富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2005-09-09


九月九日(金)昏時中環City HallにてHedda Morrisonの1946年撮影の香港写真につき Edward Stokes氏の講演あり。開演15分前まで北角Braemar Hillにいたが見事な運転のタクシーに運良く乗車し金曜日午後六時の厳しい時間を12分にてCity Hallに到着。Hedda Morrisonは1908年生まれのドイツ人写真家にて1933年から1946年まで抗日戦争に騒然とする北京に滞在し1946年帰欧の途、香港に数ヶ 月滞在し写真撮影。こ の時期に英国の記者の報道写真除けば本格的な香港の風景や民衆の写真かなり貴重。Hedda Morrisonの写真とフィルムはハーバード大学のHarvard-Yenching(燕京)図書館(こちら)に保存されており(こ ちら)Edward Stokes氏が香港大学の協力を得てこのコレクションから1946年の香港写真をまとめ再プリントし“Hedda Morrison's Hong Kong”といふ歴史写真集を上梓。現在、香港大学博物館にて写真展も開催中。香港の植民地情緒のセピア色の写真はいくらでもあり今更驚きもせぬが Hedda Morrisonの写真はその構図の見事さ、そしてHedda Morrison以外に誰も撮影しておらぬ場所、アングルからの香港の風景と民衆の心理まで描写する視線の見事さ。開発される前の九龍東や新界など今でこ そトレイルコースの山中を戦争終わつた翌年によくぞ此処まで分け入つてといふ場所からの鳥瞰撮影。今晩の講義には「まるで倫敦」の如く英国人やドイツ人中 心に百名以上の聴講あり、Royal Asiatic Societyの主催であるから香港の古い写真など見慣れた者ばかりのはずが写真一枚スクリーンに映るごとに感嘆の声や溜息も聞こえるほど。それほど人を 圧倒させるHedda Morrisonの1946年の香港写真。これは香港大学美術館参観か是非この写真集購入を、と人には勧めたいところだがEdward Stokes氏のまとめたHP(こちら)も、これもまた精緻 なこと言葉もなし。写真集を出版するのなら本の売上げだの版権で通常はここまでしないのが普通。だがEdward Stokes氏らはHedda Morrisonの貴重な歴史写真が多くの人の間でいい意味でshareされることに期待してのこのHPでの全写真の公開。天晴れ。知識であるとか歴史の 物語のネットワークがどのように広がるべきか、の手本の如き仕事。ただただ敬服するのみ。フェリーで尖沙咀。百年ぶりにマクド食す。尖沙咀の一等地に晩飯 時でけして列ができるほど集客もなく日本に比べかなり安い価格体系でどうして利益出て東京よりずつと高い賃貸料も払えるのか……と疑問に思いつつハンバー ガーをDiet Cokeで流し込みながら考えるが答えは人件費の安さ、以外何もないはず。時給12ドルだったか13ドルだったか、で抑えるからの商法。だとすれば深セン など香港に比べ長蛇の列のマクドで価格も香港とほぼ同価格で人件費や賃貸などもつと安いのだから相当の利益出ているはず。午後八時に滑り込みでHK Culture Centreで城市当代舞踏団CCDCの舞踏「創世記」をZ嬢と一緒に観る。Helen Laiの当たり狂言、でなく当たり舞踏といふのだろうか、の一つで98年だかの公演見逃し、の再演。少し科白に依存する嫌いあるが充実した精一杯の舞踏。 CCDCは女性の踊り手の群舞、とくに早いリズムに乗せた足や手を使ったパフォーマンスが殊に上手。それに比べ男性の踊り手は独舞には秀でる好対照。 CCDCを最近続けて観ているが舞踏のレベルはそれなりに高いが演出が土臭い、それはそれでいいが、台湾の雲門集団など見て「うっとり」とさせる演出もあ つてもいいと思ふ。舞踏跳ね尖沙咀広東道のバーIに向かふ。 ずいぶん前に銅鑼湾のバーSのM氏に紹介され昨晩M氏に電話で場所まで聞き訪れてみたわけだがビルの10階に昇降機で降り立つなり盛況のやうで店内からか なり歓声聞こえZ嬢と「また今度にしよか」と帰途につく。
▼勝谷氏が明後日の選挙について書いている。今回の選挙の特徴は「都市部における20代30代と40代50代の意識の乖離だ」とした上で「今回の自民党に 吹いている「風」は前者の「恐るべき子どもたち」による。「投票にいこーぜ」ではなくて最初から「小泉いいじゃん」と投票所に行くらしい。年収100万以 下の連中が安定身分の公務員を切るという小泉さんへの共感とエセエリート臭紛々の松下政経塾上がりの民主党若手候補への反感から動いているのだ。ニートも 引きこもりもその巣から出て投票に行くのだろう。税金も年金も払っていない非納税者が有権者としてこの国の運命を決める。」と指摘。村上龍的には、この若 者の群れの中から彗星の如く英雄が現れるはずだつたのだろうが突然「ヘンなおじさん」が彼らの英雄になつてしまふ平成の世、といふことか。靖国に「なにか 日本の大切なものを感じてしまう」と参拝する若者。同じ日に偶然参拝に来た「海外から見るととても変な」都知事に「石原ーっ!」と声をかける。礼儀を重ん じる筈の右翼であれば「年上に呼び捨てとは何事だ!」と怒るはずが若者の声援あびて都知事はまんざら悪い気もせぬ。大人たちから観たら「変だよな」と映る だけの若者たちが「変人」首相に共鳴し「変なおじさん」と「変な若者」、そうそう、それに「純ちゃーん!」と黄色い声上げる専業主婦の、これもやはり所得 税は払つていない「変なおばさん」たちの結びつきで日本の将来が決る。すごすぎ。

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