富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2006-04-28

四月廿八日(金)大雨。焼酎の酔いこってりと残り二日酔いの不快感どころか未だ心地よき酔いに朝から銅鑼湾の文輝にて紫菜墨丸河など食す。早晩にジムに行くにもまだ足許がふらつく感じもありPacific Coffeeにて早晩に珍しく珈琲など飲みながら新聞数紙に目通し帰宅。NHKのNW9で横田めぐみさん母が米国議会公聴会に出席の報道20分ほど続くが華盛頓支局からの生中継にめぐみさん母に対して神南のスタジオのキャスター二人は質問がずっと「どのくらいお母様の気持ちが伝わったと思いますか?」幾度となく聞き返すばかり。キャスターも未熟だがこの話題で20分引っ張る制作にも難あり。硬派の報道番組というわりにはいつも「被害者の悲しみ」に頼るばかり。
▼旅券といえば武蔵野の住人D君三月上旬に旅券取り直しの際「受領を20日までお待ちになれば、ICチップ入りが発行されるんですが、それ以前ですと従来通りのものしかお出しできないんです…」と担当職員に「数日違いで最新式のパスポートをお出しできなくて申し訳なそうに」言われたそうな。壁のポスター見ればテロリストが偽造できなくなりますくらいのことしか書かれておらず。それで困るのは国の方で利用者側のメリットに非ず。国益に貢献できるってのが国民の幸せ、か。
▼今月の歌舞伎座での六代目歌右衛門の追善興行。昼夜随一の出来は当然京屋、とT君讃める。京屋のカタチの美しさは先だっての豊後道成寺と変わらず、更に無常感すら漂う内的風情。舞いでいえば内も外も静止画像的な武原はんに対して京屋の凄さは外は静止していても内は物凄い速さで動いているところ。もはや「地球」、とT君形容。固い地盤の秘奥には灼熱のマグマが滾り回流る。星になった京屋。播磨屋の「井伊大老」も加賀屋相手に地味に抑えた演技に身近に迫った死を感じ取る賢人の心理横溢、という。三谷や串田とは無縁の「歌舞伎役者の旧手法でしか生きない新作歌舞伎」も捨てたものではない、とT君。草?剛君の菊池寛原作「父帰る」「屋上の狂人」も予想上回る見事な舞台だったそう。演技にハマッタ時の集中力と、自己解放の自然さとの同居。「父帰る」で家長代行をしてきた長男の、父に対するルサンチマンと焼け付くような愛情は前者の美点が生き、「屋上」で、24歳になるまで金比羅さんの天狗舞を空中に幻視し続けた幸いなる狂人の明るさは後者の美点。……嗚呼、東京で芝居がもっと観たい、と痛感。
▼そのT君より神田で購った折口先生(釈迢空)の短冊と色紙のうち色紙(画像)見せていただく。昭和七年の筆。短冊は折口先生が卒業生によく贈ったという「さくらのはなちりぢりにしもわかれゆくとほきひとりときみもなりなむ」だったそうで、それにしてもあまりに独特の書き振りの折口先生、この色紙など余には正直言って全く読めぬ。