富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2005-09-30

九月三十日(金)快晴。朝四時半に目覚める。確かに昨晩十一時すぎには臥床ながら早 朝まだ暗きうちに一旦目覚めると眠れぬのは困つたもの。当然、朝刊も届かぬのを幸いに昨日の読み残しの新聞雑誌読む。朝五時半から本港台で「人在江湖」見 る。八十年代前半の新界錦田であるとか金鐘での工展の風景とかドラマの中に外景の実写あり歴史的価値あり。朝六時に中央電視台で「六点早新聞」見る。起 来!起来!起来!と国歌義勇軍行進曲で始まるこの朝のニュースをいつたい何億人が見ているのだろうか。朝日の朝刊届く。小泉三世靖国裁判訴訟は東京高裁が 一審(千葉地裁)の公的行為との判断退け私的行為と判断。「職務として参拝する趣旨と受け取られることを避けるため8月15日を断念し13日に参拝するこ とにした」から、との判決理由(嗤)。原爆投下の日をさけ首相が広島長崎を訪問すれば私的行為か。バカもいい加減にしろ東京高裁。排卵日を避けHしても受 胎したら事実は事実。行為より首相は行為の結果が外交問題に発展する立場であるから本人の認識が私的だろうが公的な影響ある場合は公的と判断されてよし。 それにしてもこの記事、朝日衛星版では第3社会面。通常、天皇陛下がお田植えとか、浩宮様が登山、の当り障りない記事ばかりの場所である。香港の地元紙は 信報も蘋果日報も原告が「不当判決」と幟を挿頭しての写真入りで政治面。この温度差の違い。朝、北角の波止場近くで「無人」の新聞販売スタンドあり驚く。 いつも店番がいたはずだが。眺めているとちゃんと客は6ドル置いて新聞を取つてゆく。お釣りまでちゃんと用意されていてお釣りのある場合は勝手に崩す。田 舎の街道筋で野菜の販売ぢゃありまいに。思ふに誰か新聞スタンド二軒経営するが店番を置けば人件費もかかる。新聞の薄利ならいっそのこと店番置かず「勝手 にお取りください」で多少の損があつてもそのほうがマシといふ算段だろうか。晩に自宅でドライマティーニ一杯。真露を飲みながらチゲ鍋。NHKで釣瓶の 「家族に乾杯」といふ番組で旅先は和歌山の本宮。伊勢から本宮にかけては南方熊楠だの中上健次だのいろいろあり、で旅のゲストは宮本亜門先生。
▼その敷地面積から入場者数まで全く公表もせぬ香港鼠楽園の神秘ぶりは北朝鮮の如し。我々は香港鼠楽園の守衛のほんの一言などから入場者数が予想下回つて いることなど察するが(あの守衛ももう楽園追放されているはず)冠忠バスが昨日の株主総会で社主のW氏(知己の馬主なり)が「ディズニーランドへのシャト ルバスの乗客数が開園後も予想に達しておらぬ」と指摘。冠忠バスはランタオ島での大嶼山バス会社の親会社であり鼠楽園開幕にともない中国からの参観客目当 てに深セン境界の皇崗、珠江フェリー波止場の尖沙咀中港城からの路線を得、他に中環に開業のFour Season Hotelからと二軒の鼠楽園内のホテルからのバス運行もして更にKCRとの共同運営で上水站からの鼠楽園行きバスまで運行しているが「乗客は予想の日に 数千人に対して日に数百人」で鼠楽園開幕でランタオ島全体の観光客の伸びも期待したが期待外れ。実際には鼠楽園の客は香港の地元客が多く(当初、政府など が述べている)ディズニーの経済波及効果がどれほどのものか、まだ数ヶ月見てみないといけないが、とかなり悲観的。W氏兄弟の表情も暗澹たるものあり。鼠 楽園路線につきここまで言及することぢたい今後のバス専線の契約更改捨てる覚悟あり、であらう。
▼香港政府ICAC(廉政公署、汚職摘発専門部署)が中科環保電力と中国環保電力の経営者、通称「Ba叔」ら22人を逮捕。容疑は環保電力の経営者らが別 の会社に贈賄で環保電力との取引きあつたように見せかける粉飾行つたもの。これぢたいは「ありがち」な企業犯罪だが気になるのはICACの立場。英国植民 地時代に政府汚職ひどく設立された強権部署であるが97年以降はその権限独立ぶりがどうも一党独裁国家では気になる存在のやうで董建華襲つた「自称政治 家」Sir Donaldに中央政府から期せられた使命は3つの整頓があり、立法会民主派と公共放送「香港電台」と並びICACであるといふ。ICACにとつては正当 な業務執行であつても「また余計なことをして」である事例続くとICACの立場は脆くなる。今回の執行で気になるのはこの中科環保電力と中国環保電力(実 質的には同一会社)の背景。Ba叔は不思議な人物で電力産業のこの投資会社経営のほか中国国内の芸能プロダクション業務取り仕切る別会社も有してポップス 系歌手の中国国内での興業にもかなり力をもつ。開けっ広げで人懐こき性格も好感度あり。だがこの環保電力は「北京中科通用能源環保」の三分の一の持ち株な ど中国国内の電力事業への投資も積極的。で「中国電力」の親会社である「中電国際」の5%の株も所持。中国電力といへば中国の電力発電の最大手の国策会 社。ここに食い込むことは並大抵の話ではなく逆に環保電力は中電国際の香港での実質的なパートナー。で中電国際の副社長(実質的な経営責任者)が李小琳。 あの国務院前総理・李鵬の娘。中国政府では電力部出身の李鵬。その息子・李小鵬は機構改革前の「中国電力公司」(中国の発電送電を総括する国営企業)の 副社長で現在は華能国際電力の会長。で娘がこれ。中国の電力事業を李鵬一族が仕切る。かなり焦げ臭い話であるが投資家邱永漢系サイト(こちら) などかなりノーテンキに投資情報。
