富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

六月八日(木)ダイキャストのB747機でサムライブルー2006の特別仕様、というのを見せられ「へぇ……」と好きな人には垂涎モノなのだろうが、サムライブルー2006が何なのかわらず、こういう時に「それ何?」とか口にするとまた常識のないこと暴露する羽目になるので黙っていて、あとでこっそり調べたらW杯の日本チームの応援キャッチフレーズがそれ。ブルーって、陰気な、憂鬱な、悄気た、青ざめた、猥褻な(ブルーフィルムはこれ)とか意味があるのに、それでいいのだろうか。なんだかんだ言って連日ワールドカップのこと書いているが4年前に英国のブックメーカーに余のアカウント通じて(当時はまだ香港から海外のブックメーカーへの「賭け」はグレーで非合法になっておらず)I君が我が家でのシャンペンで酔っ払った勢いで賭けたのがセネガル(HK$50の8.1倍)、北アイルランド(HK$20の5001倍!)、スイス(HK$20の601倍)、セルビア(HK$20の101倍)、ベルギー(HK$20の126倍)、クロアチア HK$20の126倍が2つ)、ナイジェリア(HK$50の81倍)にカメルーン(HK$50の6.7倍)。このうちセネガル北アイルランド、ベルギー、ナイジェリア、カメルーンはW杯ドイツ大会に参加しておらず。その段階で掛け金は水の泡。クロアチアが2つ賭けてあるのは、旧ユーゴで国家の分裂や統合の結果だろうか。実際に出場チーム決まりスイスは香港でのオッズは100倍なので601倍はかなり甘い見方だったのであろう。
▼信報やSCMP紙に一昨日の天皇皇后両陛下の外遊前の記者会見の内容かなり好意的に報道される。会見での発言を丁寧に紹介した上で
七十二歳的明仁在過去的公開講和中、一向表現非常開明、関心受戦争侵害的人、渇望重建日本的聲誉、並曽在二〇〇四年反対強制在学校卒業儀式上唱国歌。為了修補日韓関係、明仁曽提及日本皇室流着韓国的血統;而対於日本一九三一年在中国陰謀呑併東北三省、他曽称上世紀三十年代是黒暗時期。
とこれまでの陛下のリベラルなる発言に言及。かつて「天皇」といえば日本軍国主義の象徴、と信じられていたものが、政府が首相始め外務大臣が外交粉々に破壊し続けるなかで、天皇が日本の良識の象徴になるとは! 今日の朝日で樋口陽一先生が対談(相手は山室信一京大教授)で憲法愛国主義について述べているが(これについては下述)、天皇がまさに日本国憲法の理念をば象徴し体言している驚くべき事実。
▼その樋口先生と山室信一氏の「国家とは何か」という対談(朝日、衛星版では八日)。樋口先生の、近代国家がフィクションであるから、いろいろちぐはぐな処があるのは当然で、それをどう経営するか、に民主主義だの基本的人権などが重要であること、……これは今更言うまでもなく金科玉条。だが一つ朝日新聞に苦言すべきは、相手が山室氏では樋口先生と高弟では理念、持論が一緒で「対談」にはならず。読んでいて「樋口」「山室」という話し手の名前を抜いても一人語りのよう。むかし読売新聞で司馬遼太郎樋口陽一対談も理念的には同じでも専門が違うから話が面白い。例えば相手を小林信彦にするとか、そのくらいの配慮が欲しいところ。樋口先生の対談相手に朝日が『国家の品格』の藤原某を選び「国家とは何か」対談させたら樋口先生は怒って今後一切朝日に出てもらえない鴨。
