富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2006-07-18

七月十八日(火)晩にZ嬢と尖沙咀で待ち合せ。少し時間がありパブWに寄りビールの一杯で涼をとろうかと思った矢先にZ嬢から電話あり。あと少しで着くと言うのでビールも夢と消える。それでも飲もうと思ったビールが飲めぬと無性に飲みたくなりコンビニでハイネケン一缶立ち飲み。Z嬢と会い尖沙咀東の一平安。麦酒一杯、焼き餃子、鬼ごろしをコップ酒一杯、タンメン。タンメンって湯麺だがなぜ「野菜だけ」ぢゃないといけぬのか。湯麺ならば汁そばの総称のはず。しかも塩味に限るのが日本のタンメン。白湯麺で、醤油味などからの区別か、それが略されて湯麺なのかも。香港科学館でベルトルッチ監督の“Last Tango in Paris”上映あり初見。餃子とタンメン避けるべきだったかも。せめて尖沙咀ならHoliday InnのブラッセリかLangham Hotelの紐育デリ。この上映、字幕なしでフランス語と英語だけはつらいところ。英語と簡単なフランス語だけの理解ではとても濃いエロチックな会話に嵌れず。1972年当時物議かもしたエロティシズム。当時、映画のポスター、小学校の校門横にずらりと並び壮観。ポルノ映画のポスターも堂々とヌードがポスターになっていた開放的な七十年代。それを学校の行き帰りに東映マンガ祭りや「カッコーの巣の上で」などのポスター見ているふりをして横目で日活ロマンポルノや「エマニュエル夫人」のポスターの虜になった時代。当時、鮮烈な印象ある「ラスト・タンゴ・イン・パリ」のポスターは、むしろ大人しめのところが「これはむしろかなりエロなのではないか?」と当時の小学生まで察したかどうか。だが今となっては大人しい上品さ。弱冠31歳のベルトルッチ。パリの全ての場面が、どれもこれも、ガラス一枚まで印象的。取り直しのきかぬ演技。吐く息までこちらにかかってきそう。130分の作品を通しての徹底は日常の排除。マーロン=ブランドと二十歳のリア=シュナイダー演じる男女の愛欲の世界、といっても、例えば大島渚の『愛のコリーダ』が性愛のほかに飲み食いや寝て起きての生活ベースであるのに対して、この映画では飲み食いすらほとんど排除され、最後のダンスホールの有名なタンゴ踊るシーンでようやく二人が泥酔し、見ていてどこかこれに安堵。そこまでの徹底。ホンハム站まで歩き香港島への海底バスに乗車。どのバスも心なしか二階先頭部に客少なし。昨日、葵涌で路線バスの大事故あり。運転の粗っぽさと不注意が直接の事故の原因ながら必要以上に高性能で馬力あるバスの誕生にこそ問題あり。バスに乗車してあらためて二階先頭部眺めると「非常時はこの器具でガラスを割って脱出できます」とハンマー備え付けられているが昨日の事故ほど先頭部抉られるとガラス割る必要もない、と洒落にならず。
▼信報に香港政府教育統籌局常任秘書長(Arthur王と異名の李國章局長に次ぐナンバー2)の羅范椒芬(物議かもす奇妙な発言多し)が一文寄せる。書き出しから「香港回帰祖国以来、教育統籌局一直致力推動国民教育、加深香港年軽一代対国家的認識、培養対国民身分的認同」と宣う。教育の目的が健全なる国民育成にあることは近代国家にとって明らか事実であるものの、それを敢えて露見させずにカモフラージュすることが教育当局の上手さ。そういう意味では、愛国心だの国民としての義務だのと、人によってはアレルギー反応起こすようなことを明言し徹底しようとする日本の教育行政も下手だが、この香港の対中央意識した愛国、国民育成教育の徹底も逆の意味で香港の伝統的な植民地根性丸出しで哀れなるべし。

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