富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

五月三十一日(火)曇。早晩にジムで一時間筋力運動。帰宅。ドライマティーニ一杯。鰻丼食す。日刊ベリタに下述の程記者逮捕の原稿書き送稿。珍しく一面トップ(こちら)。新聞数紙読む。柳治男『<学級>の歴史学』少し読む。
朝日新聞シンガポールのストレーツタイムスの記者が中国で逮捕されたといふベタ記事あり。なぜシンガポール御用新聞の記者が?と思ったが、その逮捕された記者は香港の程翔氏。程記者はもともと香港の中国共産党御用新聞文匯報の記者。89年の天安門事件では反中国政府の姿勢で「痛心疾首」の題で社論掲載。香港文匯報の社長李子誦氏更迭され程翔氏も退社し雑誌『当代』創刊。95年の廃刊までは知っていたが程氏その後シンガポールのこの新聞に加入し中国関係の報道続ける。で今回は趙紫陽の生前の談話まとめた手記原稿を入手し、それを持ち出そうとして公安当局に拘束され已に四十日。
朝日新聞世論調査(こちら)で内閣支持率は45%。首相の靖国参拝中止をが49%ながら中国の対日姿勢について理解できないが51%だと思うと小泉三世といふ人は中国のあの対日暴策のおかげで支持率は少なくても8%くらい得しているだろうか。昨日、浜渦副知事問題の責任とり都知事こそ辞任を!などと口走ったが築地のH君より昨晩の日刊ゲンダイ石原慎太郎都知事辞任で国政復帰か、安倍晋三への「若返り」抵む中二層世代による新党構想。安倍と石原……ブッシュ&ケリーで「不毛の選択」など言っている場合ぢゅない、とH君。御意。想像絶する世界。フランス大統領選挙でルペン阻止のため左派が「鼻をつまんでもシラクに入れろ!」と呼びかけた逸話あるが、この安倍か石原かの場合鼻をつまんでもどちらに投票すればいいか結論もでず。議会制民主主義の終焉、いやフランシス=フクヤマ的な歴史の終焉か。本来なら民主党がここで右派の票の分裂で漁夫の利を得るはずなのだろうが現在の民主党にはそれも期待できぬし、自民党の右派も恐れる極右からかつての社会党左派までいるこの理念なき政党の怖さ。今回の対中関係の悪化で小泉三世は資本(財界)の利益代弁せぬことでそろそろ排除されるて当然とH君。その後継が安倍では資本の意図貫徹されぬわけで財界指導部の見識と実力が問われる最終局面。ぎりぎりセーフが前官房長官で現在修行中の福田二世か。もしポスト小泉で安倍首班などとなれば財界の負け、ワイマール共和国をばヒトラーに売ったドイツ資本家の過ちの再現、とH君。御意。で、あまり自民党の文句ばかり言っていてもしょうがないので築地H君と組閣(笑)。今回の組閣はポスト小泉での対中関係の是正に主眼が置かれ、当然、真の目的は安倍外しで石原無視の財界が納得する理性的内閣。郵政民営化には非積極的。小沢一郎君は民主党離れ無所属の立場で参画。(Fは我、HはH君の推薦)
内閣総理大臣 - 福田康夫 H
無任所大臣(副総理) - 小沢一郎(無所属) FH
首相特命補佐官(中国担当) - 加藤紘一 FH
総務大臣 - 魚住裕一郎(公明党) F
法務大臣 - 武見敬三 F
外務大臣 - 古賀誠 FH
財務大臣 - 亀井静香 FH
文部科学大臣 - 久間章生 H
厚生労働大臣 - 河野太郎 F
農林水産大臣 - 園田博之 F
経済産業大臣 - 額賀福志郎 H
国土交通大臣 - 平沼赳夫(古賀君絡み) H
環境大臣 - 浜四津敏子公明党) F
内閣官房長官 - 町村信孝 H
国家公安委員会委員長 - 中曽根弘文 F
防衛庁長官 - 高村正彦 H
内閣府特命担当大臣
 沖縄及び北方対策担当 - 麻生太郎(古賀君絡み) F
 金融担当 - 塩崎恭久 H
自民党三役は、といってもかつて政策決定で重要であった総務会の採決も小泉三世の確かに自民党をぶっ壊す、で総務会通す手続きも崩壊してはいるが(笑)旧大平派から「かつてのホープ谷垣禎一君に総務会長として党務で汗をかいてもらい、旧福田派から政調会長衛藤晟一君、で旧田中派から幹事長は笹川堯君。で実務的には自民党の「いい線」なのだが、この結果、何が起きてしまうか? 史上初の首相経験者の衆議院議長就任で森喜朗衆議院議長の誕生。森派(旧福田派)のこの福田内閣でプリンス安倍晋三外すには鮫親分を煽てねばならずの結果がこれ(笑)。
