富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

四月七日(木)快晴。朝は曇るが気温摂氏廿六度だかのすっかり夏の陽気に雲も消えしっかりと快晴となる。蝉も鳴き一気に夏の気配あり。清明節句過ぎればこの如し。大気汚染も甚だしいが首都北京など大気汚染指数は300で「極悪」のところ連日330を越えるといふ。08年のオリンピック開催までの改善も怪しいところ。朝Herald Tribune紙を読めば香港の昨日の行政長官任期につき全人代常委に法解釈要請の記事3面にあり内容は昨日余が日刊ベリタに送った内容と記述展開まで殆ど同じ。これぢゃHT紙をば無断翻訳転載したが如く思われるであろうか。夕方タクシーに乗れば多少奇っ怪な車には驚かぬが乗るなり驚くは車内は水色に水滴が描かれたビニールの壁紙が一面に張られ「涼しげな印象」だがもっと驚くは実際のその車内の冷凍庫の如き寒さ。冷房をいっぱいにつけて摂氏十度くらいだろうか当然、外の暑さとの気温差で窓は曇るほど。そのうえ冷房の吹出口には風車だの風鈴だの据えて風が流れること視覚的に実感する装置。そこまでして冷たい室内に怖くて「冷房を止めてくれ」とはとても請えず。退勤ラッシュの地下鉄に乗れば今更驚くことぢゃないが混雑とはいへちょっと車内の奥に入れば新聞広げて読めるほど閑散が扉周辺のみ押すな触るなの混雑ぶり。もう少し奥に入れば楽なものを香港の悪習。だがなぜこうなるかといへば一、二分待てば後続の電車来るから無理に列車に客押し込まずとも済む故。日刊ベリタに続報で行政長官任期(こちら)とローマ法王逝去での中国台湾関連の記事(こちら)送稿。母に電話して亡父の追悼カード届いたと聞く。四日に歌舞伎座勘三郎襲名披露公演観劇の母。切符かなり入手難しきところ久が原のT君に請うて一階の東桟敷席。父が亡くなる前に切符依頼して切符送ったが父の入院での看病と容態がどうなるか心配だったがまさか父の急逝で母にとっては葬儀終わってまだ一段落もせぬうちの束の間の少しでも気持ち癒す観劇。勘三郎の芝居はそれは襲名披露で見事なものだった、と母。口上で當十郎の言葉に勘三郎の義父である芝翫が涙拭っていたのが印象的、と。だが母が何を驚いたかといへばプラチナチケットの如き桟敷席で隣席は始終こっくりこっくりと寝ているし反対隣りは幼児連れで子が玩具持参で遊んでいたそうな。客席もジーパンなど軽装の客多く母にとっては歌舞伎の観劇など着飾ってハレの場に演じ手と同じ心境で居ることの心地よさゆへ驚くばかり。歌舞伎座の職員は母に、前日は中村会の貸し切りで勘三郎君もそりゃいつも以上に芝居に熱が入り昼の部が二十数分も延びた、と教えられる。この居眠りから幼児までの客の入りに今では客層もすっかり様変わりして宣伝の威力ですかね、客だけはいくらでも入りますがどうにもこうにも、と身内なりの感想を述べられたそうな。終日忙殺され晩に最後の某事終わり午後十時過ぎに佐敦でふと数年ぶりに亜龍カレーに食す。相変わらず満席の盛況。美味。
▼HT紙に天主教のフィリピンの人口問題の記事が1面にあり。天主教での避妊と中絶の抑制が貧困での人口増加抑えきれず人口増加率は昨年2.36%とアジアでも有数の高率。現在八千四百万人の人口がこのままでは2015年には一億千百万人にまで増加の予測。
香港国際映画祭。今年は入場料売上げこそ昨年比で30%増だが政府援助は昨年より40万ドル削減されSonyとSky Vodkaの両社がスポンサーになり辛うじて開催能ふ。主催者の総括発表では来年は更に40万ドル削減される予定で僅か7百万ドルとは来年も内容に期待できず。
さとう宗幸氏について。仙台郊外の古川での高校時代にマンドリンクラブに在籍しベトナム戦争時の反戦歌やプロテストソングに触発され楽曲創作を始め東北学院大学4年の時にはうたごえ喫茶「若人」でリーダーを務めたといふあの時代的な左翼の香り。而も「ライヴハウスで知り合い、友情を暖めたシンガー高田渡らの協力を得て、アルバム「バラ色の人生」を自主制作」なのだから築地のH君曰く、高田渡なら「君が代」歌うのはあり得ない、と。確かさとう氏は地元文化人を集めた反戦署名の発起人だか賛同人だかに名を連ねていたはずだし革新政党から候補者に、と名前が挙げられたこともあり。プロ野球やサッカーでの国歌「独唱」は「在日」の歌手にお鉢が回ってくることも少なからず。君が代もみんなで歌えば怖くない、か。
▼中国の対日感情も「日本は悪くない、とかそういうことさえ言ってくれなければいい」「傷に塩を塗りこむようなことをしなければ、それでいいんです」とこの感情に応じればいいだけのこと。築地のH君曰く、普通の人情が解せるなら、この程度の一致点を見いだすことはさして難しくないはず。なのにそれを逆なでする言論と行為。「心の教育」が必要なのは戦後の左傾教育のせいで「日本人の心が……」などと言っている御仁のほうではなかろうか。中国での日貨不買運動につき陶傑氏が蘋果日報の連載で連日それを嘲笑。殺人すら辞せぬ農薬野菜に毒入り粉ミルクなど中国の製品への不信感と日貨の質の高さの差異。日貨なくては暮らせぬほどの経済環境を冷静に凝視するべき、と。中国独秀でなければ安堵せぬ民族性。孔子の「居處恭執事敬 與人忠 雖之夷狄 不可棄也」を挙げる。ところで中国では反日デモなど盛んだが日中間の貿易は04年が1700億米弗にも及び03年比で26%の増加。日貨排斥がどれだけ影響するかも僅かであろうが、この「民衆の間で」の日貨排斥などあっても政財界レベルではこの数日でも元外交部長の唐家セン君が東京三菱銀行頭取の高垣佑君と、呉儀副首相がYKK社長吉田忠裕君と会談するなど中国にしてみればとにかく日本資本との強力なる連携の要。それに比べれば保守右派と系列御用マスコミの反中キャンペーンだの歴史の見直しなど大局的見地からは蝿が飛んでいる通りか。

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