富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

一月廿八日(金)曇。昼に蘭桂坊のハーゲンダッツアイス店前にてA君と待ち合わせFCC。A君は仕事絡みの知人の子息にて知人昨年春に帰国となりA君高校卒業まで香港に残留することとなり知人に請われ形式的にA君香港居留の身元引受人となるが査証延長手伝つた位で何もせず今日に至る。晴れてD高校卒業となり明日帰国を前に伴にFCCのメインバーにて昼餉。ケバブ食す。別れ際A君にお世話になりましたと葡萄酒いただき包装紙越しにCh. La Dominiqueと読めて「18歳の高校生の分際で……」と一瞬驚くがあとでCh. La Domitanteとあり誤解に安堵。諸事忙殺されること連日の如し。晩にタクシーにてピーク越せば夜霧深し。小雨もあり大気汚染にあらぬ春めいた濃霧。八時にFCCに参りZ嬢と主餐庁にて今月だけのFondueメニューでチーズフォンデュ食す。葡萄酒は豪州のShaw & SmithはUnoaked Chardonnayの03年。帰宅の車窓から眺めれば、やはり濃霧だけぢゃなし九龍サイドはついにホンハムも濃霧の向こうに全く見えず。帰宅。母よりファクス受信。郷里の詩人・真殿皎氏の逝去を知る。真殿氏については昨年十二月七日の日剰に記述あり。十七歳の余に折口信夫と釋迢空が同一人物と教えてくれた人。いつもベレー帽にパイプ、肩掛け革鞄に書籍と原稿用紙、それに上質の画仙紙、硯に筆まで持ち歩き、酒を飲んでは詩だの絵を書き綴る。昨年十一月に訪れた明日香の岡寺の本堂にてこの真殿氏の揮毫での篆刻を拝見。余が二十余歳に母方の祖母亡くなり若い頃から賑やかなことだつた祖母ゆへか通夜の晩も祖母を囲む宴会の如く人々振る舞はれ霊前に「天(あま)駈ける魂(たま)にとどけと春(はる)宴(うたげ)」と詠めば数ヶ月後に郷里に復た帰省せば仏壇の上に真殿氏の筆にて余の詩が掲げられるを見上げる。氏の足跡をネット上にて索せば唯ひとつもう三十年も前の新宿での詩の会に草野心平谷川俊太郎といつた詩人と並び真殿氏の名。奥成達といふ人絡みにて、この頃には新宿のゴールデンゲイトなる会場にて発起人に赤塚不二夫及川正通白石かずこ三上寛といつた面々に山下洋輔3と中村誠一といふ「若者たち」のパーティの告知などあり。参加者を「お気軽にどうぞ」と呼びかけ。

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