富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2005-10-02

十月二日(日)Hazilyなる晴れ。バリ島のテロ。テロも恐いがテロの恐怖があらゆるマスコミから延々と流れ、それを延々と聴かされることがもつと恐 い。東京は中山競馬場でのスプリンターズS参戦のSilent Witness快勝。Oriental Expressの98年の安田記念での確か11番人気での2着で驚きが始まり2000年のFairly King Prawnの堂々の安田記念勝利、で今回のSW馬はスプリントで世界ランキング1位であるから当然だろうが日本でついに一番人気で、の快勝。まるで明るい 話題なき香港競馬で久々の好事。九龍に用事あり九龍城の波止場までバスで戻りフェリーで北角。バスで西湾河。夕立。香港電影資料館で宝田明主演の映画『最長的一夜』観る。1965年。香港で一連 の宝田明作品制作の「電懋」の出品。監督と脚本は易文。共演の女優はいつもの尤敏でなく樂蒂。抗日戦争期の中国、戦地で死屍累々の日本軍のなかに一人生き 残った兵士あり。腕章と携えたカメラからこれが兵隊ではなく従軍記者・田中(宝田明)であるとわかる。腕を受傷し或る農村に辿着くがここは国民党が支配す る地域の真っ直中。日本軍営に戻ろうとする田中を泥酔漢・趙(?家驤)が見つけるが逃げようとする田中を、瓜二つの息子だと勘違い。息子は国民党兵として 戦役についており数年便りもなく生死すら不明。それが戻ってきた、と大喜び。唖然とする田中。田中は中国語で自分は息子ではない、と懸命に説明するが泥酔 の「父」は一向に理解せず自宅に連れ帰る。自宅には失明した妻(王?)。妻は田中に触れ息子が帰つてきたと信じる。そして息子の嫁・阿翠(樂蒂)。阿翠は 田中の軍服姿でもその軍靴を見て日本軍とわかり動転。家族四人での不自然な晩餐。田中は中国で生まれ育ったため中国語が出来る(宝田明が見事な中国語会話 を見せる)。父は近所に息子が帰ってきたと告げに出てゆく。阿翠は田中に夜のうちに出ていけ、と言うが田中は真っ暗で国民党兵が夜回りする夜の間だけはど うにかここに匿ってくれと請い阿翠もしぶしぶ夫の普段着を貸してやる。寝入る田中。その姿から夫との日々を思いだし歌をうたう阿翠。田中も起きて歌い出 す。ところが田中が感極まり日本語を口にする、とそこに偶然帰ってきた父。息子が別人でしかも日本兵だと知り動転して卒倒。高血圧で医者か薬を、と息子 (田中)に求める母。阿 翠はそれを理由に田中に村から出ていくよう命じる。田中は夜回りの村人に不審がられながらも日本軍の軍営(田中が所属する部隊とは別)に戻る。腕の傷の手 当てを受け高血圧だと嘘をついて薬をもらう。負傷兵の間で寝たふりをしていた田中は真っ暗ななか高血圧の薬を盗み軍営から抜け出し国民党兵に遭遇しつつも 命かながら趙家へと戻る。趙に薬を飲ませ命をとりとめる。そして長い夜が明けた朝。田中は今度こそこの村を去り自分の部隊に戻ろう、とするのだが、その 時、村人たちが阿翠の家を訪れてきた。どうもあやしい、息子は本当に帰ってきたのか、趙は酔っていてどうも話が頓珍漢、それに卒倒したという話もあれば夜 中に不審な男が歩いていた、と趙家に偵察に来たのだ。田中は隠れるが対応に出た阿翠もどう取りなしていいかとシドロモドロ。そこで意識の戻った趙。「日本 兵が隠れてる!」と言おうとしたが自分を助けてくれたのが田中で阿翠も「どうにか言わないでくれ」と懇願の表情に趙は「息子は夕べ帰ってきたが隠密裏の帰 省で夜中の暗いうちにもう部隊へと戻っていった」と告げる。村人たちは「なんだ、まったく」と趙家をあとにする。落胆する妻に趙は「おまえに別れを告げる とおまえが悲しむから黙って出ていった」と言い阿翠に早く田中を逃げさせろ、と合図。阿翠は田中の厚情にどこか好感をもつ。別れを惜しむ二人。田中は戦争 が終わったら絶対にこの家にまた戻ってくる、と誓い趙家をあとに部隊に戻ってゆく……終。現実離れの美談、かも知れぬが興味深いことはこれが1965年、 終戦から20年の時に作られている事実。先日の断鴻零雁記(55年)の日本趣味といい我々が最も不思議に思うのはなぜ当時、戦争の記憶もまざまざとしてい た時期にこのような作品が映画になつたのか?である。歴史的な侵略の事実は事実としてやはり歴史観であるとか戦争責任、反日感情といつたものが「作られて きている」こと。とくに国家が安定すると対外的な反感感情が必要になるのかも。日本でいえばポスト高度経済成長、中国でいえば文革終了後の経済成長期。と ころでこの65年の農村と山あいでの撮影。当時まさか中国本土で撮影できるはずもなく台湾なのか、香港なのか。香港でも当時なら新界の錦田あたりで豊かな 田園風景と、大帽山あたりでの撮影だつたのかも。帰宅して大河ドラマ義経」観る。衆議院選挙の日からずっと回想シーンばかり続く。食傷気味。脚本が足り ぬのだろうか。

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