もともと中国の電力業界は「中国国家電力総公司(SPC)」という ものがありました。電力の母体企業、基幹産業として国内では判独占状態が続いていました。しかし、独占的な企業はとかく競争力に欠け、技術革新意欲や経営 改革などに対しては脆弱な体質が芽生えます。
中国の発電技術はともかく、送電・配電体制が先進国に比べてウイー クポイントになっています。送配電体制が機能的に整備されていないのは、これまでの政治体制の中での派閥が原因だとも言われています。言い換えると電力会 社は政治的な色彩が非常に強い業界と言えます。更には、政治との癒着や腐敗を生むことになります。
そこで国家発展計画委員会は、電力体制の改革を実行し、国家電力総 公司を解体して、現在の5大発電グループと2大送電体制を作りました。
……だそうである。で誕生した会社が華能国際電力や中電国際。この「改革」のほうがよつぽど政治との癒着や腐敗であると感じるのは我だけだろうか。首相の 息子が三流役者でNHK大河ドラマで役を授かる程度が親の威光である日本は元首相家族が人口13億の国家の電力事業掌握する国家よかまだ健全かも。……と いふわけで「電力会社は政治的な色彩が非常に強い業界」であるがゆへにICACのBa叔逮捕がICACのみずからの首を絞めることになりゃせぬか、と思へ てならず。(……といふ以上の話とは「関係ない」が、と敢えて言つておくが)OECD が中国での贈収賄汚職の現状を報告。異例。昨年一年の中国国内での贈収賄の金額は最大6,380億元で中国のGDPの5%に達するもの。一昨年の上半期に 中国から8,300名が贈収賄での逮捕免れるために国外逃亡、国内の失踪が6,500名。そのうち三分の二が国営企業の管理職で87.5億〜500億米ド ルを海外に持ち逃げ、といふ。
▼29日のIHT紙にハーバード大学で日本政治研究するMargarita Estevez-Abe女史の「小泉の新党」といふ論評あり(こちら)。 小泉三世の政治改革を首相への権力集中型の英国化と呼び先の総選挙での選挙結果は“promise to transform Japan and its relations with the rest of the world”だそうで90年代からの小選挙区制など一連の改革も日本が英国型の議会制民主主義の実現に向かふものだと位置づける。そんな讃めていいのか よ?と思ふが結局の結論は“Japan will develop a more pro-market face and be ready to tame on a more active role in the U.S. global security strategy”と、これをEstevez-Abe先生は問題視しているのではなく積極的に評価(凄)。米国にとつて小泉三世の改革がいかに有効か、な のである。“American business and policy makers will certainly find the new Japan easier to understand and to deal with. Whether a country like China will welcome the change is another issue”と述べるEstevez-Abe先生。中国に対する指摘は面白いが、この論調であれば、まだお若いが美貌の米国駐日大使候補確実。ご本人も当 然そのへんの強い意思あつてのこの戦略的政治論ではなかろうか。これで日本側は猪口外相か。嗚呼。
▼日本である公立美術館の学芸員をするS君からのメールによれば某県は美術館をはじめとする県立文化施設の廃止の検討に入り来年までには結論。財政破綻の 結果だが総務省の意向に沿うもの。地方公立文化施設の廃止は小泉構造改革の方針に他ならず「民間でできるものは民間で」の精神か。だがその反面、民間サッ カーチームのJリーグ加入推進には何億円もの財政支援を議会の反対を押し切つてでも断行。県武道館の無理矢理な建設も含めとにかく体育スポーツの強化は県 政の重要課題。思えば軍国教育において重要なのは冷静になることを知ることではなく熱くなることを知ることにあり従つて歴史でに非ず神話伝説であり、そし て美術文学に非ず体育、とS君。御意。

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