萬次郎丈、話上手。殊に父、十七代目羽左衛門の語った芸談など興味深く拝聴。芝居というと発声だの複式呼吸だの「息を吐く」ことばかり気にしがちだが十七代目曰く「鼻からの呼吸」「息を殺す」の間合いの大切さ。忠臣蔵の四段目、判官切腹の場面での判官と由良之助のやりとりなど。また科白で、下手な心理描写などよか、たとえば情景を思い浮かべれば科白で「須磨、明石」というただの地名も須磨なら須磨、明石なら明石、とそれを思い浮かべて言えば自然な感情がこもる。萬次郎丈の両子息、長男の竹松君は十年前に自動車でもとりわけタクシー好きの小生意気な子(笑)だったのがもう清楚で落ち着いた十六歳に成長。終わってから楼上での会食で竹松君と十七代目の思い出話だの香港での01年の連獅子の時のことなどお話する。十七代目からは余は直接お電話をいただき、1997年に台湾の高雄で十七代目、実に半世紀ぶりの台湾公演を見たことも懐かしい思い出。次男の光君が見た目から仕草、後ろ姿まで十七代目そっくりで驚くほどの隔世遺伝。画像は竹松君の襲名披露記念の扇子で図柄は十七代目によるもの。
▼“A Warning About AIDS in Prison”と紐育タイムスの本日の社説(こちら)。140万人の受刑者を収容する米国の刑務所で受刑者のムショ内でのHIV感染率がシャバに比べ5倍と高い現実。性交渉による感染と麻薬投与の際の注射器の使い回し。いくつかの国や国際衛生機関は刑務所内でのAIDS感染防止のためにコンドームの配給をば呼びかけているが米国では本来、有り得ないはずなのが受刑者間での性交渉で(しかも同性間)、麻薬蔓延も言語道断なところだろうが、コンドーム配給は建前上そう易々とは実施できぬそうな。本来、生活から人格までの管理徹底されるべき<施設>内部での、この実態もフーコー的に興味深き話。
▼週末より香港で棒球の2006年リトルリーグアジア太平洋大会開幕。昨日は日本7−0中華台北、香港9−2タイ王国といった試合結果。本日は日本対香港の試合あり。アジアの強豪チーム揃う、といいたいところだが日本、韓国、台湾という米国安全保障前線を除けば野球はあまり、というかほとんど普及しておらず実は香港チームもタイチームも日本人選手少なからず。香港対タイで日本人同士が野球をする、これはこれで少年らが「ナショナリティとは何か?」学ぶ意味で姜尚中的には興味深いところ。ところでこの香港大会、今年の1月の準備委員会開催時には試合会場は青衣運動場、宿舎は馬鞍山は鳥渓沙のYMCA施設のはず(こちら)が突然、六月に会場は香港ディズニーランドと決定。宿泊もディズニーランドのホテルという厚待遇(出場選手には朗報か)。当然、察せられるは香港鼠楽園が入場者数の低迷でとにかく何でもかんでもイベント開催で関心集め人寄せになれば、の名乗り。(鼠楽園プレスリリースはこちら
This year, Hong Kong Little League is organizing the Tournament, which will be held at the Hong Kong Disneyland Resort on two new, specially designed tournament-grade baseball fields that are being prepared for the event by Leighton Asia. The baseball fields are located on the spacious grounds between the two Disney themed hotels, the Hong Kong Disneyland Hotel and Disney's Hollywood Hotel.
というわけで当初、香港鼠楽園の建設計画にはなかった野球場をば2つのホテルの間の空き地に急拵えしての対応。昨日の試合ご覧になった方の話ではMTR鼠線の鼠リゾート站からシャトルバスまで運行あり。球場は観客席屋根付きでなかなか本格的な設備。ただ鼠楽園の広大な駐車場は小型、中型のバスが5台駐車していただけで酷暑のなか鼠楽園内の入場者数が惨憺たるものであろうことは予想に易し、との話。下手するとリトルリーグの試合観戦者のほうが多い鴨。でもさすがにリトルリーグ観戦者に鼠楽園の無料入場券こそ支給されず。但しこのリトルリーグ観戦者も間違いなく鼠楽園の入園者数に「香港ディズニーランドリゾート来訪者には変わりない」として、きっとカウントされているであろう。(以下、翌日談)……とまで綴り晩遅くに信報読んでおれば、実は前述のthe spacious grounds between the two Disney themed hotelsは三番目のホテル建設用地。それが需要見込めず野球場建設。で今回のリトルリーグアジア太平洋大会については会場を無償提供(やはり……)。ESPNによる試合の衛星中継で香港鼠楽園の宣伝になり、この大会の参加者や観戦者の鼠楽園入場(これは有料……笑)が期待される他、リトルリーグ大会大会の記念品販売も鼠楽園にとって収入期待される、と。無惨。鼠楽園ぢたいの収益に期待できず全く関係のないリトルリーグ大会誘致でその土産物の販売にすら期待するとは……。哀れ極まりなし。

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