富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

農暦二月初七。驚蟄。巷には打小人だの供物の類い路上にて燃やす人々少なからず。諸事忙殺され遅晩に至り夕餉逸す。二更にはもう食さぬ習慣もあり食欲も失せ帰宅してウイスキー一杯飲みながら日本から運んだ購入済みの書籍廿冊ほど整理。『銀座百店』に太田和彦氏の「銀座の酒場を歩く」という随筆あり読む。銀座サンボア紹介。サンボアといえばハイボール。まさに氏の語る通り「さっとグラスを置き、サントリーウィスキー角瓶を一定量入れるやいなや、カウンター内側につけた栓抜きでウイルキンソン炭酸の栓をポンと抜き、瓶を真っ逆さまにしてグラスに全部入れ、すっとレモンピール」である。サンボアは氏の紹介によれば大正七年に神戸の岡西ミルクホールを源流とする大阪最古のバーで店名は北原白秋の「朱欒(ザボン)」に由来し果物のザボン葡萄牙語Zamboaのはずが看板屋が切り文字のZを裏返しにつけてしまいSamboaになった由。大阪のバーの気取らぬ雰囲気。常連の客が夕方の開店と同時に現れ持参の新聞をば広げ黒ビールをチェイサーにシェリーなどくっと飲み、さっと帰る。「酒の話などしない」美学。御意。英国のバーの内装、スタンディングのカウンターはアームレストがあり、バーテンダーは糊のきいた真っ白なコート。ご主人の新谷氏は南サンボアとヒルトンプラザの同店に十年修業し堂島サンボアを後見人として北新地にサンボアを開店。そして東都は銀座への進出。ウイスキーサントリーの角にこだわる?という質問に「全然」と答える。東都でサンボアのハイボールが飲める幸福。

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