富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

三月廿五日(金)復活祭の連休初日。復活祭のこの季節らしき憂鬱な曇天。多湿の上に今年は寒さの残る。尖東。香港科学館。この香港映画祭で復活祭の頃ここに来ると毎年映画評論家佐藤忠男氏夫妻の姿あり。今年はお見受けせず。昨年は映画監督SABU氏も独りぶらりと来場。昼まで“The World According to Bush”観る。ブッシュの欺瞞、戦争犯罪責任を関係者やジャーナリストの証言から徹底的に検証。マイケル=ムーア監督の『華氏9/11』のあのノリに比べて仏蘭西、白耳義と瑞西制作のこのドキュメンタリーは揶揄も笑いもなし。良識のレポート。だがそれでもブッシュが大統領でいることの不思議というか現実。その怖さ。昼から羽田澄子監督『山中常磐』観る。牛若丸の母・常盤御前の悲劇。岩佐又兵衛の絵巻「山中常盤」を用いて今回の映画のために浄瑠璃に曲をつけ風光明媚な平泉や中山道の四季折々の映像を加えての丹念な制作。又兵衛の絵画の人のユーモラスさと何よりその着物の服飾の見事さはため息もの。羽田澄子監督来場。記録映画『片岡仁左衛門』の上映以来。羽田監督の舞台挨拶は「浄瑠璃とは何か」「文楽とは」の解説続き飽きるほど実直でこの人らしさ。Z嬢も来る。終わってZ嬢と幸福中心地下の一平安でらーめん。映画祭の間に毎年一度はここのらーめん。もう開業廿年の老舗。Z嬢と別れ三度科学館で『青い車』(監督:奥原浩志)観る。よしもとよしともの原作の映画の雰囲気よか暗い。だが主演のArataが見事な演技。ただただ見事。タクシーで旺角。中国旅行社に滑り込み復活祭明けの東莞へのバス切符手配。尖沙咀に戻り午後六時からPatty Jenkins監督の“Monster”観る。夜鷹が残忍にされた客を殺してしまったところから物語始まる。その男に嬲り続けられてきた夜鷹が可愛い少女と出会い恋に落ちるが二人の甘い生活夢見て街道沿いで客をとっては殺し続け……とまさに江戸歌舞伎の如き米国映画。Charlize Theronの好演。北京道のマクドに食す。二更にMTRで葵景。葵青劇場でドイツの青春映画“Sommersturm”観る。ドイツには伝統的に保養地のサナトリウムであるとか夏のキャンプなどを青春の物語にするが、夏の陽光がそれに合うからだろうが、この映画も橋本治的には夏の湖畔でのボート部のキャンプを舞台に彼女とお熱の少年に恋してしまった少年の切ない夏の物語。非常に「ふつう」なこの男女のボート部と伯林から来たQueerチームのキャンプ地での集団生活でのやりとりがいかにもドイツ的な個人主義で興味深し。午後十一時過ぎに帰宅。石田衣良の『池袋〜』から二作目「エキサイタブルボーイ」読む。

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