富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

四月廿五日(月)小雨。朝日の国際衛星版一面に時事通信の写真用いて「香港で反日デモ」。キャプションには「合法的デモで混乱はなかった」と。この「反日」といふより「日本政府の歴史改竄反対」デモがあったのは事実。だが問題は昨日は行政長官任期に関する全人代常委での法解釈反対デモが実施され千五百名が参加。それに対して「反日」デモは八十名参加だったが朝日にはその参加者数もなし。法解釈反対デモが日本の新聞の国際面で報道しないのもそれはそれでいいが。ちなみに日本での朝刊にはこの「香港で反日デモ」の写真ニュースは見あたらず。国際衛星版のアジア版のみ? 何を誰にどう伝えたいのかわからぬ。JR宝塚線での快速列車の脱線事故。一分半の遅れが事故の原因の一つ。香港の地下鉄のダイヤなら一分半の遅れは深刻だが異常走行の場合自動停止装置も働くそうな。かつて国鉄の機関士といえば鉄道マンの気概、動労の先輩に運転技術叩き込まれて国労の車掌と列車走らせるプロ意識(よくわからぬが)。それももういまのジェイアールにはないだろう。列車のダイヤというのは一時間に一本の列車が走るローカル線も含め日本全土の鉄道が一分の狂いもなく走ることに国家主義的な意義がある。それにしてもテレビの晩のニュースがトップニュースがこの鉄道惨事で続くニュースがMTRの香港ネズミランド線の列車お披露目のニュースとは皮肉。本日はかなり貯っていた諸事とにかく済ませねばと今日は気持ち入れ替えて面倒な業務積極的に済ませる。忙しくとも規則正しいことが大切。早晩に三ヶ月半ぶりにジムで有酸素運動一時間。帰宅してドライマティーニ一杯。マティーニ社のドライのベルモットがようやく一瓶空く。かなりドライなマティーニ飲みにしかわからぬことだが一杯のドライマティーニにほんの小匙一杯入れるか入れぬかのベルモットであるから750mlの一本空くのに数年を要す。余も今までの酒飲み人生でベルモットは三、四本買った程度。それに対して百本のジンを購入しているのは当然だが。昨晩の雪園飯店の魚翅(フカヒレ)スープに入っていた鶏肉使っての親子丼。秀逸。本当に美味い。中国代表する社会人類学者の費孝通教授逝去(新華社)。九十五歳。
龍谷大学の国際文化学部教授・卓南生氏が信報に書く文章がいつも面白いのだが今日の信報に自民党政府の歴史認識と謝罪についての一文興味深く読む。卓教授が指摘するのは自民党と日本政府が政府見解として「村山談話」を持ち出すが十年前の「ライト級」の村山首相の謝罪談話発表当日に「重量級」の通産大臣橋本龍太郎君が十名の大臣と百名の自民党代議士引き連れ靖国神社参拝している事実。社会党の村山君が戦争謝罪という目的でいいように自民党に利用されたのであり自民党の本心は寧ろ橋本的な部分にあり小泉三世や町村外相が戦争責任の認識といっても自らの言葉を用いず村山談話引用するのに終わること。それで本当にアジア各国と民衆の信頼を得られるか、と。御意。
バンドン会議終わってさっさと帰国の小泉三世に比べインドネシアに残った胡錦涛国家主席は積極的な対インドネシア親善外交活動。国連安保理常任理事国入り狙う日本に対してアジアの代表が中国であることを印象づける、津波被害支援といい積極的な外交政策。で小泉三世は一日二日帰国が遅れても郵政民営化に何か支障が出るわけでもあるまいが何よりも畏友山崎拓君の衆院補選での返り咲きは嬉しいことだろう。下半身スキャンダルでも恥ずかしげもなく復帰に挑む山崎本人も凄いが、その夫を応援する山崎拓夫人といふのも凄い。普通なら恥ずかしくて世間に顔向けできぬだろうがさすが政治家の妻。それにしても福岡での公明党の山崎支援。『噂の真相』なら公明党の今回の支援を女性醜聞絡みで誰をどう揶揄するか明らかだが、かつてあれだけ創価学会批判の急先鋒であった山崎拓をなぜ支援できるのか。浜四津女史が福岡入りして「今回は自公連立か野党かです」と山崎支援を説いたそうだが公明党にとって大切なことは創価学会批判の代議士も応援してまで自民党の与党であることなのだろうか。
