富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2006-07-01

七月朔日(土)朝、雑事済ませ山を走ろうと家を出るがかなり派手に驟雨。雨の通り過ぎるの待ち山を登り大潭を走れば雲の絶え間に陽光あり。Wilson Trailの入口近くでコンクリートの路上に「老當益壮青春常駐」と達筆な揮毫?見つける。10km走り海岸で麦酒飲みながらFrances Wong教授の自伝“ChinaBound”の続き読む。日本軍による香港占領の頃の話も生々しい。まだ香港大の学生であったWong女史と同じマンションに住う近隣の女性が日本軍の兵隊による住宅取り調べ受け、犯される恐怖から投身自殺した話、日本軍の兵隊の命令無視して道路を走って逃げようとして銃殺された少年の話などなど。中国での話も苛酷だがいくつか笑える話もあり。ひとつは1956年の国家規模での蝿の撲滅運動。三日間、仕事も中断して中国の国土で一斉に蝿を退治して衛生的国家建設図ろうとしたのだが、北京では当時、中国から「修正主義」と非難されていたユーゴスラビア大使館はこの命令に従わず、蝿も治外法権の事情知ってか知らずかユーゴスラビア大使館の敷地内に逃げ込んだ話。文革では民衆が動員されいかに盲目的であったか、という逸話で、紅衛兵が「打倒劉少奇!」と叫ぶとデモ行進に従う民衆は後ろから「殺せ!殺せ!」と言うのだが、先頭の紅衛兵がスローガンを変え「毛沢東主席万歳!」と叫んでも民衆はまだ「殺せ!殺せ!」と叫んでいた、という話など。読了。陽射し厳しく都合麦酒三缶。午後に帰宅しようとバスに乗れば驟雨。午後三時よりヴィクトリア公園より七一民主遊行あり。道路封鎖ありKing's Roadから早々と規制避ける自動車がEastern Highwayに迂回し渋滞。一旦帰宅も能わず。走ったままの恰好で汗臭いしカメラも携帯用のContaxしかないが、まぁ、いいか。遊行もすでにヴィクトリア公園を出たか、と弥次馬的に湾仔に向うが道路西行きが全面封鎖されているものの遊行が一向に来る気配もなく銅鑼湾に向って歩けば結局、銅鑼湾に辿着き暫く待って遊行に出会う。湾仔の大公報のビルの前には香港回帰祝賀の新聞特集張り出され董建華が香港政府の勲章の最高位である大紫荊勳章受賞と知る。鵝頸橋では李國雄君、「前線」のEmily Lau女史は銅鑼湾で遊行支援。蘋果日報社主・黎智英氏、民主党の李銘柱氏らは個人でデモに参加をお見かけ。とにかく若者の参加が目立つ。政治的なことに関心が持てるだけ、自分で考える環境があるだけ、香港の若者は幸せか。今年の蘋果日報が配布のステッカーが「我要普選」の他に「民主未解決」と「普選有圧力」で巴士阿叔の名言のコピーだが、もう巴士阿叔などすっかり過去の人の印象あり。銅鑼湾でずっとデモを眺めるがAnson陳方安生女史の来る気配もまだまだで地下鉄で端折って金鐘。金鐘でデモ眺める中国からのツアー旅行者の会話傍聴。「我要普選」のスローガンに「香港は昔は普通選挙で選んでいたのが(総督をだろうか?)回帰した後は普通選挙で選べなくなったから」と。全然違う(笑)のだけど中国になって自由でなくなった、という印象はあるらしい。金鐘から遊行の流れで中環の政府総部。FCCで麦酒一杯飲み涼む。ケーブルテレビのニュースで今日のデモや祝賀式典、パレードの報道眺めながら思うに、陳太であれデモに参加する市民であれ、別に政府転覆のような主張があるのではなく、単純に香港基本法に謳われている通りにしましょう、とそれだけのはず。法律にある条文に沿って政治をしましょう、それが法治でしょう。何も危険なことではない、と。だが土共であるとか親中派、そして北京中央には、それが反国家的な、国家転覆の動きに映るから面白い。