富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十月十九日(火)快晴。余は直接の被害なきものの近隣のファイル共有するPCの一群ウイルスに冒され感染せしPC数台勝手にネットの某サイトに接続することで異常なる負荷かかり感染せぬPCからもこのサーバー通じてネット接続できず感染PCの修理対応に追われる。こうしたネットワーク異常の場合にやはり有効なのは電話線でのモデム通信なのだが(海外で旅行の場合などを除き)香港ではモデムなどすっかり使ってもおらず利用可なものかふと気になりモデムカード差し込みノートブックで通信試みるが何が驚いたかといえば余の利用するPCCWのNetvigatorのサイトにてダイアルアップの電話番号がなかなか見つからず。かつてはサイトの最初にあった電話番号が今ではモデム通信などする者少ないからか、かなりサイトの奥に入らねば見つからず。驚くばかり。ハロンの斉藤さんも指摘されていたがサイトもブロードバンドが前提で重いことに何ら意識もなき時代となる。晩に自宅にて牛丼食す。荷風日剰昭和廿二年の春を読む。
▼朝日の文化欄に月イチだかで「ヒト科学21」といふ連載する下條信輔氏(認知神経科学・カリフォルニア工科大教授)いつも興味深き内容ながら今月の「大統領選の心理」なる文章殊に面白し。ヒトの記憶なるもの常に「正しき」データのみ記憶するに非ず例えば「忘れろ」と言われし場合の方が「忘れるな」の場合より記憶に鮮明に残り潜在意識での親近性すらあり米国大統領選で見れば一度刻み込まれた記憶は潜在レベルで情動的な反応の引き金を引き、その効果は取り消されても消えず、市民感情なるもの分析的な根拠に基づくといふより情動的な場合にそれが明白。生々しきテロへの恐怖、戦争につながるものの拒否反応など。映画「華氏911」が好評であろうと海外でブッシュ再選支持が極端に低かろうと、それが大統領選挙には何も影響せず。なぜなら米国は(ある面ではさすが民主主義国家だが)国民の多くがボランティアだの小額募金などで大統領選挙に何らかの関与あり一旦「ブッシュ支持」で関与した者にとって「華氏911」や海外でのブッシュの悪評などを理由に今さら「認知を変える」のは難しく、それよりブッシュ攻撃を「事実無根の悪質なプロパガンダ」といふ話に乗る方が心理的ダメージもまだ少なく少なくともブッシュ支持といふことで首尾一貫性を保ち自身の過去をば否定したくなき願望にそれが重なる。下條氏はそれを「今や投票する主体は自覚的な個人というよりは蓄積する潜在心理ということになりかねない」状況と言い、これが「現代を近代から区別する特有の問題がここに突出している」と結ぶ。下條氏の分析はちなみに日本の状況といふのはまさにこれと逆といふ点にも及び、日本の場合、無党派層浮動票が増え些細な醜聞や話題が簡単に選挙の行方を左右するのは、まさにこの「認知の食い違い」と「関与」であり、具体的に見れば国民の八割の支持を得た小泉三世の支持があっという間に下落するのはこの八割の国民が具体的に小泉首相実現の運動したわけでもなければ募金に応じたわけにも非ず、ただワイドショーで見て「この人なら日本を変えてくれるかも」などと期待しただけ故のこと、と解釈できるか。

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