▼一瞬、産経?と思ったのが朝日新聞のニュースに迫る「詰め込みよりたたき込み」と題した「ゆとり教育見直し中山文科相に聞く」の記事。ゆとり教育見直しはで中山成彬君が提案の一例が「漢文の素読」とは。日本の伝統と歴史、文化の推進役で「漢意(からごころ)を捨てよ」とでも云いそうだが漢文素読とは意外(笑)。それにしても戦後民主主義で「民主主義と基本的人権が入っていい国になったのは評価しますよ」としつつ「個人主義が日本では自己中心的利己主義になってしまった」「先の大戦の敗戦のショックが大きかったことと、戦後のマルキシズム共産主義の影響で、日本の戦前は非常に悪かったという歴史観がはびこった」「日本は伝統と歴史があるのに底の浅い国になってしまった」「民族の歴史を大切にすべき」と……まぁ底の浅い非常に「偏向した」歴史観に呆れるばかり。中曽根大勲位の「日本は単一民族」もそうだが東大法学部というのは頭が悪い? まず大切なことは自己中心的利己主義の根本は個人主義ではないこと。個人主義でも道徳的集団主義でも軍隊でも自己中心的利己主義などいくらでも蔓延ること。それの原因を個人主義に擦りつける、発想の幼稚さ。大西巨人神聖喜劇』あたり読むと勉強になるかも。先の大戦、って昭和十八年生れでしょう先生は。自分も気がつけば戦後世代なのだから「先の大戦」って使っていいのは、あの戦争を実体験している人であって第一次世界大戦も間接的にであれ関与している人だと「先の大戦」という言葉に重きがあるので、つまり昭和天皇とか吉田茂くらいの格ぢゃないといけない。で冷戦時代ぢゃないのだから、このありきたりな共産主義批判も拙ひ。共産主義とて戦前には三十年くらい、もはや立派な政治文化の一部だったのであり、この陳腐な反共産の発想だと弓削徳介先生のような「水戸城再建を夢見た」共産党市議だとか日本舞踊の師匠の共産党員といった個性豊かな人たちが全く理解できぬことになる。政治的思想と歴史観、文化や伝統は全く異なること。それが近代の誇る個人主義。今どき、これほど何でも共産主義が悪い、で済ませてしまふ先生が自民党にまだいた、とは……。森以下。鹿児島に近い宮崎の田舎漢が越境してラサール高校に入り東大法学部から大蔵省、で自民党代議士。一瞬、産経か?と思ったのは中山君の宣伝の如きインタビュー記事であったからなのだが逸話綴ったあとに同じ自民党文教族の代議士の一人が中山君への違和感を口にして文科省の元幹部も匿名で一人の大臣の教育観が世論に後押しされ政策に結びつくことの危うさを嘆く。共産主義が日本を底の浅い国にしたなら、自民党なら日本をよくしたのか。自民党が政権担った戦後社会の成れの果てが今。自らの政党が一党独裁の如き政権党でありながら結果の悪さだけ共産主義の責任にする、この発想こそ自己中心的利己主義以外の何ものにも非ず。中山君は66年に東大法学部卒であるから東大紛争の激化する数年前で丸山眞男先生の講義受けている最後の法学部世代な筈。で、「これ」では丸山眞男も草葉の陰で涕いているか。この記事、一瞬ヨイショ記事のようだが中山教育論読んだ十代の若者の「競い合う先に何があるのか?」といふ感想に「最近の子供には、ませたひねくれた態度の子もおるからな」と文科相が笑ったと紹介する。常識的な国であれば教育担当大臣がこの発言しただけで罷免であろう。
ベネディクト16世となったヨゼフ=ラツィンガー君は明らかに「損をしている」のは相の悪さ。映画バットマンの適役や水戸黄門で悪代官に賄賂渡す悪商人にありがちな形相。この人について新聞には様々な風評が載るが(日本の新聞がそれをせぬのは礼節のつもりなのだろうか)蘋果日報はこの人がかつてローマ政庁の教務部だったかの部長で此処が悪名高きカソリック神父の「童恋癖」審査所轄であったがラツィンガー君は知己の神父を裁けぬとそれに非積極的で被害受けた子供らが十八歳になってからようやく審査をするなど決定した経歴ありと紹介。それに対してヘラルド=トリビューン紙にはJason Berryなる基督教に詳しい作家が“A sign of hope for sex abuse victims”とベネディクト16世になりカソリック業界の「童恋癖」の真相解明や是正が進むであろうことに希望的観測。信報にもラツィンガー君の教条的保守主義についての記事ありマルクス主義の影響受けた解放の神学やリベラル派神学に対する非寛容、避妊や堕胎どころか伝染性性病防止のための避妊具の使用も反対だと紹介。
▼「クロコダイル」ブランドのネクタイ製造卸販売業主の土共・曽憲梓が行政長官補選での任期問題につき「全人代常委での法解釈は絶対的な法律効力があり香港はこれを遵守すべきで法解釈後にこれに反対することは違法」と宣ふ。法解釈に意義唱えるなど人権、民主主義、思想表現の自由で当然のことだがさすが中共に媚ること以外何の取り柄もなき土共にとっては中共に反対すること=違法。この法概念もなき土共がその全人代常委の委員(笑)。

富柏村サイト http://www.fookpaktsuen.com/