富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2005-11-19

十一月十九日(土)昨晩はさすがに疲労困憊にてNHKニュース10を見ながら、つまり晩の九時半くらいに睡魔に冒され晩十時すぎに臥床。尿意催し熟睡の気分で目覚めれば午前一時半でぞっとするが疲れゆえ亦た寝入るも厭わず気がつけば朝の七時すぎ。雲一つなき快晴。昼前まで一時間半ほどZ嬢とかなり久々に裏山に登り小走りに歩く。昼よりご公務。早晩に公務より上がるが日暮れも早くすでに灯刻。金鐘のPacific Placeは香港レコオドにてZ嬢と待ち合せ。Z嬢がブラームスのピアノの何だかCDを捜しており、ふとベートーヴェンのチェロ曲の棚にMischa MaiskyとMartha Argerichのチェロソナタ69番と102番のCD見つけMaiskyとArgerichの演奏なら踊れるな、と思ったが、そのCDを倒すと次に現れたのがJacqueline du PreとDaniel Barenboimチェロソナタ1〜5番。EMIの04年発売のCDで詳細もわからぬが偶然にも先週のいつだったか畏友William?達智君がJacqueline du PreとDaniel Barenboimエルガーのチェロ協奏曲のことを書いていたこともあり、du PreとBarenboimのチェロソナタをここで見つけたも何かの偶然と、結局、MaiskyとArgerichのチェロソナタとこのdu PreとBarenboimnの、二枚購入。Island Shangri-la HotelのBar(もともとLobster Barなる海鮮供する店のバーであるが隣接のシガーバーを閉じたことで内装大幅に変えてバーエリアが併合されたわけでで、もはやロブスターなる生臭い名は止めるべき)でドライマティーニ。Conrad Hotelのイタリア料理 Nicholini's にて晩餐。Z嬢と二人でホテルのレストランなどかなり久しぶり。而もイタリア料理は数年ぶりのはず。葡萄酒はChianti RufinaのNipozzano Riserva '01はちょっと奮発した甲斐あって酒も料理も美味しゅうございました。帰宅早々にdu PreとBarenboimnのチェロソナタを聴く。1970年、du Pre弱冠25歳であるが彼女にとっては晩年の、彼女にとっては円熟の(だが誰も彼女の「将来」は知らない)演奏。この演奏の頃にまだ二人は彼女が年明けに病に冒されるとはまだ知らない筈なのだが、結果論だが何かを予感させたのか沢山の演奏をして名盤をいくつも世に残した。この年に何枚か録音されているライヴの一枚。Barenboimが奏でるピアノは彼がdu Preの夫であるにせよ「世話女房」的。そして二人の合奏はどこか見るに憚られる見せ物のようなところがある。それにしてもdu Preのチェロ演奏の、気骨というのか……嗚呼、余にこれ以上この演奏を語る言葉もない。このEMI盤、ライブであるが録音の質はかなり劣る。客の咳だの嚏だの荷物落としたのか雑音がかなり目立つ。だが客席の聴衆もまさかこの演奏が1970年というdu Preのそんな記念盤になるとは思いもせなんだわけで、この録音もそんな予感などないままに録音されていただけにすぎない。それがdu Preが翌年を最後に演奏から退いた結果、そうなった次第。何という不幸か。だがジャニスも一葉も早逝の女性ゆえ、その才能が惜しまれる。

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