富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

農暦七月十九日。処暑朝日新聞に月イチで連載の梅原猛「反時代的密語」が 凄い。「アニミズムと生物学」といふ題で明らかにホリエモンらであらう「今の二本で活躍している短期日で何百億という金を儲けたような人たちは、酪酸の匂 いにのみ敏感なダニのようにカネの匂いにのみ敏感で、獲物とみるや飛びかかるような人間」で「そういう人はこのような世界のみが現実であると思っているよ うであるが、それはカネ以外のものが捨象された大変貧しい世界」と手厳しく断言。中曽根大勲位の治世までは理解できた梅原先生も小泉の日本精神だのマネー ゲームの下品さに危ないもの感じ入る一人。早晩にジムで筋力鍛練一時間。筋力などつけるよか減量のほうが先決なのだが。とわかつていて帰途ふと Delany'sに寄りギネス麦酒一杯。湾仔のこのアイルランドパブで最近チーフでバーテンダー勤める青年の慎重かつ機敏なギネスの注ぎぶりは見事。馴染 みのアウトドア屋に旅行中に紛失(だと思ふ)携帯用のMagliteの懐中電灯購入に寄れば我の傘の忘れ物あり。呆れ顔で「保管料ちょうだい」と言われた のは五月に忘れた傘ゆへ。それ以来買い物にも寄つておらず。帰宅してカレーライス。バンコクで見過ごした「義経」ビデオで見る。欧陽應齋君の伝統的なる美 食探訪番組『回味無窮』の第2回も見る。劉健威氏がゲスト。欧陽君が宝塚の立役ばりのメイクなのに劉氏が本物よか老けており好対照で可笑しい。七月くらい からの切り取つたばかりで整理もしておらぬスクラップなどかなり整理。山田吉彦『モロッコ』少し読む。岩波新書で昭和27年はかういふ淫美な内容もあり か。
▼築地のH君が自民圧勝の勢い、冗談抜きで四百議席くらい取るんじゃないか、と。自民及び反小泉で枠外だが所詮は自民迄含めれば350議席に追い風の公明 党が50で400といふのはまんざら嘘でない鴨。もう「行くところまで行く」で。旅行中のInt'l Herald Tribuneや信報など読めば自民党の一人勝ち、の予測。何かが変わる、なんて期待もなし。二大政党による政権交替が欧米的理想型なら民主主義での国民 の選択による一党独裁の恒的な保守党政治。他に選択ないのだから安定していれば佳し、と。アジアでは日本の自民党、台湾の国民党(馬英九が次期総統確実 で)、中国共産党、で最終的な理想型としてシンガポール人民行動党による実質的な一党専制政経的に安定しているならいいでしょう。フランスならル・ペ ンの登場に伝統的左翼票が大統領選挙の決選投票で「鼻をつまんで」シラクに入れたが日本で非自民党票が「肥溜に入ったつもりで」民主党にいれるかどうか。 極右から松下政経塾、旧社会党左派までの「幅の広さ」の胡散臭さで亀井党や田中新党に票が流れ得票数では政党別でかなり割れるが最終的には議席数で現行の 選挙制度では自民党と組織票の公明党で夢の四百議席。フランシス福山的な「歴史の終焉」が今ここに。築地のH君に言わせれば小役人や松下政経塾生など本来 は自民党の若頭予備軍が小選挙区制で現職有利となり新人が何ら深慮なく民主党から出馬。ところが今回は小泉三世の「古い自民党」の一掃で候補者の劇的な入 れ替え。中曽根大勲位やヘラルド宮澤らに続き「平成の妖怪」化するはずの綿貫先生や亀井先生追い出したところで民主党に暫く預ける形であつた小役人&政経 塾が自民党に戻れば小泉三世支持の有権者にバカウケ。政党政治といふもの本来は党是、党の理想政治があり、その実現のため議員となるもの。それが今では松 下政経塾など最たるもので議員になること先行し「で、具体的にどの党が最も確実か」での政党選び。実際に自民でも民主でもあまり変わらぬのだから。