富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2006-05-05

五月五日(金)。佛誕。長州島では太平清?飄色巡遊といふ祭行列あり。縁起に合わせた仮装の子らが巧妙な乗物の上に据えられ長州市街巡回。真夜中には数年前から復活の搶包山(在港邦人の間で「饅頭祭」と呼ばれる)の饅頭取り合戦もあり。佛誕に合わせた祭礼にて長州島では今日から三日間は島をあげての素食にて島一軒のマクドナルドもこの三日間だけは菜食だとか。本日、朝から自宅にて雑用済ます。昼まえに近くに住むT夫妻に日曜日の晩遅くの『人形伝七捕物帳』の映画の切符差し上げることになりお届け。中川信夫監督で若山富三郎主演の1959年の作品。T夫人に切符のお返しに、とお香(源氏香で「若菜」と題する)とZ嬢にと「よーじや」の油とり紙いただく。さっとこんなものを香港で、とはさすが京都の方。東京の人が香港でさっとお返しに、と日本橋榛原の一筆戔と錦松梅など出てはこない。ジムに行くつもりが、はっ、と今日は金曜日であることに気づく。朝からずっと土曜日と誤解。三連休であると今更ながら気づき何か一日得した気分。九龍に渡り二粒(一時間半)按摩。午後遅くジムで筋力運動と有酸素運動各一時間。ちょっとHappy Hourの気分であったが帰宅。日本は「子どもの日」でもある。かねがね不思議なのは保守右翼反動の諸君は「日本の伝統、文化」などと口にするが旧暦五月初五の端午節をば破廉恥にも太陽暦に強引に合わせてしまったことは「日本の伝統、文化」に反しないのだろうか。国家主義遂行がために「日本の伝統、文化」など言葉だけ遊ばず本当に「日本の伝統、文化」考えるなら本質がなにかよく鑑みるべき。韓国で空軍の航空ショーで余興飛行中の空軍機が墜落。韓国も今日は「子どもの日」というNHKのニュースに、韓国の太陽暦でのこの端午節が自前のものなのか、日本の侵略時の影響なのか、と考える。調べてみると1948年制定。否、考え方によっては古来、唐国の五節句が平安の頃に定着したわけで、唐土の農暦に従わぬのは日本独自の伝統と文化かも。いずれにせよZ嬢が紙で兜を折りいろいろに被せている。魯迅はんにも一つ。晩にお好み焼き。NHKのNW9は祝日でもやっていると知る。祝勝ではあるが、どうもイントロのグラフィックからしてもキャスターのキャラからしても晩23時30分からの「今日の出来事」っぽい。NW9に続き「プライスの謎」なる番組で百円ショップ特集し百円ショップの多くの商品が中国からの輸入、その中国は浙江省に義烏という日用雑貨の巨大流通市場あり、とこの杭州郊外の都市をば紹介。こんな大規模なのか、それにしても「なぜこの巨大流通市場が義烏に、なのだろう?」とぼんやりと眺めながら、ふと読みかけの新聞に眼を落とせば偶然にも信報に「揚開義烏之謎」という記事あり。偶然に驚く。がテレビでは紹介されなかった義烏の背景について詳細あり。義烏は豊かな浙江省にあっては渇水に悩まされ農作業も振るわぬ貧困が続き、古来、就是窮得没吃了、只能靠物物交換(食うものがなければ物々交換するばかり)で鶏毛すら抜いて市場に売りに行くが如き惨めな交換経済が元になり小規模な市場経済が発達。そこに経済開放政策が始まったことで、それまでの他の地域にない流通経済のノウハウを活かし今日に至る、と。
▼陶傑氏の「醤缸裏的女人」という随筆(今日の蘋果日報)が凄まじい。アンソン陳方安生女史(陳太、マダム陳)が土共左派による女史の政治的姿勢への揶揄につき先週発売の雑誌『壱周刊』にて「もういい加減にしてほしい」と苦言呈しているのだが、陶傑氏にしてみれば中国人社会の三民主義は農民、蟻民と暴民で、太平天国義和団文革もみんなこの「三民主義」的な見事さの結果であり、そういう野蛮な社会でアンソン女史の如き一人の精神的に自立した女性など現われでもしようものなら「異端」として排除されるのが当然。フランス革命ではマリーアントワネットは暴民らにとって恰好の餌食、人民法廷ではかなりの侮辱受け死刑台へと登台。「パンが無ければお菓子を食べればいい」と言ったなどと悪評つきまとい人民の敵として扱われたが、最期までの毅然とした態度が少なからず国民に強烈な印象与え、実は彼女に喝采をおくった国民もある、という話を陶傑氏は続ける。言いたいことは暴民の野蛮さと淑女の気高さの温度差なのだろう。で陶傑氏曰く、人は陳太に同情しもするが、97年の香港返還以降の中国の政治醤缸に入ってしまったことは陳太の誤謬。陳太と同郷(上海)のリディア?蓮如女男爵は逸早くその危険性に気づき身を退く聡明さ(返還後の行政長官候補と噂もされたが香港政界から離れ英国で爵位受け貴族院議員)。リディア女男爵は「中国人の自相残殺は観るもので参加するものじゃない」と知っていたから逃げた。それでその無残なる騒ぎをば遠くから眺めるのはけして悪くない暇つぶしであり娯楽、と。中国という国家、社会と人への自虐的皮肉、が陶傑氏のまさに骨頂、という一文。
▼台湾で雲門舞集がこの五月は「白×3 美麗島」の舞台を台北、高雄、台中で上演。美麗島といえば台湾の別称であるが「美麗島」という言葉にこめられた台湾の民主化や独立への希望などなどあり。「白」も白色テロ時代の白でもあり、今回の舞台のタイトルからして政治的すぎる、という声もあり。だがポケットマネーで切符購い「白×3 美麗島」舞台観た馬英九台北市長(間違いなく次期総統か)が舞台の芸術性を讃め政治的などという非難をば一蹴。雲門舞集の制作者である林懷民氏が実は誰よりも崇高な意味で政治的であるから、そんな安易に政治的メッセージなど舞台に掛ける筈もなし。台湾といえば阿扁総統は中南米訪問で米国立ち寄り切望したが米国に刎ねられアンカレッジ経由もならず急きょ、中近東を中継し出発。94年に李登輝総統が中南米訪問の途中、ハワイに給油立ち寄りに始まり(この時は米国の非礼に李登輝君憤慨しパジャマのまま機内にて米国側代表と会見)、翌年は米国側譲歩し中国への牽制もあり李登輝総統晴れて母校コーネル大学訪問し記念講演。阿扁総統も米国の人権団体からの人権賞授賞や紐育訪問まで出来ていたが、再選後は阿扁君の内政無策外交行き詰まりで米国もすでに阿扁君に見きりつけ国民党・馬英久台北市長をば三顧の礼で歓待しておいてのこの阿扁への対応。阿扁への国民の期待は何だったのか。先日の新聞に米国の中国研究家が、民進党の阿扁政権が対中緊張のなかで台湾の政治化にばかり熱心で、国民党政権で不満も多かった福祉、自然環境保護などにまったく力をいれず経済政策の無策ぶりが支持失墜の要因、と。まさに。

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