富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2005-09-01

九月朔日(木)巴里のオペラ座より初秋からのオペラの季節開幕で案内のメー ル届く。初秋の巴里の空を思えば、ため息。本日、毎年恒例の学校始業の日。通学バスの渋滞混雑予想されバスの中で新聞数紙読了の心意気、iPodで Rubinsteinを堪能のつもりで、バス渋滞での大気汚染にマスクまで携え完ぺきな準備。北角波止場前のバス停で運輸署の小役人が現場視察でテレビ ニュースなどの取材でも受けているか、と思ひデジカメもすぐに撮影できるように準備して……が何もなく道路の渋滞混雑も予想の範囲。聞けば今日の混乱予想 し通学時間遅らせた学校や明日は金曜日で始業を来週月曜日とした学校もありとか。老ひの所為か冷房の寒さ堪えるが半袖の人ばかりのなかカーディガンなど纏 ふも恥ずかしく、室内の冷房気温上げれば他者から「暑い」と苦情必至。日 本では室内気温は摂氏28度奨励でかなり暑いと感じたが香港ではこの部屋も先日購入の温度計では25度だが場所によりかなり寒い。香港で日本人が「冷房が 寒い、寒い」と苦言するが、その多くが職場で中間管理職。つまりオフィスの窓や壁を背にして(窓際族かも知れぬが)坐り、実はこの場所といふのが冷房の風 向きはオフィスであると意外と直接、人に当たらぬようにと風向きが上向きになつているケース多く、すると天井近くを走る冷気が壁や窓に当たり下向きに折れ るわけで、この場合、冷気の直撃受けるのが窓や壁を背にする人、となる。で防寒で何が出来るかといへば「せいぜい風向きを変えること」くらいで送風口を、 まず風向きを下にして風が窓や壁に当たらぬようにすること、そして自分の方向に向く風を一部遮断したり「とくに暑がる人」のほうに向けること。これだけで 同じ室温でも自分の居場所の体感気温はかなり下がる。早晩に中環に赴き諸用済ませMandarin Oriental Landmark通つたので試し に噂のMO Barで一飲と思つたがご盛況で満席。FCCに一憩しハイボール二杯。新聞読み。昨晩和仁廉夫氏来港で聯絡い ただき晩に中環の蓮香樓。某通信社の特派員S氏、フリーライ ターのK氏らと食し歓談。帰宅のつもりでMTRに乗つたがふと銅鑼湾で降車しバー Sにより駆けつけでハイボール(氷なしがお好き)一杯と「あとを惹かぬように」スプリングバンクを水割り(水1に対してモルト9を注ぐテイ スティングの基本)で一杯。ご亭主と必要なだけ手短に雑談して三、四十分で暇する。
勝谷誠彦氏が衆院選挙公示日の各党党首らの選挙演説を見るにつけ有権者が携帯を掲げ写真撮ることに熱中すること「かつてドイツでは人々は右手を掲げて 踊った。今この国でも愚民は右手を挙げて殺到する。しかしその手にはこの国が生み出した馬鹿生産のためのオモチャが握られている。この光景の映画的悲喜劇 の面白さを何故誰も指摘しないのだろう」と苦言。確かに不思議な光景。先のローマ法王の葬儀の際もバチカン訪れた信者らが多くが携帯を掲げて葬儀の儀式を ば撮影しているのを見て法皇の葬儀に参加してもつと厳粛な気持ちにならぬものなのだろうか?と疑問に思えた。そもそも携帯にデジカメ付帯したのは、携帯で 電話の際にその場の光景など便宜的に撮影して相手に見せるだめ、であつた筈。今ではすつかり画質も向上しているが個人的にはあの携帯で撮影する姿勢が恥ず かしく(モニタ画面眺める表情がとても間抜け)携帯はデジカメ機能のないものを用いるがデジカメ機能のない携帯捜すほうが困難で香港のCSLには Nokiaの比較的古い機種が残るが、それでも残る理由はやはりユーザーのなかに「デジカメは不要」といふ者少なからず、のためらしい。やはりそうであろ う、良識ある人はいるのだ、と思つたが「ですが年配の方ですね」と職員。デジカメもモニタ画面眺める表情が間抜けに思えるのは携帯でのデジカメ使用時も同 じであるから(一眼レフのデジカメであれば別だが)普段はContaxのU4Rを持ち歩く。余は「低いアングルの写真が好き」と思われているが、そうでは なくデジカメで撮影している、と思われるのがイヤなのでU4Rならできるヘソくらいの位置で撮影するため必然的に「低いアングル」になる。
IHT紙のビジネス面(Bloomberg)の署名記事で小泉三世を「改革、改革といふが小泉改革ゴルバチョフ型の撹乱ばかりで国営企業民営化もサッ チャー型の建設がない」と酷評。郵政民営化も郵便局の運営組織改革は別として、国債絡みで郵便貯金の資金の市場流出についても懐疑的。
▼昨晩のニュースで見たイラク首都バグダッドでのスラム教シーア派教徒数百人の死亡。イラクでのイスラム教内部での宗派対立が原因といふがチトーのユーゴ スラビアが自由になつたらのあの内戦を思い出すばかりかフセインといふ独裁者の排除はイラクのためのはずが結果的に一人の統治者が消えたらのこの内乱ぶ り。宗派対立も結局は米国によるイラク征伐と占領に諸悪の根源あり。その米国の野蛮行為を支持した英国や日本の首相の責任は大きいわけで本来、今回の衆院 選挙でもその点が問われるべきであるのだが。昨晩のNHKのニュースではバグダッドでこの惨禍に遭遇した市民が「橋のむこうのゲートを米軍兵が閉めたこと が被害を大きくした」と指摘していたが今日の朝刊各紙ではこの点は見当たらず。
▼香港養和医院の李樹培院長逝去。享年102歳。生涯現役で特約門診部にて診察続けの大往生。
▼太古坊の同楽軒は5月、Champion Mileに来港の競馬の入江さんの所望で斎藤さんと食す。美味秀逸。で昨日の信報に唯霊氏がこの同楽軒のことを綴る。日曜の晩に予約なしでふらりと訪れた 唯霊氏。案内嬢に「お名前は?」と笑顔で尋ねられたのもご愛嬌だが(香港で唯霊氏の顔を知らぬとは……北娘か?)上客相手のこの店で日曜晩に待たされたも 驚きの唯霊氏に支配人から賃貸の契約更改終わつた話聞かされ、今どき美談、と唯霊氏驚いたのは家主であるSwire集団は好景気にもかかわらず家賃値上げせず、と。家賃高騰でいくつもの 老舗の飲食店が閉業するなかでの、この善意。同楽軒など景気の浪もろに被るバブリーな客多き料理屋で不景気のなか営業は身を削る思いで支配人曰く「最低消 費」など限度額撤廃し鮑魚、魚翅、燕窩に執着せずさまざまな料理のバラエティ広げ今日まで生き延びてきた、と。唯霊氏といへば先週だかに月餅のこと書い て、この同楽軒の月餅が香港では古法に則り美味と讃める。

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