富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2006-05-17

五月十八日(木)昨晩、ちょっと飲んだせいもあるがかなり元気。快調であったのが今日のこの倦怠感と強烈なる睡魔の来襲。マラソンでもそうなのだが老体は翌日は不思議と元気で翌々日に疲労が襲い数日間倦怠感残る。午後遅く香港歴史館に知人数名お連れして歴史館常設展展示内容(香港歴史)につき引率、展示内容解説の際の「ツボ」などご説明する。展示内容が想像力掻き立てる内容であれば勝手に、でいいのだが、悲しいかなこの歴史館は通常の参観者にとっては展示内容に詳しく、かつ面白い解説でもないと、とても興味もてず。マカオの歴史博物館、かつて九龍公園にあった頃の香港歴史博物館はとてもレベルが高かったのだが。残念。この歴史館、館側は「人手不足」を理由にするが、館が所有する数万点の歴史史料の整理、展示準備が終わらず、と。だが開館していったい何年、レベルの低い常設展示を全く変えずにいれば気が済むのか。台風はシグナル3となるが少し風が強い程度。香港島に戻り中環のFCCで独り夕食済ます。タイ風牛肉サラダ、のみ。ハイボール二杯。晩に市大会堂にてPascal Rog?(パスカル=ロジェ)氏のピアノ演奏会あり。Z嬢と観賞。桶は香港シンフォニエッタ。まずはシンフォニエッタの奏者らによりラベル作曲、ハープ、フルート、クラリネット弦楽四重奏曲のための序奏とアレグロ。疲労感でかなり眠い、というか仮寝してしまう。ロジェ先生登壇で同じくラベルのピアノ協奏曲ト長調。香港シンフォニエッタ、で指揮は葉詠詩(Yip Wing-sie)、これには苦言をし始めればいくらでもあるが、厳しい状況の中で音楽好きな人たちが頑張っているのだから。それにしても木管の音の不安定さや、ステージ中央の高い位置で目立つホルンの女性がのべつまくなし楽器から唾抜きを大きな動作でするようなことがかなり気になる。監督でもある葉女史は、シンフォニエッタ(小楽団)なのだから、むりに音量や抑揚など煽る演奏に挑むより、ちょっとしたそういう所作に気づかったほうがよかろう。それにしてもパスカル=ロジェ、フランスでフランスの作曲家のピアノ曲弾かせたら当代一、とは聞いていたが、お見事。ラベルのこの曲では今ひとつピンとこなかったが休憩挿んでFrancis Poulencの「2台のピアノと管弦楽のための協奏曲」。プーランクはフランスのピアノ曲に傾倒するZ嬢の影響で聴くようになったがサティやオーリックと出会いジャン=コクトーのサロンに出入りする、まさに青春が20年代の巴里。そのプーランクはこれまでCDで聴いていたピアノ独奏曲が何ともいえぬ寂しさや憂いの感じがあったのだが、この「2台のピアノと……」の思いっきりの破天荒な明るさに、驚き。1932年、プーランクが33歳のまさに巴里で楽しくて仕方がない時期の作風なのだろうか。帰宅してからネットで調べると、プーランクは36歳の時に作曲家としてのライバル、無二の親友、実はそれ以上に恋い焦がれた?フェルーの死でロカマドゥール訪れる話など、そうそう今日は市街「ダ=ヴィンチのコード」に悪酔いするほどだったが(最悪)、ダ=ヴィンチのコードなかよかずっとプーランクのほうが興味深い。ところでレオナルド=ダ=ヴィンチでいえば、こんなキリスト教の隠された真実、なんて話よか、モナリザの肖像がじつは自画像ではオヤジくさいダ=ヴィンチが女装したらの理想像であった、という話のほうがよっぽど可笑しくはないか。それはいいとしてプーランクのこの曲なのだが、その2台のピアノでロジェと共演するのが伯野亜美さんという日本人の若いピアニスト。ロジェとプーランクを一緒に弾くなんぞ若手ピアニストとしてどれだけ緊張するか……と思うが、もう何度もロジェ先生のご指名で共演するから気の合ったコンビなのだろうが、これがまた堂に入った、見事な弾きっぷりで驚く。ロジェがこのHakuno Ami(伯野亜美)なるピアニストを完全に信頼しているからなのだろう、立てている。素晴らしい共演。この紐育在住のピアニストのHakuno Amiさん、あまり情報がないがamazon.comにてCDレビューいくつか書き込みあり、その一つが矢野顕子のPiano Nightlyで、これはZ嬢のCDだが余の愛聴盤。とても親近感あり。この見事な演奏に続き、ピアノ仕舞われ(ということはアンコールでもロジェ氏やHakunoさんの演奏がない、と言っているわけで、ちらほら帰る客もあり)、シンフォニエッタだけでプーランクシンフォニエッタ(ややこしいが曲名がこれ)演奏。タイトルからして自家薬籠中の曲か、と思う。この曲ももっと軽く演奏していい気がする。帰宅して少し読書。
自民党総裁選挙に立候補?の河野太郎君のメールマガジン「ごまめの歯ぎしり 」に国連のアナン事務総長との昼食会の話あり。河野君、いきなり「改革タリバンの巣窟へようこそ」と開口一番、というのも洒落にならぬ失礼で、それに加え「国連は改革できないのなら、日本は任意拠出金を削減する時期に来ている」と弱い者いぢめ。これに対してアナン氏の対応が秀逸。にっこりしながら「あなたは強硬派だがお父上はそうではないでしょう。お父上は元気ですか、妹さん(河野洋平外相のお供で国連に行ったことがある)は元気ですか」と切り返し「原理主義者は決してイスラムの世界だけではない、アメリカにも原理主義者はいろいろな形でいる、拠出金の議論をするときは中国をねらい打ちにしているととられないような議論が大切だ」と河野三世をば諭す。参院議員の遠山君が、事務総長に最も必要な資質は?と問えば「笑えること、特に自分を笑いの対象にできること、面の皮が厚いことだ」とにっこりしたそうな。見事。