富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十二月三十日(金)晴。昨晩はホテルの部屋を移ってからボトル四分の一ほど残っていたジャックダニエルを香港にもって帰るのも面倒と飲み干してしまい熟睡。ラウンジで朝食。外に出るのも厭う暑さ。ホテルの屋上のプールサイドで昨日の日剰綴るなどする。その狭いプールに香港人ツアー大挙して現れる悲劇。デカイ声、大袈裟なおふざけの準備体操、ばちゃばちゃと夢中になって泳ぐマネの子ども、静かにしなさいというはずもない親、写真撮影……は枚挙に暇まも無し。静寂がいっきに毀される。自分たちがどれだけ他人の迷惑になっているか一向に気づかず。あまりの騒々しさに退散しようとするガイジン夫婦あれば、そのデッキチェアーの横で「旺角で飲茶の席とりぢゃないんだからっ!」のスタンバイ。最悪。団体ツアーさえなければ、とエコエコアザラク、である。昼前に荷造り済ませ退宿。荷物預けSkytrainでAsokに行きシェラトンホテルの日本人御用達のタイ料理屋Basilで昼食。二人で1,200バーツもチェンマイから戻って来た身には割高感。インターコンチに戻り荷物受取りタクシーでバンコク空港。驚くなかれ全く渋滞なければ、で僅か20分で空港着。奇跡。キャセイパシフィックのラウンジで、11年ほどまえに暫く一緒に仕事したD君と邂逅。八年前からタイの主要空港の免税店経営する会社でバイヤーをしておりバンコク在住だそうな。当時、歴史的寒波が北米と欧州襲い極寒の紐育で一緒に仕事した時のことなど懐かしいかぎり。キャセイパシフィック712便。行きの744型機に比べると2クラス制の772型機はかなり見劣り。香港の新聞貪り読む。キャセイのワインはアジア便しか知らぬがワインの教養なき我でも銘柄覚えてしまうくらい恐らくここ2年は銘柄に変化がないのだが(いったいどれくらいの量を買い付けしたのか)今回はイタリアのValoilicella地方のMasi Costasera Amarone Classicoというかなりフルーティな赤葡萄酒が加わっており早速いただく。食事に合わせるにはちょっと難しいがチーズならいけるかも。だがバンコク〜香港のフライトではチーズのお時間もない。2時間余のフライトであっという間に香港着。小雨。エアポートエクスプレスで香港站。タクシーで帰宅。坐る暇もなく一時間余かけて徹底して旅荷の片づけ。その間、原爆から60周年の広島で開催された小沢征爾指揮でのフォーレのレクイエムの演奏(こちら)をNHKのドキュメンタリーで見る。晩遅くゴードンのジンにアマレットを入れて飲む。自分の好きな、これもカクテル?で帰宅したな、という気分。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051021-00000259-kyodo-soci
▼旅行中ひとつ書きわすれていた、と今になって思い出したが松本健一の『竹内好論』と『北一輝論』の二冊の文庫本をチェンマイの古本屋に「あげるから売れるなら売って」と置いてきた。チェンマイはぼんやりと過すガイジン旅行者多く彼らが読んでは売って、の繰り返しで古本屋が主にロイクローの通りにかなりある。日本語の書籍扱う店もあるのだろうが捜していられないのでロイクローの洋書屋にふらりと立ち寄り「あげるから」と言うとかなり驚かれての押し売り。二冊がチェンマイからビルマミャンマーの国境を経て雲南省に入ってゆくと中国革命を問うことになるのかしら。
朝日新聞の国際面にベタ記事で28日付の香港SCMP紙の報道として中国政府外交部の沈国放・次官補が外交部傘下の出版社に異動となり更迭か?という記事あり。90年代の中国外務省の若きスポークスマン。天安門事件でイメージが地に落ちた中国政府が国際的に地位復活に躍起となった時期に記者の執拗な質問にかなり堪能な英語で答えていた(彼以降、記者会見は中国語に変更となる)。銭元外相の秘蔵っ子で銭氏の秘書官も務め確か米国の中国大使館で公使だかになり確か外交部の副部長まで出世していた筈。外交部の有力幹部で外務次官は確実、外交部長の有望株であったはずだが。何が災いしたのか知る由もないが気になるところ。97年の香港返還の際に江沢民君の来港に随行し金鐘のGarden Roadが一瞬、全面通行止めになったところを江沢民君の乗ったリムジンに続きマイクロバスから香港の市街を興味深そうに眺めていた姿が印象に残る。社会が社会ならエリート外交官更迭で外交裏話なり外務省起訴休職元主任分析官佐藤優氏さながら外交論書けばかなり面白いと思うが中国では亡命でもしない限り、そうはいくまい。残念。
▼03年のSARS疫禍で中国国内の報道率先し北京中央の逆鱗に触れ責任者更迭された広州の南方都市報と姉妹紙である北京の新京報(南方と光明日報が共同出資)が地方政府の役人による贈収賄や土地問題など積極的に報道続けたところ、これも中央の反感かい編集長らトップ3名が更迭。新京報の記者らそれを不服としてストライキ、と報道あり。政府にとって不利益な報道あれば圧力かける、という中国かシンガポールの圧政ぶり。だが少なくともシンガポールは贈収賄など皆無で政府はまともに作用しているという自負あってのマスコミ統制だが中国の場合は全く逆。

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