富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

五月廿六日(金)『国家の品格』ショックより立ち直れず。ホッブスの社会契約論の藤原センセによる無理矢理な解釈だったが、富柏村的には「すなわち国家とは人間が自然を放棄した状態」である。昨日の朝日に『敗北を抱きしめて』のジョン=ダワーのインタビュー掲載あり。「戦後処理」の無理矢理が、結局、藤原センセ的な「思想」生んでしまう原因なのだろう。加藤周一夕陽妄語も「藤田嗣治私見」がいい。東京の国立近代美術館でレオナール=フジタの生誕120年で開催されている藤田嗣治展。加藤周一はフジタの生涯を紹介しつつ、最後はフランスと日本の間で浮遊するフジタの姿に、自らを投影させている。さすがの加藤周一にとっても今どきの日本の姿はもはや(戦時中すらまだ戦後への期待を込めた加藤周一であったが)精神的にはディアスポラなの鴨。陰鬱なる暗い曇天。香港は雨期でまだ季節らしいが東都は季節外れの雨空続きとか。早晩にジムで一時間の有酸素運動。Z嬢と銅鑼湾で待ち合せ南亜餐庁に海南鶏飯を食す。南亜餐庁といえばかつてSharp街Eastの老舗。共同経営者らの縺れで一旦は閉業したが(恐らく彼らのうちの一人か、あるいは息子か、が)Leighton Stに当世風の小ぎれいな内装で復業。総じて店が新装などすると、銅鑼湾では皇后飯店などがいい例だが、高級化で客単価も上がり供する料理はそれほどでもない(旧と同じ水準なのだろうが薄汚い店でなら美味い料理が小ぎれいな店になると美味くも感じられず)。それにしてはこの肆の海南鶏飯は値段は変らず、「滑」っとした食感は変らず。だがかつての白衣姿の給仕のオヤジらの姿もなく今様の若衆が給仕していて、どこか落ち着かぬ。
▼明日からの週末に開催の西湾河のマンション・嘉亨湾(Grand Promenade)の「日本まつり」。今日も新聞に折り込み広告あり相撲には元横綱の輪島が来港で(相撲はとらぬようだが)記念写真撮影、とあり。ちなみにパンフレットには輪島博士氏とあるが、これは輪島大士だろう。で忍者ショーが伊賀流忍者集団・黒党で、日本伝統舞踊アカデミーASUKAの舞踊が「芸者によるパフォーマンス」なのは出演者には不本意だろうが、ここまではわかる、で最後まで謎なのが歌舞伎。ASUKAが飛鳥流で沢瀉屋の市川右近の実家なら歌舞伎も右近が来るかと言えば沢瀉屋一門は28日まで名古屋の中日劇場で「雪之丞変化2006」なる舞台あり、一昨日、七月歌舞伎座での泉鏡花の芝居でも玉三郎海老蔵が記者会見あり共演の沢瀉屋一門は名古屋からビデオで挨拶、七月といえば歌舞伎座はかつては猿之助の月で、今もこうして平月よか多少奇を衒った芝居が掛かり、而も沢瀉屋の月を大和屋と成田屋でこうして盛り上げるのだから沢瀉屋一門にとっては有難い話で、その記者会見にすらビデオで挨拶なのだから、まさか中日劇場の千秋楽に出ずに来港は不可。香港での歌舞伎役者の営業といえば、何といっても芝翫香の香港店の開業にあわせ来港しペニンスラホテルにて素踊り披露して一泊で帰った神谷町の印象、今以て鮮烈。香港での歌舞伎といえば橘屋さんだが、たかだか香港のマンション売り出し、である。歌舞伎といえば、六本木に「うまや」夫婦庵という食処あり。六本木の一等地にて夫婦庵と名付けるは藤間紫と、この店の企画発案が沢瀉屋、で納得。此処はかつて六本木宗家藤間稽古場。ここに紆る話、久が原のT君より聞く。興味深し。
▼台湾で亜扁総統、夫人の太平洋そごう経営者からの贈賄疑惑に続き娘婿が株のインサイダー取引で拘留される。反国民党の民主運動で投獄された亜扁、大学時代から同じ運動に加担し白色テロにて車椅子生活余儀なくされた夫人、だが亜扁が総統になり「疑惑の銃弾」の二期目就任からは全く以て「地に堕ちた」感あり。
▼旧聞に属すかも知れないが、香港のバス車内での「怒れるオジサン」のビデオクリップ(こちら)。都会の狂気。
http://www.youtube.com/watch?v=EsYRQkmVifg

富柏村サイト http://www.fookpaktsuen.com/