富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2005-09-24

九月廿四日(土)台風余波にて警報3となる。朝六時過ぎに起きてしまひ窓が雨に濡れ たを幸いに窓掃除。机まわりの片づけや二ヶ月も前の新聞切り抜き読み直し。ニコンF2の露出計の使い方など復習。なにせマニュアルのカメラ使ふのは廿年ぶ り。露出補正のないカメラとなると大学生の時に中国をバックパッカーで数ヶ月旅した当時の父に借り二コマートEL以来。先日ソニーファミリークラブに注文 の銀座タニザワの 散歩カバン届く。朝日の日曜版とか十代の頃にこのソニーファミリークラブの全面広告あり紳士小物や健康器具などオヤジ臭い商品を眺めながら「これに注文す るようになつたら人生終わりだよな」と思つていたが先日、文芸春秋の十月号だかに銀座の一流品特集でトラヤ帽子店のニット帽などと並びとタニザワのこのカ バンあり。小型のカバンは競馬観戦に便利でずつとHunting Worldのカバンを愛用したが十年近く経ち外の素材もだいぶ疲れたが何より内側のウレタンのような材質の劣化著しく使い物にならず。それは当時、父母を 台湾に招き北投の温泉の日本風旅館に泊まつたりした折に航空券まで日本に送つたら父が恐縮し台北の免税店で「何か買え、買え」と勧められ買つてもらつたカ バン。もう実用には耐えぬが先考の思い出のカバンとなつてしまひ捨てられず。で競馬観戦や散歩に丁度いいカバンがない、と思つていた矢先にこの銀座タニザ ワのカバンを見つける。昔の老人なら財布と煙草入れ、老眼鏡くらいで良かつたが最近の老人には携帯電話とデジカメといふようなアイテムがいくつか増えたわ けで、このカバンは20cmの縦横に対して幅が8cmと深いが見た目がけして下品な厚さにならぬのがさすがタニザワと思わせる。天気は悪いがタニザワの散 歩カバンを肩にかけ気分は楽し。土曜の午後。北 角の港運城(Island Place)横の琴行街に行列のできる焼き菓子屋あり。昔からの味も素っ気もない焼き菓子なのだが。いつも行列で試す気にもならぬが折からの悪天候にわず か二、三人しか並んでおらず。さくさく感は確かに他よかずつとあり。午後遅くFCCに寄りステラアルトワを飲む。テレビで競馬中継あり丁度ダートの Class-3のレースに馬主 C氏のDashing Championが出ているが単勝14倍でさすがに厳しいがClass-3で悪天候のダートならDCがかなり期待できるのは確か。複勝とワイド、それにご 祝儀で連複も携帯で購入。八位くらいで終盤迎えスピード落ちたかと思えば最後の直線で入賞?と思えば三着も狙い「マジ?」と思ふ間に二着。お見事。さすが にタニザワのカバン代になるほど世間は甘くないがそれなりの配当いただく。昏時、香港大学でZ嬢と待ち合せ九月九日に講演を聴いているHedda Morrison(こちら)の写真展。大きく 印画された実に 精緻な写真を見入る。カメラはRolleiflex(こちら)と知り「なるほ どなぁ」と納得すると同時にピークや九龍の山から撮影の写真がまるで飛行機からの鳥瞰写真の如く「撮影者の位置が出張つている」のが何故か、かなり不思 議。本当に空を飛んでいた魔女ぢゃないかと思わせるくらいHedda Morrisonの写真は凄い。掲示されているHedda女史の略歴を読む。1930年代に25歳で北京に赴いたのが広告での見た北京のドイツ人経営の写 真館の撮影技師募集の広告であつたといふから驚き。北京でこのHartung's Photoshopとの雇用契約終わり……で「えっ!」と思わず声を上げてしまつたのだがHedda女史が北京で出会ひ結婚に至る男性Alastair Morrisonは当時珍しい北京生まれで、その父がGeorge Ernest Morrisonとある。これでドイツ人のMorrison女史が老後、豪州に住まい臨終迎えたも納得。George Ernest Morrisonは倫敦タイムズ紙の北京特派員で漢学者。中華民国総統府顧問務めた豪州人で何よりも岩崎久彌がMorrison氏の蔵書購入し、そのコレ クションが今日に残る東洋文庫。昨日偶然に断鴻零雁記のことで 東洋文庫の名を挙げたがまさかHedda女史が東洋文庫にまで関わつてくるとは。興味津々。東洋文庫のコレクションにはAlastairとHeddaが収 集のボルネオに関する書籍(こちら) もあることを知る。でHedda女史は1993年に亡くなるのだが80年代に香港で撮影の写真の出版を企図し香港大学歴史学科のShin教授と写真集出版 に関するやりとりあり。但し出版に至らずHedda女史は自らの余生もさう長くない、と達観し写真のフィルムと作品をYale Universityの燕京図書館に寄贈。Z嬢と大雨のなかバスでFCCに戻り軽く晩餐。ハイボール二杯。晩に葵青戯院にて鈴木忠志演出『ディオニソス』 を観る。出演は蔦森皓祐、Ellen Lauren、竹森陽一ら。静岡県舞台芸術セ ンター。劇団SCOTの芝居は水戸芸術館で「リア王」観てかなり印象強いもの。今回も期待したが正直言つて抽象的すぎて感性乏しき我には理解不 能。様式美で見せるのか科白劇なのか、がわからない。科白も観念の言葉の饒舌なやりとりで。中文と英文の字幕見ようにも三列目の中 央の席で葵青戯院の客席の構造では舞台左右の字幕も見えず。帰宅して復習してみれもやはりわからぬ。
▼台湾の放言作家・李敖君の中共訪問。先日の北京大学での言いたい放題に対して昨日の清華大学では一転して低調。かつては罵られた中国がここまで強くなつ たのも中国共産党の力と男芸者ぶり発揮。中国の憲法を自由や人権など謳われ世界で最も理想的な憲法の一つと絶賛。憲法の文面に美辞麗句綴ることは易し。問 題は現実だろうが。国民党支配の戒厳令下にあつて一党独裁批判し逮捕され入獄も長年の李敖は民主化後は台湾独立反対の急先鋒。変節か老いか実は権力に弱き 姿の暴露。学生も愛国主義講演に居眠りだの携帯操作する者多し。ところで数日前の新聞読み返すと北大での講演も信報すら「百無禁忌」と李敖の果敢なる弁舌 をば讃めていたのを知る。信報には北大での講演の全文掲載されていたが全文読めば殊更これが実に中共に気づかつた心配りの講演であつたと納得。
▼明日から二日の日程による香港立法会議員の広東省視察に香港政府は反政府色強き蘋果日報と自由亜州電台の取材同行を拒否。新聞の報道の自由に反すると 25名の立法会議員が自称政治家Sir Donaldに抗議。この視察旅行、民主派から「長毛」梁國雄君まで参加のところ不参加表明し「男をあげた」のが?培忠君。この視察が自称政治家 Sir Donald 演出の「政治騒ぎ」だと見抜く。躍らされる馬鹿馬鹿しさ。中共関係者らから「立法会議員の団結を顕示してほしい」と参加促されるが拒否。何が団結で何が顕 示か。

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