富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

五月廿八日(土)かなり久々に八時間睡眠。午前十時よりヴィクトリア公園にてランニングクラブの定期ジョグあり参加。だが着替えだの銅鑼灣のジムに置いてゆくつもりがジムで荷物置いたままでの外出認められず。荷物置き場にされる懸念もわかるがこちらは明らかにジョギングに出る恰好で小一時間での戻り。それも認めず。呆れてもう一軒のほうのジム。こちらは規則弛いがおかげでジョグに廿分以上遅れ。主宰のN君と常連のT君。土曜の午前中けっこうマジなジョガー多し。ジムに戻りシャワー浴び向かいの星巴で珈琲飲み(星巴のエスプレッソ飲むと頭痛あり普通の珈琲ばかり)昨日の日剰綴り上網しメールチェック。ジムに戻り筋力鍛錬一時間。タイムススクエアかなり久々に訪れる。Page Oneの新装なつた本屋。シンガポール資本のこの本屋、十数年前に社主のT氏香港訪れた折にお会いしたが此処まで商売大きくなるとは思いもせず。いわゆるクールなインテリアだのの本多し。見ててきれいだが買うかといふと絶対に必要な書籍に非ず。それほど売上げがあるかといふとHMWでCD何枚もまとめ買いするほどの客もおらず、この商売の伸びが不思議。想像に易いはデザイン関係の本などCDに比べ大量仕入れでかなり卸値低いのは確か。村上春樹の英訳小説がずらりと並びいくつか立ち読み。日本語よか英語のほうがずっとしっくり。あの「わざとらしさ」が英語だとあまり気にならず。英訳が巧みだからか。空腹で近くの何洪記に向かうと午後二時近くでも行列。久しぶりに鵝頸橋街市の清真恵記に参ればマジに何年ぶりだが熱食中心が冷房完備になつており驚く。恵記はとんでもない混雑で満席も満席。持ち帰りなら数分待ち。この店の名物は羊肉カレーだが昨晩も同じだつたのでもう一つ馳名が焼鵝。焼鵝飯注文したものの店の余りの混雑に勝手にカネ払い釣りをもらひ自分でタレかけて袋に入れる。それからふと気づいたのが持ち帰りなのだから何処か別の場所で食べねばならぬこと。それを全く考えておらず。そのへんの小さな公園も空気悪し。ハッピーバレーの競馬場の内場も多少遠い。結局ふらふらと灣仔方面まで歩き修頓サッカー場の暇な老人らに混じり観客席で焼鵝飯頬張る。実に美味。昼のテイクアウトでこれだけ美味な焼鵝が食せるのだから香港の醍醐味。実に幸せな気分。角の涼茶第一家で酸梅茶飲む。Protrekで山用の傘など購入。再びジム。拳闘系の鍛錬一時間。夕方小雨。FCCで新聞読みながらBloody Maryと珍しくドライシェリー一杯。ドライシェリーはいつも思い出すのは小学生の時だったか西洋料理屋での食事のハウツー本だか読んでいて(小学生のガキがそれ読むのが可笑しいが)巴里だの紐育だので立派な西洋料理屋で、坐るなり給仕に「食前酒は?」と言われた時ほど心の準備できておらず一瞬惘然とするもので食前酒に間違ってもビールは失格だしブランディなどと言わぬように、と。カクテルも食前に合うのは少なく口にへんな味を残さぬ酒がベストで、無難なのはドライシェリーと紹介あり。食前酒で困ったらドライシェリー、と覚えた次第。実際にシェリーを飲んだのは十年後だか。閑話休題。早晩に帰宅。雑事片付けつつドライマティーニ。昨日マザーインディアで食べ残しテイクアウトの印度料理。やはり一晩置くとさらに美味。カレー味ばかりかチーズのカレーであるとかホウレン草カレーなど美味い。NHK特集で三宅島の住民の島での生活再開のドキュメント見る。清水義範講談社文庫『国語入試問題必勝法』の残りいくつかの短編読む。あとがきで丸谷才一が著者のパロディ性賞めるがパロディにしては皮肉といふものなく単なる発想上手。村上春樹の短編集『象の消滅』もこの本題となつた短編までようやく読了。『象の消滅』読めば確かに上手い。こんなこと小説にしよう、と普通は思えない内容。だがそのネタは小説にならないがそのネタを心に抱く主人公ってのは小説になりえるのだ、と理解。司馬遼太郎の『街道をゆく』の沖縄・先島への道も読む。眠気と残り百頁ではさすがにこれは読み終わるまひ。