FCCを出てトラムに乗り東行せば遊行は開始から三時間過ぎてもまだ行列続く。湾仔の警察本部近くでかなりの人ごみあり何かと思えば陳太が此処で遊行終わるらしく即席で取材に応じている模様。湾仔より地下鉄で帰宅。枝豆に麦酒でテレビニュース見れば、本日の民主遊行は主催者側発表で五万八千人が参加、警察発表は二万人。香港大学の鐘先生の民意調査センターの集計は三万六千人から四万三千人。ちなみに昼頃の親中派団体主催の慶回歸大巡遊は主催者側発表が五万人で警察発表で四万人が参加とか。祝賀パレードは開始から一時間で終了。かたや民主要求デモは開始から三時間半。実際にはその差は歴然。デモでの逸話いくつか綴れば、この慶回歸大巡遊には米国より帰港中の葉劉淑儀女史(元保安局長)が参加という噂もあったが主催者は巡遊開始前にきっぱりと否定。葉女史の嫌われようは四年過ぎても未だ拭われず。新華社がこの民主化要求デモを報道も少し驚き。主題は「普通選挙実施」で直接的に中国政府、共産党批判でないことに安堵の現われか。今日のデモでも警察の真摯な警備態度は例年の通り。ふと気づけば警察官の腰には拳銃なし。一人の偶然に非ず市街でデモ警備にあたる警官は指揮官除き誰も拳銃を付帯せず。さすがに政府総部周辺警備の警官は「辛子スプレー」は携帯していたが。デモ参加者に一切威圧をせず、立派なもの。夕食は韮と豚肉の鍋。DVDで映画『パッチギ』観る。世代的に『イムジン河』などフォークルの曲懐かしいところだが、オジサンたちの回顧趣味と云われればそれまで、の映画かも知れぬ。若い人が観てどう感じるのか。
▼小泉三世訪米で布殊Jr.と日米関係は「歴史上最も成熟した二国間関係」と謳うとか。成熟とうかれるのもいいが成熟のあとは腐蝕以外の何ものもなし。松井今朝子女史はこの状況を「今や「卒業旅行」でプレスリーの生地を訪ねるのが何より嬉しいというバカ丸だしの国家元首を抱えてしまった国民のひとりとしては、天皇の戦争責任もさることながら、楽天的な世代がこの国に及ぼした責任を追及したい気分である」と苦言(首相が元首かどうかは意見の分かれるところ。だが小泉三世ほど陛下の御意も無視し真紀子大臣罷免では陛下に嘘をつくという前代未聞のやりたい放題、それを思えば実態は元首か)。御意。香港の晩のニュース(Pearl局)でも七時五十分、つまりスポーツニュースになる一つ前、つまりニュースの構成によっては「飛ばせる」どうでもいい下らないニュースのところで、このプレスリーに興じるご機嫌な小泉三世の映像流れアナウンサーも苦笑で言葉もなし。ところで不愉快な世の中で溜飲下がるのは読売巨人軍の記録的な10連敗。史上二度目で長嶋で最下位の1975年以来。朝日のスポーツ面で「こんな凡試合でも、巨人ファンはメガホンも投げないし、ヤジも飛び交わない。この状態で怒られないのは、悲しいことだ」と書かれていたが巨人が怒られないことよか巨人に怒らないファンがどうかしているわけで、バカ丸出しの首相を抱え何ら疑問に思わぬ楽天的な世相と、この怒らない巨人ファンは共通項であろう。巨人、石原、自民党……で巨人を強くするには石原慎太郎を監督に起用すべきかも(スポンサーは読売であるから敢えて自民党を加える必要もない)。
チベット鉄道開通。鉄道ファンとしてはチベット高原走る鉄道に興味沸くが鉄道の政治性を考えると「北京とラサが鉄道で結ばれること」の中共によるチベット「解放」以来の宿願達成なわけでただ喜んでもおられず。これがチョモランマ潜りネパール、印度とも結ばれるとなればまた話は異なるのだが。開通と営業開始記念式典には胡錦涛国家主席も出席。三峡ダムの完成式には出なかったのは何故?

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