▼最近話題引摺る傾向多々有るが、司徒華氏が「自称政治家」Sir Donaldも89年の天安門事件での民主化運動支持した「民主歌聲獻中華」のイベント(ハッピーバレー競馬場で20萬人規模)にSir Donaldが息子連れて参加していた、と証言しSir Donaldは息子連れてジョッキークラブのクラブハウスで食事に行ったところ司徒華氏にばったり遭遇、と弁明し、その「真偽」が話題となっているが(劉健威氏がこれについては当時の香港の常識的な民主運動支持の世論、Sir Donaldの現在の立場考えれば、非難や釈明に値せぬこと、と指摘は正しい)、その話題のSir Donaldはまるでこれを避けたかのように六月四日の前からかなり長い日程で広西、雲南の「珠江デルタ地域」をば視察旅行。そこで、香港でのSir Donaldの白黒論争よかもっと興味深き出来事は、Sir Donaldが雲南省昆明カソリック教会のミサに出たこと。熱心なる天主教信者のSir Donaldであるから旅先でも毎朝の礼拝欠かさぬことは驚きもせぬが、それが「宗教は阿片」である中国国内であり、しかも昆明のこのカソリック教会が「バチカンが承認していない」馬英林主教の主宰する教会であること。これをば指摘されたSir Donaldは「個人の信仰をば政治化せぬべき」であり毎朝の礼拝は習慣で、旅先でその教会に入るときに神父にいちいち所属は尋ねない、と。確かに。だがバチカンにしてみれば熱心なカソリック信者であるSir Donaldのこの礼拝は「そうですか」と気にせぬわけにもいくまい。ことに香港の陳日君枢機卿にとっては。
▼日本政府が05年度分の対中円借款凍結解除(6日)。円借款が政治問題化、と言われるが元来、政府の対外国借款は政治の道具。七日の朝日で、その円借款の記事の片隅に「地方は崩壊寸前」と政務官らが首相に苦情、というベタ記事あり。自民党竹下亘君(環境)、石田真敏君(国土交通)の二人が「この前の選挙で3つの自治体で票を減らした。小泉改革の影響が出たんじゃないか」「地方はもう大変で、崩壊寸前。都市と地方のバランスがなければ日本の発展はない」と地域格差につき首相官邸での会食で小泉三世に直に苦言呈す。小泉三世相変わらず「駄目だと思ったときにチャンスがある」と青春出版のビッグトゥモロウ的なチープな言い草で(って「古いネタ……」と書こうと思ったが、この雑誌がまだ存在していたとは……こちら)、みずからが総裁である党の議員の声に聞く耳などもたず。
▼新聞に「猪木酒場、全国展開へ」という記事あり、アントニオ猪木をイメージした居酒屋、とそれぢたいはどうでもいいのだが、経営する会社が仙台市ジー・テイスト、とあり、仙台にはかなり事情通であるはずの余が知らぬとは新興企業か、「ジー」はもしかして仙台といえばG/i/Pか?と思い慌てて調べれば「平禄寿司」も経営する会社とわかり、会社の沿革を見れば、仙台では「ああ、あの会社」がジー・テイスト。20世紀には仙台で「元禄寿司は仙台が発祥の地で本店がある」と都市伝説化していたもの。仙台は牛タンばかりかハヤシライスも仙台が発祥とかいろいろ話あり。で実際のところ回転寿司は大阪の元禄産業が元々で、昭和42年に仙台の「株式会社教育用品」という会社が回転寿司経営のフランチャイズ元禄寿司の名前で仙台の中央通りに大町店開店(私は個人的にここで抜けた差し歯を飲み込んでしまった懐かしさもあり)。この(株)教育用品が株式会社元禄となり元禄寿司の全国展開となる。この「元禄寿司」の商標、営業名称の契約について元禄産業と揉めたとは聞いていたが、ここからはもう私自身が香港に来てからの話であるが、1996年に仙台のこの元禄寿司平禄寿司という名称となり翌年には元禄産業との商標契約、名称の契約満了。で順調に経営規模拡大し今日に至る。で、このジー・テイストなる会社名も「元禄」へのコダワリからGなのか、と合点したが、実際には05年に名古屋の学習塾と外食のフランチャイズ展開する株式会社ジー・コミュニケーションへの吸収合併のためジー・テイストになったもの。つまり仙台でもG/i/Pとは全然関係がなかったのだが、学習塾経営の会社との吸収合併というのも、もともとこの元禄寿司の店が株式会社教育用品だと思うと因縁めいたものもあり。ちなみに香港には元緑寿司あり。

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