富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2005-09-29

九月廿九日(木)薄曇。初秋の巴里は歌劇(こちら)。競馬は凱旋門賞もこの週末。巴里の青き空を思い、ただ、た め息。眼鏡店にてコンタクトレンズ交換。昨日までの眼球の疲労感、頭痛嘘のやうに失せ老眼鏡なしでかなり近くの文字も見える慶び。早 晩にFCCにてドライマティーニ三杯。飲みすぎかしら。だが終日忙殺のあと日剰など雑感綴りながらの一飲にて甚だ心地よし。ラウンジで隣席に毎早晩この時 間に世界的ジャーナリストのCH女史あり。湾仔の中国旅行社でフェリーの切符購入。好感もてる職員の対応。Z嬢と待ち合せJaffee Rdの北京餃子皇に食す。拌青瓜と韮菜猪肉餃、羊肉餃と坦々麺を注文せば見事に坦々麺、餃子二種、最後に拌青瓜と供される(笑)。何も考えておらぬが「い かにも山東省出身」の雰囲気醸し出す主人の姿。湾仔の芸術中心にてLADENといふとビン=ラディン師彷彿させるがLittle Asia Dance Exchange Network(小 亜細亜舞踏網絡)の略称でこの舞踏発表見る。昨年十月Z嬢と余の贔屓にするDaniel楊春江君がこの小さな発表に出るため参観。で日本からの池 田素子を含む五人の、殊に数日の練習で発表に至つたといふ群舞の見事さ。で今年の発表。新嘉坡からJoavien Ng嬢、台北からSun Chou-tai、東京から笠井瑞丈、香港のAndy WongとソウルのChung Yuen-sooの五人が踊る。笠井君もいいが韓国のChung YSの端正な舞踏がさすがトリ、と納得。とても単純な照明の使い方がじつに見事。東京はちなみに10月11日に織部ホール(こちら)にて。
Vodafoneのクレジットカード支払い口座変更はオンラインではできぬとのことで自宅に変更届が送られ実家から転送してもらい本日受領。ここまで手 続き慎重で、変更届は往復葉書。そこに銀行口座や口座印鑑、クレジットカード情報など記載とあり驚くが、さすがに個人情報のため内容が見えぬように反対頁 のシールを剥がして記入部分にお貼り下さい、と「日本らしい」「高いコスト」の気遣いと思えばシールは「剥がして、また貼れます」シール。これぢゃ誰でも 開けて見れるがな。しかもクレジットカード選んだ場合に署名欄もなし。これで今度は「海外発行のクレジットカードはお取り扱いできないのですが……」とか 言われさう。「これまでも香港発行のAmexからVisaへの変更なのですが」と説明すると「当初、Amexでお受けしましたのはご登録が店頭だったもの ですから係の者が海外発行のカードとは気づかずにお受けしたもので……」と説明され「でも、それで受け付けて支払いができているのだからいいぢゃないです か?」と求めると「いやはやなんとも……」と永井豪。日本ではよくある話。
朝日新聞一面に「空自3曹覚せい剤云々」の記事あり。なぜ空自三曹覚醒剤と漢字使えぬ世になつたのか。覚醒剤はまだいいが3曹では級位とは思えぬ。一等 海尉は1等海尉と書くのだろうか、横書きだとまだ違和感ないが縦書きだとかなり変。ちなみに「陸将」など漢語だと漢数字で「6将」になり、かなり等級下が る鴨。この醜い日本語に徹するのなら小林1茶くらまで徹底するべき。鳩山1郎、タコ8郎、伊東4朗。永六輔はこの貧困なる文化に対抗して永6輔とすべきだ つた。いや、固有名詞でなくて普通名詞の場合です、と言うのなら従二位も従2位藤原定家とか。受勲で突然心配になつたのだが中曽根先生が大勲位なら小泉三 世もこれだけ長期政権で日本の構造改革に寄与すればやはり大勲位なのだらうか。南無阿弥。ただただ陛下がそれに難色示されることだけ願ふばかり。ところで 受勲について調べてみたが杉田荘治氏の受勲頁はすごい(こちら68万ヒット……誰が見 ているのだろうか)。宗教に関しても凄い(こちら)。 突然気になり杉田荘治でgoogleするとかなり濃い(こ ちら)。奥崎謙三先 生に近い凄さ鴨。
