富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十月十七日(月)朦霧。香港島の高台のかなり眺めのいい場所に終日監禁され会議。眺めいいはずがHazeの霧で視界かなり悪し。小泉三世靖国参拝、と知人 から速報入る。小泉三世の靖国神社参拝については対中関係も双方思惑もあろうし、これについては言及せぬ。小泉三世本人の「平和を祈り」も疑いもせぬ。た だ個人的には「甚だ迷惑千萬」。今週末には香港ではヴィクトリア公園にて「日本の祭」と題し日本国際観光振興機構と創立五十周年になる香港日本人倶楽部の主宰で催 事あり(こちら)と 聞く。これですら小泉靖国参拝の影響も懸念されるところ。この小泉参拝は左右の政治的云々にあらず小泉参拝で迷惑被る諸団体(外務省、中国ビジネス展開の 企業、投資家、留学生受入れる学校、旅行会社など)が連合で「甚だ迷惑千萬」を首相に抗議すべき。「首相の個人的な思い入れはわかるが」などと言っている 場合ではない。実際、迷惑。晩にニュースで画像見たが今回の参拝は昇殿せず賽銭箱にポケットから出した小銭入れ、では近所の神社じゃありまいし一国の首相 として英霊に失礼。あの貧相な姿、それに夕方の党役員会では「おれが参拝に行ったら雨があがってねぇ。ついているなぁ」と宣ったというし、やはり「この人 は変わっている」と納得するしかない。香港で日系団体に届いたファクスには小泉首相町村外相など宛てで
日本政府應以和平主義代替軍国主義以化解日益猖狂的日本法西斯(ファッショ)右翼!
といふメッセージが届いたといふ。主張は真っ当。ただ日本政府に対して「軍国主義に替えて平和主義を以て」と主張しても宛名が小泉首相で小泉本人は「平和 を祈って参拝」と言っているのだから。訪米中の李登輝君は“It is natural for a premier of a country to commemorate the souls of people who lost their lives for their country”と文芸春秋的に小泉参拝を否定せず。『文芸春秋』と『世界』が思想的に共存する旧制の若者らしさか。
WTOの総代表Pascal Lamy君来港し12月に香港で開催のWTO閣僚会議の事前宣伝でNGO代表者らと会合。WTO会議開催反対の民間団体が抗議でお出迎え。香港大学でのコ ンファレンスは香港政府のこの会議の責任者である工商及科技局長と会場の後門よりエスケープの態。代表が乗ったリムジンの屋根にまで登られ代表は車から降 りて抗議文書受け取り。それにしても99年のシアトルといい前回のメキシコといい、この会議への反対運動。なぜこの会議が、なのかわからぬ者も少なから ず。WTO自由貿易推進が官商癒着でグローバリゼーションが貧富格差拡大もたらすだけ、といふのが反対派の主張。WTO側は貿易拡大が世界を豊かにする もので世界会議にもNGO関係者ら積極的に招き南北問題是正などに真摯に取り組む、と主張。私自身よくわからぬ。が一つだけ明らかなことはPascal氏 のあの英語で世界組織の代表務まる、といふことのみ。
▼家禽インフルエンザの欧州への拡散。ベトナムなどで死者発生でも中国が根源といふが中国政府は未だに国内での疫禍をば認めず。宇宙事業どころの話ではな し。
▼『星の王子様』の「「プチ・プランス」につき出版業界の友人よりメールあり。これは旧訳(つまり岩波の『星の王子様』)の訳者・内藤濯氏の遺族から
クレームがついたためと思われる、と。「プチ・プランス」は文字どおり訳せば「小さい王子」。これを「星の王子さま」と訳したのは全く内藤氏の独創。この 邦題の素晴らしさであれだけ受入れられた、と言っても過言でない。「新訳」を名乗るなら先行訳の業績を安易に流用すな、と。これは妥当な意見。池澤夏樹訳 などは「星の王子さま」(こち ら)。村上春樹訳の「キャッチャー・イン・ザ・ライ」も野崎先生の独創である「ライ麦畑でつかまえて」という邦題を無断拝借することへの遠慮か。 名邦題あらば直訳でいくのもカッコ悪いし、いっそ原題のカタカナでいくしかないな、と。
鎌倉市長選挙。今どき珍しく憲法9条が選挙の争点の一つ。さすが鎌倉。現職の自公に民主まで推薦の翼賛候補に対して宮城県の浅野知事らが推す宮城県環境 生活部次長経験の女性が立候補。これに夏目漱石の孫で鎌倉民主商工会長の男性が共産党推薦で立候補。鎌倉市は「鎌倉・九条の会」講演会への後援を「政治性 を含む」として取り消し。同会のいのうえひさし氏らが抗議。政治問題化。仙台出身のこの女性候補漱石の孫候補も護憲派。ならばなぜ統一候補にできぬの か。この漱石の孫が無所属ならまだわかるがバリバリの党員なのだから党が一歩引いて統一候補擁立に動くべき。右派はいくらでも思想信条越えて烏合の衆とな れるのに。

富柏村サイト http://www.fookpaktsuen.com/