富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

三月廿六日(土)曇。Z嬢と尖沙咀文化中心。オムニバス映画“Female”観る。作品は篠原哲雄『桃』、塚本晋也の『私はじじいの愛人』、大塚寧々『女神のかかと』、乃南アサ 西川美和 高校生の真吾。彼女の母親の美しい脚線のとりこになる、大塚ちひろ「太陽のみえる場所まで」と松尾スズキ『夜の舌先』の五本。続いて昼から村上春樹原作で市川準監督の『トニー滝谷』。余の乏しき感性では全く理解できず殆ど寝て過ごす。村上春樹作品ゆへ文化中心に客満席なり。日本料理「京笹」にて遅い昼食。カツ丼。美味。Z嬢と別れ科学館。昨年『香火』で印象深い寧浩監督の『緑草地』観る。蒙古の大草原舞台に川に流れてきたピンポン球を国宝と信じ北京に届けようと願う少年の物語。寧浩にしか撮れぬ世界。午後六時までの一時間余尖沙咀東にて途方に暮れて本日四本目は香港短編集。高校生が学校で撮影のドキュメント『Gay的疑惑』など。映画の合間に「五味鳥」久々に訪れ麦酒一杯、焼き鳥数串と焼きおにぎり一個。たっぷり正一合の日本酒に酔ふ。科学館に戻りSimon Chung監督の“Innocent”観る。香港よりカナダに移民の家族の物語。素人で飲食店経営に乗り出すが父は若い娘の誘惑に負け妻は福建人の胡散臭き投資コンサルタントに瞞され夫婦は離婚の危機、ゲイの息子を主人公にその失望を描く。同時上映の三分の短編中国画の“Ode to Summer”『夏』のほうが寧ろが上出来。
▼新界天水圍にて卅五歳の男失恋で発狂し集合住宅卅五階の自宅より家財道具一切窓から投げ放つ奇行あり。住宅に警察入り男捕まえし時に家屋に残るは窓から出ぬ大型家具のみ。
台北にて中共政府制定の「反分裂国家法」に反対の百万人遊行あり。阿扁総統、行政院長謝長延に李登輝先生も参加。
▼昨年7月に成田空港で不法入国のカドで入管に収容されていたチェスの元世界王者ボビー=フィッシャー氏について。米国政府が引き渡しを求めていたが日本政府は24日に本人の希望し市民権もすでに与えているアイスランドへ送還。米国での容疑は92年に米国が経済制裁していた当時のユーゴスラビアでのチェスの対局に出場して賞金約300万ドルを得たため制裁違反の罪で起訴されたもの。日本に隠遁していたが昨年7月フィリピンに向け出国する際に失効した米国旅券であったための入管収容措置。事実経過はここまでだが報道は日本だと例えば朝日のベタ記事(こちら)に対して紐育タイムスにせよ香港のSCMPにせよフィッシャー氏の成田空港での「自分は逮捕されたのではなく明らかな誘拐」であり「ブッシュと小泉は戦争犯罪者であり絞首刑に処せられるべき」との発言を大きく取り上げる。なぜ日本では記事にならぬのか。
朝日新聞に映画「インファナル・アフェア3」が4月16日より「ついに完結」のロードショー公開と大きな広告あり。香港での上映から一年と数ヶ月でまさに「ついに完結」だが普段ダサい邦題つけるのが常の日本洋画界は時々わけのわからぬ洋題そのままもあり「インファナル・アフェア」も全くワケわからず漢題の「無極無間」も同様。「愛の相克」とか邦題つければよかったのに。

富柏村サイト http://www.fookpaktsuen.com/