▼その朝日に中曽根康弘大勲位閣下が小泉自民党圧勝について 語るインタビュー掲載あり。郵政解散立憲主義に対する侵犯、 と大勲位。だが小泉三世も小泉三世を支持する人も何が立憲主義郵政解散がどう侵犯しているか、は理解できまひ。立憲国家の首相が立憲主義を侵犯すること は通常あり得ぬし(まずはそれが政治機能上、阻止される筈)かりにあり得たら首相更迭。80年代の中曽根君が治世の御時、改憲の主張や教科書検定で反動右 派の首相と思われたが今になつてみれば本人曰く「中道やや右」は確かに。警察庁長官新左翼から敵と狙われた後藤田先生とて大勲位は「中道やや左」といふ が実際には仏蘭西的には後藤田先生は左派で中曽根先生もこのご時世では「中道」と言ふも余は辞さぬ。このインタビュー読んだ築地のH君が先日の帰朝当時は 日本の政治には絶望、もう新聞を見る気もせぬ、と言つていたが、この大勲位の発言読み、あらためて「知性と教養」がいかに人間にとって大切かを感じた、 と。大勲位閣下とはH君は政治的心情においてはまつたく相入れずもお互いに了解可能な言葉の存在、それが教養とか知性とかいわれる文化の枠組み。中曽根先 生に「少数派と同居する、異端とも共存する――これが民主主義だ」と言われても現首相にはおそらく文章の意味すらわからぬのかも。ところで大勲位は「国民じたいが変人・小泉が登場する前に「変人社会」になった」 と指摘。だからこそ変人首相が大衆の指示を得た結果が今回の選挙。大勲位ももはや国民が変であるとのご認識。御意。大勲位はH君の指摘通り自民党にあつて は保守傍流として常に自分が異端であったという自己意識あり。おなじく現首相の売りが「変人」とか異端であることな筈でも異端として似たような政治的境遇 潜つても全く別の結論に至る。それが「歴史を学ばぬ」ことの「無知の強さ」。今朝のテレビ番組では加藤紘一君が郵政政局で「両者とも大きな誤解をしてい る。反対派は小泉さんが決して解散をしないと思っているし、小泉さんは解散しても自民党が勝てると思っている。どちらもまちがいだ」と指摘していたが「郵 政という課題がこれほどまでに国民的な支持を集めるとはまったく予測できなかった。結果的に私の方が間違っていた」と率直に自己批判したといふ。加藤君の 頭脳はやはり高級すぎて大衆の愚昧さまで読みきれず。この人の致命的な弱点。「加藤の乱」の時もし彼が数名の手勢だけでも離党して勝負に出れば恐らくは国 民的なヒーローになり民主党との連立政権の首相も可なり、とH君。御意。だがそこまで大衆の動きを読み切れず。あくまで「宏池会」率いて自民党内でヘゲモ ニー握るといふ正攻法への拘りが敗因。逆に小泉三世あれを見て「そうか。これをやれば自民党で負けても総理になれる」と知つたのぢゃないか。だとすれば 「加藤の乱」こそが歴史的なメルクマール。あれが戦後民主主義にとつて最後のチャンス。それを逸し日本社会は「歴史の終わり」へと辿着く。鳥越俊太郎君は 後藤田先生の後継者は加藤紘一だ、と述べたさうだが勝とう君、首相になるチャンスはないかもしれぬが政治家である意味は限りなく大きいの鴨。但し、問題は 自民党のなかに加藤君の忠告など拝聴する輩がもはやおらぬことであらう。
イラクで裸の拘留者の首に縄をつけ引き摺りまわしの女性米軍兵、軍法廷にて懲役三年の実刑。“I apologize to coalition forces and all the families”で「米軍とその家族への」謝罪。“(apologizing to) detainees, the families, America and all the soldiers”と拘留者にも言及するが訴える最後はそれでも“remained an American patriot”と、この一言で二年は懲役減るか。米国への愛国心ゆへ正義のための戦役に従い戦場での過ち、ってか。

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