▼香港での禁煙条例での飲食店など全面禁煙への動き。愛煙家の蔡瀾氏ならともかく数ヶ月禁煙し自ら経営の店も客の要望で禁煙とする劉健威氏ですら、このファッショ的政策には反対。理由として経済好転ながら飲食業小売業は依然として経営困難。今年1季目の破産申請2,930軒のうち55%が飲食業経営者。景気回復で賃貸料上昇のうえ全面禁煙で商機失う、と。果してそうだろうか疑問。酒場は確かに。成人人口の二割台の喫煙率で飲食店の場合は圧倒的に煙草吸わぬ客多し。喫煙者でも周囲気にして吸わぬ者も多し。強いていえばワイルドな客多き茶餐庁は打撃あろうが。個人的にはパイプや葉巻、紙巻きでもジタンやゴロワーズ仏蘭西産黒煙草、ゲルベゾルテやダヴィノフ、日本ならピースやチェリーなど芳香豊かな煙草なら煙くても許容できるが百害あって一利なきマイルドセブンライト系の紙臭さは閉口。そういう意味で禁煙措置でもいいか、と思ふ。
▼昨30日のヘラルドトリビューン紙に終戦直後に日本で婦人の対男性平等社会建設と法整備に尽力したBeate Sirota Gordon女史の日本再訪の記事あり。憲法はじめ戦後日本のconstitutionalなものが米国の押し売りと言い捨てるは易しいがGordon女史の回顧読んでも昨日のジョン=ダワー『敗北を抱きしめて』の章で見ても当時の日本が建設に挑んだ戦後社会といふものは単に米国の押し売りと言うには当時の人々の努力が蔑ろ。労働基準法制定に関する戦前の特高警察警部の尽力など特筆すべきもの。
▼同じ30日のヘラトリ紙に市長訪問で紹介されるは和蘭陀はアムステルダムのJob Cohen市長。他の欧州の都市と同じくイスラム系市民少なくないが特に911以降のイスラム敵視の中でリベラルなアムステルダムへのイスラム移住者多し。アムステルダムの人口75万人(この「少なさ」に驚くが)のうち半数以上が非欧州人で主はイスラム人。だが市長曰く“Islam is here to stay, in this country, in this city. We haev to deal with Islam as a fact, not wether we like it. So the real question is how to get on with each other”と積極的に言い切る。大麻など軽い麻薬は解禁、同性愛結婚合憲と不真面目な都市は人口75万人に対して自転車80万台で郊外から市内に通う市民は市街の周辺のターミナルで自動車降りて路面電車に乗り換え。市街での10階以上の建物建設規制され運河に囲まれた中世の都市の容貌の維持。何が大人で大人はどういう思考ができるべきなのかの見本。実際の居住人口の一割以上を占め経済的にもその存在無視しできぬマイノリティー市民抱えながら「支那人」「第三国人の暴力」などと差別し拒否することしか知らぬお子ちゃま都知事が大気汚染対策以外でもかなり見習うべき都市の姿。
▼EU憲法否決の仏蘭西シラク総統が首相更迭し後任にシラク氏の寵児 de Villepin内相を抜擢。日本語表記はドビルパンで、まるで子どもアニメの怪物の名の如し。de Gaulle首相と同じでせめてド=ビルパンのほうがまだマシ。ちなみにヘラルドトリビューン紙などVillepinで「de」は付けておらず。ビン=ラディンもそうだが、Dominique de Villepinなる名で姓名でいえば「名」はDominiqueで「de」は姓に属するから、なのだろうが、銭形平次が同僚の親分に「よぉ、銭形のぉー」と呼ばれるように、正確には「VillepinのDominique」でヴィルパン首相でいいと思うのだが。

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