富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

四月十日(日)薄曇。毎季レース終盤飾るHighwiseの10kmレース大埔大尾督にて開催ながら朝寝貪り参加せず。のんびりと朝を過ごし朝十時すぎに裏山上り大潭の自然公園を走る。かなり快調に坂道も走り上る。この雨期にありながら連日雨らしい雨もないが木立の緑は青々しく路面は夜露にびっしょりと濡れ大潭のダムも水嵩は少し高まる。厳しい異常気象のなか自然は懸命に夏を迎えようとする。港島南岸の海岸に到る。約14kmくらい走ったか。吉見俊哉『万博幻想』ちくま新書少し読む。昨日は桜の季節に『桜が創った日本』読み尾張万博の最中に『万博幻想』ではただの厭世者。万博が国家主義の裸踊りであることは常識だが書名の『万博幻想』からわかるように昨日の桜の佐藤俊樹記号論の世界での理想的なニュートラルに比べると吉見先生は最初から万博に否定的な視点明らかといふことか(まだ少ししか読んでおらず断言せず)。海岸に微睡む。薄曇だが日差しそれなりの苛しさ。夕方バスで灣仔。Ruttonjee病院を抜けようとすると病院傍の公園の藤棚に藤が見事。灣仔の古い大廈も次々と取り壊し待つ。アウトドア用品店Protrekに新材質で畳むと握り拳大に小さくなるナイロンジャケット購入。ジム。Z嬢と待ち合わせ灣仔會議展覧中心で開催中の香港工業情懐展覧を参観。「工展」は香港中華廠連合会が開催してきた地場の工業製品展示会であるが娯楽に乏しかった時代は香港市民にとって工展は賑やかな遊園地の如く連日、殊にネオン目映い晩の夕涼みには恰好の出先。その懐かしい展示の再現。見終わって出てくると會議展覧中心の突端にある金紫荊広場にかなりの大陸からの観光客の姿。香港返還に北京政府から贈呈された金紫荊を眺めること。而も国旗昇降の時間にぶつかってしまひ人出もピーク。麦酒飲みたい気分。會議展覧中心のコンビニで普段はその「喉ごしとキレ」が嫌いで絶対に飲まぬ、日貨不買で被害被ったアサヒのスーパードライ買ふ。写真撮影。それにしても貴重な短い旅行の日程でなぜ大陸からの旅行者は此処を訪れるのか。此処であのデザイン的には美しくもないが印象には強烈に残る金紫荊を見ることで香港が我ら中国の領土に戻ったことを体感し国旗掲揚で此処が中国であることの実感か。スーパードライ飲んでいたが誰も非難もせず。帰宅。夕餉。テレビのニュースで大陸の反日運動の凄まじさ。新聞読んで『万博幻想』読み続ける。
▼中国各地で反日デモ高まる。勿論諸悪の根元は扶桑社=富士産経の教科書。ホリエモンに買収されたほうがまだマシ。そして文科省の検定制度。日本に何が出来るかといへば中国の民衆感情を逆撫でしなければいいだけの話。日本の謝罪は中国にとって数十年では済まぬこと。懲役三十年執行猶予百年くらいの大それた歴史的事実が中国侵略であること。そして中国では民衆の鬱憤晴らしに反日示威は最も利用され易いこと。中国政府が最も惧れるのはこの民衆の反発が自らの党政府に向かうこと。いずれにせよ日中両国ともナショナリズムの馬鹿馬鹿しさ。日本のナショナリズムがバカな歴史教科書を編み中国でもこの反日抗議に自主的に参加している民衆は結局は国家に利用される国民であること。香港は幸いにも平静。96年頃にはかなり愛国主義反日運動盛り上がったが国家に利用されることの不毛ぶり目聡く感じ取った香港は今さらナショナリズムに加担もせず。それでよし。何より馬鹿馬鹿しい愛国心だの国家民族の名誉だの歴史だの。愚弄される勿れ。

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