富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十月十五日(金)雲一つとなき快晴。気がつけば昨日が陰暦の九月初一。秋も深まりぬ。歴史家高君に会い天理教本部より借用せし昭和十七年頃灣仔に設けられし天理日本語学校にて撮影されたる写真十数葉高君に貸しデジタルへの複写依頼。香港史の碩学により写真に写りたる瑣細なる事象より何か発掘されることであろう。二人で写真眺め開校式らしき写真で舞台左側に日章旗あり右に当時已に香港陥落にて英国旗ある筈もなく別の角度からの写真でよく見れば白き印は中華民国で青天白日旗。大陸にて攻める相手国の国旗とは興味深し。早晩に時間持て余しハッピイヴァレイのBrownにて珍しく赤葡萄酒飲みつつ新聞読み。店の奥庭に戸外の席あり。其処で早晩に従業員賄ひ飯済ませるはよいが経営者らしきと支配人らしき男二人が晩飯済ませた上に経営内容だの投資につき談義始め客ある場所にてのことに呆れる。確かこの店、創業者の感性ある某女史が数年前に経営権他者に売却の由。葡萄酒一杯でHK$88、店を出る際に二、三名の従業員一切礼も口にせぬ無愛想。些か空腹感あり成和道向かいの蓮園甜品にて緑豆沙食す。美味。Z嬢と会い薮用済ませかなり久々に日本料理・慕情に食す。晩に来ること数年に一度。盛況ぶり驚くほど。白子の天ぷら、〆め鯖。
▼地場のテレビ局TVBの報道局幹部三名辞職。香港局の放送広東省一帯にも映るは今に始ったことにあらず。されど今年になり正式なる放送営業権をばTVB局獲得し報道内容につき局内にて何らかの圧力か。
▼立法会開催され日々の詳細綴らぬが梁國雄君の行動連日マスコミを沸す。議員就任の際には宣言内容に「為中国人民、為香港市民」「還政於民」といった文言加え、相変わらずTシャツ姿にて登院、董建華との集合写真に加わらず、中指議員黄某批判の折に梁君も中指立てて見せたことが立法会議事堂内部でのこと故問題視され、昨日は立法会議事堂入り口にて董建華に意見書手渡そうとしてSPに阻止され議員の登院保証される立法会条例にSPの行動が違反と問題視、等々。
▼信報で葉狐城が連載「一個人的城市」で王家衛『2046』につき、水が半分ほど入った一杯のコップ眺めて其処に香港人の過去、現在そして未来映すが、無表情な売春婦ばかりで全ての感情が暗黒の洞窟へと押し込まれ只有性永在。唯一「へぇ」と感心したのは主人公の梁朝偉演じる三流作家が武侠小説、SF、色情小説でも「何でも書ける!」と豪語することに羨望、と。

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