▼安倍二世(岸三世)が小泉三世の次の首相も靖国神社参拝すべきで責務であると発言(朝日)。世論では愚直にも安倍が「次期首相にしたいナンバー1」であるが実質的にすでに首相レースから落ちたからか発言も過激に。ふと今週の元幹事長古賀君の動きが気になるとNHKのBSニュースで偶然なのかどうか次に古賀君現れ中国との問題など考えると首相の靖国神社参拝は慎重であるべきと発言。古賀君が日本遺族会の会長であることを記者に指摘されると小泉首相自身が判断すべきこと、とかなり無理もあるが自民党のなかで何かしらポスト小泉で動き垣間見られる態。安倍はいずれにせよ石原と同じ「支那の呪縛」といふ轍踏んだか。中国が、中国が、と悪口言わぬと自らの自己統一性すら保てぬ脆弱さ。さふいふ意味では何も考えておらぬから中国を悪者にする必要もなき軽口小泉のほうが強いのかも。
深センの政治協商会議が年次総会で専門部会が深セン市の人口問題検討。公式な永住人口は165万人で400万人の登記された労働人口あり。この400万人は出稼ぎで労働許可されているが永住権もたず労働契約解雇されれば深セン出て故郷に戻る。この人口の二重構造はSF小説の市民と労働奴隷の如し。だが問題は更に登記されておらぬ浮動人口あり深センの実際の人口は1200万人に上るといふ。香港の二倍近い、東京都より巨大な、この人口が香港の「裏」にずしりと構える重み。中国の共産党一党独裁だの非民主的社会を悪く言ふのは易いがこの人口動態をば抑えていてこの状況。抑えのタガが外れた時の怖さ。
▼北京当局がようやく北京郊外での口蹄疫発生と四千頭の牛処分を認める。当局がこの疫病を最重要に報道しなかった理由として口蹄疫が人間の健康に直接被害あるとは認識されておらぬため、と(嗤)。物は言ひ様。ちなみに世界の家畜用の豚の五割、牛の9%と羊の二割が中国にあり。
▼一週間近く前のNHKのニュースでだが大阪日本橋で「無職の」男二人がケーブルテレビを契約なしの見放題出来る万能チューナー販売したとして検挙される、と報道あり。売上げは実に八千台で売上げ2億3千万円。これが無職か。違ふ。
▼これも水曜日の新聞の切り抜きだが信報の林行止専欄に日本の相撲の勝ち負けに関する某経済学者の分析紹介あり。1989年から2000年まで大相撲の281名の力士による32,400回の勝負での統計だが千秋楽で七勝七敗と八勝六敗の力士の対戦で七勝七敗の力士の千秋楽での一番の勝率は統計上は48.7%なのだが(なぜ五割下回るかといへば引き分けに非ず八勝六敗の力士のほうがこの場所での強さ加味されるゆへ……見事な分析)実際には七勝七敗の力士が八勝六敗の力士破る勝率(つまり勝ち越し)は実に79.6%だそうな。で七勝七敗と九勝五敗の力士では七勝七敗の力士の勝率は47.2%まで下がるが実際には73.4%となる。これが相手が八勝七敗の力士での勝率を下回るのは正論では九勝五敗の力士の力が勝るからだが(ここまでは書かれていないが)九勝五敗なら八勝六敗より七勝七敗の相手に勝ちを譲ってもよさそうだが何故それをせぬかといへば九勝と十勝の一勝の差が翌場所の番付にかなり影響があるからで、また勝ち星の目立つ場所でない場合は技能賞、敢闘賞の選考にも残る成績となる。勝ちを譲る、事実は今さら驚かぬがここまで数字で示されると納得。
▼恩師?謝剣教授がまた信報で台湾独立反対の論陣で息巻く。清朝の頃の文献紐解き日清戦争で清が日本に負けて台湾をば日本に割譲した事実踏まえ、それゆへ台湾は歴史的に見て中国領土である、と。御意。だが「だから台湾は中国と不可分であり独立できず」となる。中国領土であっても台湾に独立の選択があること、はそれの実現の可否は別として、理論上は先生が文句つけることに非ず。マレーのシンガポールも独立の意思があり、それが国際的に承認されれば独立できるといふ事実がこの先生には理解できておらず。大中華思想の怖さ。

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