富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

農歴十二月廿六日。立春。昨日よりの霧雨続き気温は朝も十五度で気温上昇とあり濃霧立ちこめ、いかにも香港の立春らしき様なり。ふと思ったが立春を「暦の上では立春。まだまだ寒い日が続きますが……」と農歴=実際の季節とは異なる、といふ前提での言い回しだが、それなら何故「キリスト者の暦の上ではクリスマス」とか「保守反動右翼の暦の上では建国記念日」とか言わぬのだろうか。Z嬢のキャセイパシフィック航空マイレージAsia Milesのうち僅かだが1,300マイルほどが1月末日で失効する旨の手紙がその前日に届き慌ててその利用図り合計でも1万マイルでは用途限られ半分冗談で広東省東莞のシャラトンホテル1泊9,500マイルあり東莞など仕事でもなければ近くともわざわざ訪れる場所でもなし。東莞は深センの北に広がる新興工業都市、人口五百万人だが深セン以上に広く十数の「鎮」がそれぞれ大都市の規模あり広域市にそれが点在。殆どが香港や外国資本(当然その多くが日系とその下請け)の工場に百万単位の人口の所謂「女工さん」が従業。殺伐とした都市だが日本人居住者も日本人の板前のいる日本料理屋も少なからず楽しみといへば夜のカラオケとゴルフ。で、その東莞のシェラトンの予約は4月15日まで有効とAsia Milesのサイトに明記され三月末にでも訪れようかとシェラトンの親会社Starwoodの宿泊予約センターに予約依頼せば三月中旬以降のマイレージ利用での予約については予約センターにまだ情報がないが、との話。職員機転きかしてひとまず正規で予約しておきマイレージ利用をリクエストでreferしておきマイレージ利用の詳細が出た時点でそれに切り替えることで如何か、と。それ厭ふ理由もなく依頼。すると本日そのStarwoodより電話ありシェラトンマイレージでの宿泊プロモーションは4月15日でなく3月15日の間違いであった、それゆへこの日までに宿泊変更せよとの依頼。3月中旬迄にとても東莞訪れる余裕もなくシャラトンとAsia Milesでの情報提供のミスゆへどうにかならぬものかと双方に打診するがAsia Milesの電話に出た職員の対応の無礼さは表現し難き程の最悪で「今日現在ですでに失効しているマイレージは戻せる筈もなくシャラトン側の提供するプロモーションの範囲で使えぬのならマイレージは失効するしかない」と、それは余の打診の検討の可否以前の問題として顧客に対してその横柄な口のききかたを猛省すべきでは?と指摘した程。アタナのような善意なき人とは話すにも値せず上司と話させていただきたい、と求めても、まだ「当社側には責任もないことで何故妥協しなければならないのか」などと口走るその職員。呆れるばかり。余はZ嬢の代理で電話しているが余もAsia Milesどころかマルコポーロクラブの会員でありキャセイパシフィックのこのような顧客対応とは驚くばかり、余はマイレージもまだ十万マイルほど有するが、これでは今後の利用は要検討、上司にもアナタの客対応のひどさを指摘するし、このマイレージの問題はキュセイパシフィック航空が真っ当な対応せぬ場合はビジネストラベラー誌など旅行雑誌に投稿も検討する、と伝えるとさすがに多少その職員はトーンダウン。いずれにせよアナタから上司にこの件を伝え上司からこの件につき余に電話するよう依頼。二時間しても上司からの返答もなく、こちらから電話すると、さっきの無礼者とは別の職員が上司は電話中だが「シェラトンのことでしょうか?」と言われ、さて社内でも問題になって他の職員も聞き及ぶかと察す。すると暫くしてさっきの無礼者からいたって丁寧に電話あり今回の件は誤情報が提示されていた点を考慮してStarwood側にシェラトン東莞の4月15日までの宿泊許可するようすでに依頼済み、と。当然のことながら当方に誤認なく先方で調整要することでこの無礼者も上司には客対応をば叱咤されたのであろう。Starwoodの担当者に電話すれば一旦は受け入れられぬと答えたが上司と相談の上、シェラトン東莞に宿泊予約打診済みで結果出次第連絡との事。この件、誤情報が発端で先方双方が非を認めれば誰も損する話に非ず。強いていえば三月中旬以降がシェラトン東莞繁忙期でもあればマイレージで客取りたくない、といふくらいの理由あるかもしれぬが、マイレージ利用してのホテル宿泊とはホテルにとって「タダ泊め」に非ず通常の宿泊料金には及ばぬがマイレージ会社がその費用負担。