富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2005-09-20

九月廿日(火)。早朝に大雨。びつしょりと濡れる。デイパックに荷物詰めていたが、 ついTUMIのつもりで安易に傘さしていれば思いつきりデイパック内に浸水あり危うくノートブックから修理に出すレンズまで濡れたところ。やはり安物に良 品なし。東京三菱銀行に用事あり。金鐘でかつては金色の極東金融中心に東京銀行香港支店。日本経済の勢いある香港進出の象徴の如し。同ビルのレストラン四 季が東銀の社食と言われた時代。それが東銀の三菱銀行との合併で同銀は隣の海富中心ビルのなかに目立たなくなつたのだが今回のUFJ銀行との合併で中環の 旧フラマホテルの跡地に建立のAIG Towerに入居。噂には聞いていたが警備厳重なビルの中でエレベーターホールでは香港IDのチェックどろこかID番号と名前まで記録される始末。さすが に個人情報秘匿のため、と来館者の一人一人のデータは次の者に見えぬよう厚紙で隠してはいるが。たかだか銀行での出納に不便といふか異常過剰なる時代。で AIG TowerはいわゆるインテリジェントビルでG階のエントランスからエレベーターホールに上がるエスカレーターでかなり音響のいい室内楽が聞こえる。なん て音響設備だ、と思えば偶然にこのロビーを使い室内楽団が何だか撮影中。そりゃ生演奏であるから音がいいはず。お出かけのついでにニコンの顧客センターに 寄りレンズの修理依頼。「保障期間中ですが使い手のミスで壊しました」と素直に申請。素直に申請といへば素直に申請せず嘘ついて修理依頼したTUMIの付 属品のナンバーロックだが本日電話あり「直さないで新品と交換しましたからご来店を」との事。店員に見せるなり「これは直らない」と言われたのだから素直 に信じていたら……。嘘も方便。でニコンは香港で購入の行貨(正課品)のため修理代は1割引だそうで覚悟よりか安く済みそうな気配。ニコンといへば中環は Stanley街のKinefoto(世界撮影)にちょいと 用事あり寄れば(カメラ屋にちょいと用事ほど恐いものなし)ニコンのとても古い携帯用ルーペあり。埃かぶつているが売り物だそうで「在庫あるの?」と尋ね れば「有貨!」と。思わず購入。箱までレトロ。左の画像はこの日剰掲載用に私が撮影したもの。店にこんな風に置かれていたわけぢゃな い、念のため。早晩にFCCでドライマティーニ飲みながら昨日の日剰を綴る。ドライマティーニ二杯で帰宅。秋の味覚、秋刀魚とゴーヤチャンプルを食す。菊 正宗。NHKのニュースで自民党の新人研修会の様子。83名の新人議員。選挙民に正当に選ばれし素人衆多し。その中で猪口議員だけが「新人ですから一生懸 命勉強して……」と言いつつ顔に「アタシは国際政治のプロで国連軍縮担当大使だったんですから素人と一緒にされたくないわ」と自信の表情。週刊文春の記事 では猪口女史は外相込みでの自民党のオファーだそうで(「いのぐち」で変換できないが「ちょこ」と打つと変換できるのが可笑しい)。猪口といへば良識人で ある旦那の孝教授のほうが奥様の暴走から完全に距離置いているのが興味深い。週刊文春といへば小林信彦先生が青島も巨泉もなきあと野坂昭如の焼け跡派を継 いで戦争を知る最後の世代としてキョービのキチガイな社会に警笛を毎週説いている。それが文春で、だといふのだから。凄い。小泉三世の胡散臭さが許せない のだ。毎週、読む価値あり。で自民党は新人議員に対して党執行部が派閥にかわり新人研修。派閥解消と聞こえはいいが結局は「おまえら小泉親分のおかげで議 員になれたんだ、親分に逆らうような真似、するんじゃねーぞ」である。新人も小泉ダイレクトセレクトの子飼い多し。猪口議員は先ほどの「新人ですか ら……」に続き派閥解消につき「よろしいんじゃないですか。さわやかです。近代化して……」と今どき「近代化」なるフレーズをこうもネガティブに使えると は。上智大の教授で、である。学長選挙では落選したが国会議員に当選。でNHKの電話調査によると小泉内閣支持率は選挙前の調査から11ポイント上昇して 58%なり。今後小泉三世支持率が70%越えることでもあると警戒水域。これで郵政民営化成功の暁には米国からのご褒美で北朝鮮との拉致問題解決と国交正 常化など実現しようものなら一気に80%の首相就任時に返り咲きだろうか。小泉三世がまだ厚生大臣であつたころ、あの人は一人でぶらりと歌舞伎座で芝居見 物。休憩中もじーっと坐つて。で終わると正面玄関で足早に大臣専用の黒塗車に乗つて帰る姿。まさかあの人が「平成の宰相」にならうとは思いもせず。小林信 彦は今の我々の選択があとの時代になつて「あの時が……」と悔やんでも取り返しがつかぬ、と叫んでいるが誰も聞く耳ももたず。南無阿弥。小泉三世を支持す る6割の国民は、そんなこと言われても「何がそんなに危ないの?」と腑に落ちぬ話。最も危ないのは思考停止と「改革者」への全ての委譲であること。
▼鐘偉民兄が蘋果日報の連載で先週だか書いていたが偉兄の住まふ澳門の龍華 茶樓について。澳門で最も基本的な茶樓である。オヤジ以外お断り。早朝から澳門のオヤジたちが鳥籠を携え早茶。小鳥の囀りをば愛でつ茶をご くりと飲み食べたき點心あらば蒸篭が積まれた台から自分勝手に選んで食べる。勘定は帳場で自己申告。その茶樓が、である、この夏、改装のため閉業中。夏は 香港からの客も多く而もここ一、二年この龍華茶樓はかなり香港でも紹介され客が多い夏に、だ。人気の茶樓だが客あたり十数元の商売で大々的に改装するほど 儲かる筈もなし。古くささだけが取り柄の茶樓で改修する意味もない。が改装のため閉業。なぜか。澳門政府の文化局が、だ、観光名所であるがゆへに観光開発 と資金援助しての改装。阿呆か。阿呆である。澳門政府も香港政府に勝るとも劣らず。改修で「きれいになつた」龍華を誰が訪れようか。鼠楽園が如きテーマ パークであるまいし。もう終わり。鳥のインフルエンザ恐れ店内への鳥の籠持ち込み禁止。吐痰も喫煙も禁止の龍華ならハックスリーっぽくSF小説が書ける。

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