今どき 党利党略のため議員になるなど公明党共産党くらい。……なんて「わかりやすい」政治。「若い政治家の登用」は電通あたりの仕掛けか(笑)。仕掛けといへ ばH君が教えてくれた森田実氏の指摘「郵便貯金350兆円を虎視眈々と狙ふウォール街が小泉自民党圧勝に向け巨額資金投入しメディア操作」(こちら)も、さもあ りなむ、の話。メディアといへば昨日の産経新聞産経抄」が見事(こちら)。 朝日の天声人語子に読ませたい格調高さ。森田実氏は民放キー局に対して「NHK並みの中立性」求め、罵詈雑言しかないはずの産経抄がこの筆致。世の中全く 混迷の度深まるばかり。
▼アジアの理想型としてのシンガポールについて。昨日この都市国家の社会規制緩和について言及したが今日のIHT紙に21日だかの星港の建国記念日関連の 記事ありLee Hsien Loong首相の演説を読む。賭博解禁について李光耀の息子は「砂漠の中に都市を建造して年間四千万人が訪れる」ラスベガスに「我々はそれになろうとはし ないが多いに学ぶところはある」と。中国と印度といふ二大国の間に位置し中間貿易と金融や情報産業、観光だけで生き残るにはどうすればいいのか。テロに脅 える世界の中で治安の安定を維持し福祉切り捨てもせず失業保険や強制積立退職金制度の完備、低所得者への公共住宅の供給や教育補助など星港が生き残るため に何をしていくのか、と強調。確かに。一党独裁でも結果何が残るか、で安定した豊かな未来があればいいでしょう。少なくとも小泉改革で具体的な政策も明示 されず年収300万円社会の到来が約束されるような社会よか「星港のほうがまだマシ」かも知れぬ。
▼そういうアジア政治型がうまくいくならいいのだろうが最大の懸念は中国。中国政府が公式に中国の貧富格差が「黄色」の警戒レベルに達していると報告。 チャイナデイリーの22日の報道で政府の労働&社会保障省の渓谷によれば貧富格差の両極分化がこのまま続けばこの5年で「赤色」警戒で2010年には社会 動乱など不安定が必至。貧富格差や社会不平等、贈賄などの腐敗に土地の強制接収などで昨年一年で七万件の社会的抗議活動があつた、といふ。貧富格差は03 年以降に急激となり都市部で所得増長が前年比で8〜9%なのに対して農村部では半分の4〜5%に留まり農村内でも収入格差が増大。国内の人口の1割の富裕 層が国家資産額の45%を独占し、逆に最貧困層の私産額は国家総資産額のわずか1.4%。共産主義社会でのこの貧富の格差の増大。共産党政府にしてみれば 一党専制での経済成長と社会的安定の維持で「これだけに納まっている」と判断だろうが国民の不満の増大は中国国内の問題では納まらず。
▼築地のH君から「名取の小学校の男性教諭 2ヵ月休んで英国でダンス公演」といふニュース届く。「子供のころからバレエに精進し夢はロイヤルバレエのダ ンサーだつた若者が夢破れ、故郷の宮城県名取市で教職に就くも夢捨てきれず英国でバレエ公演を実現の、学校では子供にも有名な「男バレエ先生」。だが休職 について教委が懲戒処分」とか(笑)想像に易いが、現実は「障害者と健常者が一緒に踊る舞台芸術の世界大会に参加」で四月上旬から六月下旬まで平日は有給 休暇を充て足りぬ13日間は特別休暇申請したが県教委は「個人的関心に基づく活動」として申請認めず、教員も校長の期間短縮の求めにも従わず。特別休暇が 「職務に関連する海外視察などにも適用され今回も当てはまる」と教員の弁護側は主張。この先生が組合員で組合員に対する嫌がらせ、鴨。むしろ学校の枠から 出て様々な教育活動の経験を積めることが今後の教育に活かせる、といふ視点が「外国では」普通なのだろうが。

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