富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2006-07-17

七月十七日(月)O君より古い香港の絵葉書写真数葉送られる。もはやどれも使い古され珍しくもないか、と高を括っていたが、海水浴場の写真には驚いた。その幾万幾千の海水浴客の数。しかも海水浴場だが波止場もあり海岸に船が幾艘も浮かぶ中での海水浴。船からの人糞汚水垂れ流しもありやなしや。周囲のマンションの豪華さ、そして海岸の大きな建物の裏手、高台から海岸に下る歩道は今も全く変わらぬまま、でリパルスベイ。ただただ驚くばかり。この写真でも明らかなことは、海岸の、写真で向って右の海岸の端に、観光客多く参拝の「リパルスベイのお寺」不在。あそこが仏教でも道教でもお寺でなくライオンズクラブの建立の慈善水難救助団体の建物であること。諸事忙殺され晩に至る。晩のNHKのNW9見ておれば国連での対北朝鮮決議につき同国大使が45分で内容拒否しての退場に対し「安保理メンバーは」とテロップつけて米国大使の「45分で拒否とは新記録だ」という皮肉のコメント画面に流すが安保理メンバーが対北朝鮮決議では最終的に合意は見たものの思慮様々で一概に同意とは言い切れず米国の発言だけとらえて「安保理メンバーは」とするのは如何なものか。キャスターが旧レニングラードでのサミット現場に飛んでおり(夏休み旅行?)スタジオが寂しいからか「大学生の就職戦線」のどーでもいい特集、ぱっとしないので作家の石田衣良先生出演し饒舌にコメンテーター役。少年問題なら重松清先生かしら。作家がテレビで「喋り」を始めると小説はもうつまらない。映画監督がみずからの映画について語るのも最悪だが。それを思うと村上春樹先生のスタンスは素敵かも。ところで村上春樹といえば先日、SCMP紙の特集記事をてっきり英語での新刊発売にあわせた紐育かどこかの出版エージェントによる提灯記事で世界中に配給されたのかと勝手に合点していたが、どうもそれがSCMP紙独自の取材でこれが注目浴びていた由。日本では毎日新聞Mainichi Daily NewsがAP電で“Haruki Murakami says he's worried about Japanese nationalism”を伝えるがほとんど反響なし、の模様。出版界にとっては村上春樹のこういった政治的発言は「期待される村上春樹像」から逸脱している、とか。
蘋果日報報道によればダライラマ14世突然の中国訪問となり已に北京に到着、仏教聖地の一つ五台山など参拝の後に青海省西寧市に近きダ師出生の故郷にある搭爾寺訪れるという噂流れ昨日はダライラマ一目拝まんと千万の蔵人この地に集まった由。チベット亡命政府の「チベットの声」は急きょ声明発表しダ師は今も印度のダラムサラに居り中国訪問はデマと否定。この噂、ダ師がかりに西蔵に戻ればいったいどれほどの蔵人らの反響となるか調べるがための中共による意図的なる仕業という憶測もまことしやかにあり。(以下、18日追記)朝日新聞に香港発で、この「蘋果日報の報道によれば」記事あり(こちら)。
ダライ・ラマ14世が訪中する」とのうわさを聞いた信者ら1万人以上が14世の生誕地に近い中国青海省チベット仏教寺院に続々と集まっている。
とするが蘋果日報の記事では17日の報道で現場の寺院付近の者の話として「昨日はかなりの数の」であり、取材が16日だとすると15日の話。「集まっている」のではなく「集まっていた」が正しいのでは。また「1万人以上」も記事では「萬千の数」で「多数の」程度の意味。1万人以上と転載記事で断定してはいけぬ。しかも、この親記事は「このデマは中国当局がもしダライラマが帰国した場合にチベット人の間でどの程度の反響があるかを計るため意図的に流した可能性も否定できない」ことが記事の「おいしい」ところ。そこを朝日が記事にできなかったのは信憑性に薄い、からなのだろうが「1万人以上が続々と集まっている」にしてしまってることぢたい信憑性に薄いのに。これについてはきちんと朝日新聞広報部にご意見お伝えする。
シンガポール訪問中の自称政治家Sir Donald君、庶民派が売りとシ政府も承知のこと、気さくなところで当地の名物料理、肉骨茶賞味してもらおうかと地元の肉骨茶の名店「黄亜細」(Ng Ah Sio)の食事をばシ政府が計画するが、店の営業時間は午前六時から午後二時まで、賑わう店に廿名だかのご一行での食事だからと閉店後の按配をシ政府が店に打診のところ、この小店、営業時間は営業時間とシ政府の要人来客の申し出きっぱりと断った由。天晴れ。蘋果日報では「この『Noと言える根性』を見習え」とSir Donaldの対北京の軟弱さに苦言。
▼信報の林行止専欄が「以金価為順縄、日圓等同廃紙」と金価格基準にしたら日本円は紙屑同然、と何かと思えば、細かい話は省くが、日本円は1871年(明治4年)に1円が金1.5gと決められ金本位制始まるが、当時、20.7円で金1オンスで、興味深いのは米ドルも$20.7で1オンス換算。ということは1円=US$1で等価。それが戦後にはUS$1=360円まで円安となり、1980年に金貨暴騰の折は1オンスが12万円、今こそ6万円くらいで落ち着いてはいるが1871年と比較すると日本円の価値下落は99.999%と林行止手厳しい。終戦直後の新円切り替えなど考慮すれば一概に言い切れぬ価値窮乏だが、林行止が言わんとするところは中国元について、で、日本が戦後の360円の円安をば享受のあと1973年に変動相場制に移行したとはいえ85年のプラザ合意まで円安を続け、その後も続く安定も言わば米国の「照顧」のおかげ。25年も円安維持での輸出志向で世界第二位の経済大国と成ったが、この米国の対日優遇政策を中国が享受できるか、と。専欄はここで筆を置くが、言わんとするところは日本が米国に隷属することで土下座して得た経済的繁栄、中国が覇権争う姿勢では米国は過去の対日優遇は絶対にしませんよ、と。そこでどうするのか、が中国の国家政策の大詰め。少なくともこれが見える迄は中国共産党一党独裁に甘んじるべき鴨。