富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

四月十八日(月)快晴。購読しておらぬ日経の十五日号が配達となる。社説に「ガス田試掘、粛々と周到に」とあり微妙な境界上の地下資源といふ問題に「日中中間線付近のガスは日本に持ち帰ることが商業的に困難であり、中国にパイプラインで送る選択肢が現実的だ。日中が協力できるよう環境を整備していくべきである」といふこのあまりに実に現実的な提案。この資源が日本に属すかどうかが国威に係る問題として云々にならぬ、経済新聞だから、の社説。諸事に忙殺されるがすべて切り上げ早晩にかなり久々にジムに参り有酸素運動しようと思えばウェアの下が荷物になし。あっと思えば秘密基地に置いてあるウェアであったが先日基地まで走ったおりに汗まみれでウェアの下だけ着がえていたこと今になって思い出す。ジムまで勇んで行って運動できぬ不覚。風呂のみ。帰宅。ボルドーの安酒Ch. La Dominanteの01年飲み蕃茄のパスタ。昨日TVBの英語局で放送された“Pearl Report”の録画見る。中国の反日運動が15分の特集。扶桑社の教科書(厳密に言うと、新刊本)を映し、その中の中国侵略の記述部分を紹介。扶桑社的には侵略は中国側の挑発による日本軍の応酬といった記述をナレーターが読む。だが画面に映される教科書は厳密には東京書籍のものなのだが。で香港の日本人学校の外観が映り「香港日本人学校の歴史教科書は日本政府から支給されている」として、その教科書の当該部分は「日本軍により多くの中国人が殺され」といった記述であることをナレーターが語る。東京書籍は誤記問題などで顰蹙もかったが教科書最大手。で東京書籍の歴史教科書は「つくる会」的には偏向した自虐史観。これを海外の日本人学校(全て)が使用(こちら)しているのは日本で最もシャアのある教科書を採用しているから(東京書籍は中学社会科で6割)。東京都も石原都政でありながら(教科書採択は都下の広域区毎になるため)東京書籍の自虐歴史教科書採用が多いことは「石原の奇跡」。これも都立中高一貫6年制学校や養護学校での扶桑社教科書採用など(こちら)着々と動きあり今後どうなるか微妙か。海外にいる邦人子女こそ愛国心教育を、なんて扶桑社の教科書が採用されることないよう祈るばかり。ところで「そごう」の旭屋書店はずっと「在外の日本人」だから喜びそうな安っぽい日本人アイデンティティ奮起本並べ扶桑社の『新しい歴史教科書』も平積みして売っていたが今でもそうなのだろうか。この番組には香港の北村隆則総領事のインタビューもかなり長く用いられる。かなり懇切丁寧に政府の歴史認識について説明しており教科書問題については扶桑社の教科書の採用率の0.1%といふ低さを挙げ、日本の歴史認識の大勢はこの史観とは異なることを述べる。但し靖国問題について靖国神社はプライベートな宗教施設であり「小泉首相の参拝も私的なもの」と説明した点はちょっと事実と相違あり。本日「今さら」でAdobeフォトショップ購入。画像処理は最初はソニーサイバーショットの付属品、その後シャープのノートブック付属品を使ってきたがソニーのはCD紛失しシャープのもシステムエラー。京セラはContax用にわざわざ画像処理ソフト開発などするべくもなく(すでに撤退表明である)今さらでフォトショップ。けっこう遊べるなぁと夜な夜な弄くる。
▼築地のH君が日中関係について。蒋介石の「以徳報怨」で「暴に酬ゆるに暴を以つてせず」とあるが、この高尚な智慧も通用する相手とせぬ相手あり。日本が負けて中国で捕虜になった「戦犯」が改心の「撫順の奇跡」も周恩来の徳が通じた、本当なら世界史的な出来事が単なる「中共の洗脳」とされてしまふ悲劇。戦後はそもそも「日本軍国主義は日中両国人民共通の敵」という「フィクション」で以て日本は辛うじて断罪を免れる。それが虚構でも中国人民にそれを強要することで「人民の復讐の念」を押さえ込むことの難しさ。周恩来先生の国際社会で隣国との共存のための智慧。それがいま「無」にされようとする。教科書問題でも日本政府は言うに事欠いて「教科書は民間が作ってるので政府は干渉できない」と、これが拙い。「政府は悪逆でも人民は反省して友好を求めている」というのがタテマエだった筈が人民が勝手に反動的な教科書作るのは政府は関与せず、では周恩来のメンツ丸潰れ。戦後培われてきた周恩来、日本でいへば財界では岡崎嘉平太、政界なら園田直、大来佐武郎であるとか常識的な隣人との付き合い方のできた人物が今はおらず。

富柏村サイト http://www.fookpaktsuen.com/