なぜAsia milesの職員があそこまで強情に無礼通したか、が今もって理解できず。昨年八月に税務署にて所得税の扱いで理不尽な対応されて以来の不愉快をば味わふ。客人あり晩に尖沙咀春節前の週末、立春で料理屋は春茗の宴会だの、日がいいのか結婚の披露宴など多く、電話で予約試みても尖沙咀では金島も雪園も香港老飯店も何処もたかだか四人の晩餐の席もなくハイアットリージェンシーホテルの凱悦軒に漸く空席あり。この料理屋も満席盛況。今晩の客人は東南アジア各地の出張の途中で七旬近き紳士。料理も美味しそうに食され酒の飲みっぷりも実にきれい。話も面白いが何より聞き上手で相手の話を聞いた上で自分のネタに上手く被せる絶妙さ。敬服。客人をマルコポーロホテルに送り帰宅途中に銅鑼灣で途中下車。暮れのご挨拶にとBar Seedに寄り白角のハイボール一杯とモルト少し嗜み店も盛況でカウンターの隅に立ち席で旧知のT君、A嬢と少し語り三十分で退く。旧大丸百貨店ファッション館横のタクシー乗り場は長蛇の列。タクシーがないのでなくビクトリア公園での正月前の花市場もすでに始まりかなりの人出で道路も渋滞し客載せたタクシーが進まず後続のタクシーが客を乗せられず。長蛇の列の方には悪いが道の反対側に客降ろした車もあり、それを拾って帰宅。午後から気温上昇し摂氏廿度近いのか深更には書斎の窓からは遂に九龍どころか近隣のマンションすら霧に幽れる。
▼昨日の信報に01年?のノーベル経済学賞受賞のMichael Spence教授(スタンフォード大学)が昨年11月に香港に招聘されての記念公演の内容掲載あり。日本の景気復興も要因は対中国の輸出好調が主因と断言され中国市場あっての日本経済といふこと。対中貿易では素人目には日本の輸入が目立つが確かに景気回復の要因としての対中輸出。もう一つスペンス教授の指摘は中国の農村から都市部への人口移動について。01年でこの都市部への人口遷移が人口の2割と統計があり、現在ではこの数では済まぬ筈。中国が巨大な農業国家と思えば(経済成長上で都市部への人口移動は当然ことで)2割でもけして多くはない。が13億人の2割の人口移動は空前絶後。そして都市部と農村の深刻な経済格差。経済成長もこれほどの規模の経済体が平均8%の経済成長遂げていることは、産業革命発祥の地の英国がその経済成長が百年で平均1%であり、だがその1%でも「極めて迅速」であったわけで、1%増は70年で経済規模が2倍になるが、これはつまり人ひとりの世代でひとつ経済環境ががらりと変わるか変わらぬかといふ話。それが8%の経済成長続けばひとりの人生のなかで何度か経済生活環境の大きな変化があり、それが数億人規模であることの甚大さと深刻さ。ス教授はそこで最も大切なことは教育、と力説。確かに。公的義務教育が実施されたのも産業革命による良き産業従業者育成があり、日本でも明治期の経済成長は江戸時代の寺子屋からの教育環境挙げる歴史学者も多く、戦後の経済成長とて徹底した義務教育の実施と学習、進学熱あってのもの。農村から都市部への工業化された労働人口の移動が、その人々が単なる非熟練の労働力では将来的に経済成長には結びつかぬわけで、それを改善するには労働力で送り出される前の、そして働きながら学べる教育環境の整備が大切といふこと。
▼香港政府の醜聞あとを絶たず。政府の男女機会平等目指す平等機会委員会について。委員会主席の胡紅玉女史の解任と後任の元裁判官・王見秋の利益供与に関する醜聞、それに暗躍噂される民政事務局局長・何志平につきこの何・局長が指名の独立調査委員会が報告書まとめ当然の如く当たり障りなき報告で何局長の関与なしと判断。何局長はこれでシロと笑顔。SARSの際と同じ「内部調査」での逃げ。呆れるばかり。西九龍の芸術文化地区開発も砂上の楼閣だが香港島のサイバーポート建設でも政府がこの大規模開発をば競走入札をせず李嘉誠財閥に丸投げしたことで政府と財閥の癒着指摘され、本来ならその政財協同の一角にあってもおかしくない合和実業のGordon Wuさへ「最近の政府と大財閥との共謀は常軌を逸しており我々が事業に参画する隙間もない」とSCMP紙に不満泄らすほど。李嘉誠の次男リチャードはこの疑惑に「我々は香港に利する事業開発をintendしただけ」と傲慢な開き直り。

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