富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十月十八日(月)快晴。早晩に中環ColourSixにて写真現像依頼。ジムにて小一時間有酸素運動済ませFCCにてウォッカ檸檬割で飲む。中環にて漫画家といふのか多芸多才なる歐陽應齊君にばつたりと遭ひ数年前に一度飲もうと言つていた儘で復た再会の約す。Jimmy's Kitchenの前を通りこの料理屋にて今年二月に不愉快なことあり二度と食すものかと少なくとも洋鬼の野暮な支配人いる限り二度と食すまひと覚悟し、それに比べ尖沙咀の同店の質の高さに感服し、ふとあの支配人はまだ居るのだろうかと気になり食事する気など毛頭ないがバーならと思って立ち寄る。クビになっておらず。バーでドライマティーニ注文。そこそこの繁盛ぶり。半地下の店で湿気多いのは致し方ないが入り口がカーペットが湿る所為だが異臭あり支配人筆頭に給仕らに緊張感なく余が注文せしドライマティーニとてオンザロックの注文がストレートアップで供され流石に給仕も気づき余の指摘する前に持ち帰ったのは良いがバーカウンターで氷入れたオンザロックのグラスにざーっとストレートアップからドライマティーニを注ぎ唖然。素人感覚では見た目は同じだがステアしてストレートアップに注がれた酒とロックグラスにて軽くステアされただけの酒は違うもので、ましてやストレートアップ用にステアされたものを更にオンザロックにすれば酒がどれだけ薄くなるかは明白。而も氷は大きめにぶっかかれたロック氷にあらず製氷器製の小さな氷塊。これが昨日今日ソーホー地区にでも開業せし素人バーならまだしも香港でも老舗の格式高き料理屋のバーで而もドライマティーニの旨さが倫敦にまで名の知れた店と思うと悲しい限り。この店のジンはタンカレーでドライのヴェルモットはマルティーニ社のを用いた、配合まではカウンター覘いておらずわからぬのだが、この店のマティーニは確かに美味いだけに誠に残念。一杯のみ飲んで店を出ようとする時に支配人、予約台帳に目を落としたまま余のほうも見もせず“Thank you very muchi, Sir!”と一言。呆れるばかりなり。帰宅して浅蜊のトムヤンクンと鶏肉のタイカレー食す。ウォッカをブラッディメアリーよろしくV8の野菜ジュース(スパイシーホット味)にて割って飲む。NHKのお笑いニュース番組ニュース10見る。台風がまた日本襲ふ。ここまで災害続けば日本には古来伝統的に改易といふものあり。まず時の執政者をば迭えるべし。二年も台風の嵐続けば改元の要あり。プロ野球再編のニュースでソフトバンク孫氏の意欲的な動き伝えるニュースでプロ野球のオーナー会社は「鉄道や映画、新聞社など伝統的な企業が多く」といふ説明に一瞬椅子から落ちそうになる。さすがニュース10、今晩のオチはここか。鉄道はまぁ伝統的な企業といふのは譲るとして映画って大映か(笑)、新聞社とて読売新聞だけのはず(他にも曾てあったのだろうか産経クルセイダーズとか日経エコノミスツとか)。ニュースの原稿など三十くらいの若造が書けば、デスクもデスクとして全うに作用しておらずでこのお惚けコメント。映画も伝統産業になりにけり。伝統産業とは造り酒屋とか醤油製造、呉服屋にせいぜい両替商かと思っていたが。遅晩に荷風先生日剰昭和二十二年頃を読む。

富柏村サイト http://www.fookpaktsuen.com/